目からウロコのドイツ流教育「小学4年の成績で人生の進路が決まる」

目からウロコのドイツ流教育「小学4年の成績で人生の進路が決まる」

  • NEWSポストセブン
  • 更新日:2021/11/25
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ドイツの幼稚園(キンダーガルテン)にて。小学校入学前から子供たちは自由にのびのびと遊ぶ。「ありのままの自分」を大切にする教育が根づいている(キューリング恵美子氏提供)

冬以降の感染「第6波」が懸念されている新型コロナ禍。昨年、記録的に少なかったインフルエンザの流行とともに、なおも警戒・注意が呼びかけられている。こうした新しい感染症の拡大は、大人だけでなく、子供の成長にも少なからず影響を与えている。昨年から今年にかけて、学校の臨時休校やオンライン授業への切り替えなどが相次ぎ、子供たちの中にも不安が広がった。親にとっても、学校より家で過ごすことが増えたことで、子供たちの勉強の進み具合や、やる気をなくすことを心配する声が多くあがっている。

しかし、コロナ禍も、それに伴う自粛や行動制限も、個人にはどうすることもできない。むしろ、この逆境や負担をマイナスと考えるのではなく、乗り越えるべきハードルだと考え、ポジティブに変えていったほうがいいのかもしれない。

その参考になるのがドイツでの教育システムだというのが、現地在住20年を超える留学コーディネーターのキューリング恵美子氏だ。キューリング氏は、近著『ドイツ人はなぜ「自己肯定感」が高いのか』の中で、「みんなが揃って進級する」日本とは正反対の、生徒一人ひとりの能力や志向によって学校や進路を変えるドイツの教育制度について解説している。

小学1年で留年もある! 「みんなちがって、みんないい」

キューリング氏によれば、ドイツの教育では、子供一人ひとりの発達状態や学習テンポを重視しているのだという。

「ドイツで小学校へ入学するには、『入学適正検査』を受けなければなりません。これは、小児科医が発育状態を見るもので、入学して『勉強する』環境に対応できるか、身体的・精神的側面の両方をチェックするのです。

もし、小学校へ行くのにはまだ早いと判断された場合、授業時間が短く少人数制の入学準備学校(クラス)を勧められます。この検査で入学が1年遅れたとしても、保護者の受け止め方は、決してネガティブではありません。むしろ、早く入学して授業についていけないよりは、準備が整ったタイミングで入学するほうが良いと考えます。そのため、小学校の入学時に年齢が上の生徒がいるのは珍しいことではありません」(キューリング氏、以下同)

入学した後も、無理をして進級させることはない。

「年2回出る成績表の結果により、小学1年生から留年があります。成績や子供の能力について先生と保護者が面談し、相談のうえで留年が決定します。しかし、留年もネガティブな意味合いではなく、授業についていけないのなら無理して進級するのではなく、その子に合ったペースで確実に学習させるための仕組みなのです」

まるで詩人・金子みすゞの「私と小鳥と鈴と」の名フレーズ「みんなちがって、みんないい」を地で行くような話だが、まさに一人ひとりが自分に合った学び方をすればいい──そんな考え方がドイツでは当たり前のようだ。

嫌がりながらする勉強は「逆効果」

さらにドイツの教育制度では、小学校の4年間を終えると、その最終成績によって進路が3つに分かれる。卒業後すぐに職業訓練を受けて働く場合と、職業専門学校などを経て事務職や専門職になるためのコース、そして大学進学を目指すコースになる。

つまり、10歳時点での成績で、人生の進路が決まってしまうのだという。

「そのため、親も子供も、無理せず現実を受け入れていきます。他人と競争する、他人と比較するのではなく、留年や転校を恥じることもなく、その子供に合った最適な道を見つけていけばいいという考え方です。

一般的にドイツ人は、特に小さなうちは成績が悪くても親は子供を責めず、いかにその子が納得して能力に合わせて学べるかを考えて支えます。子供にはそれぞれの長所や能力があり、嫌がりながらする勉強に意味はなく、むしろ逆効果になると考えています。

ちなみに、ドイツを代表する文豪のヘルマン・ヘッセは1回、トーマス・マンは2回留年をしているそうです」(キューリング氏)

ドイツでは10人中9人が「学校生活に満足」

他人と比較するあまり、子供に過度なプレッシャーをかけることになれば、かえって子供の「自己肯定感」を下げることにもなりかねない。「ほかの子は頑張っている」「平均より成績が悪い」などと周囲との比較や競争ばかり強調しすぎると、思うように成績が伸びなかった時、子供たちは深く傷つき、学校に行くのも嫌になってしまう可能性もある。

興味深い調査結果がある。内閣府の「我が国と諸外国の若者の意識に関する調査」(2018年)によると、「あなたは、学校生活に満足していますか」の問いに「満足」「どちらかといえば満足」と答えた日本人は65.1%で、調査した7か国中で最下位だった。それに対して、ドイツは87.9%と調査国中で最も高かったという。

子供の能力に合わせた学習環境を整えて、能力以上の強制を課さないドイツの教育システムは、一見残酷に見えながら、「人生は成績がすべてではない」「あなたはあなたのままでいい」ことを幼いころから教えてくれるもののようだ。

むしろ、家庭で過ごす時間が増えた今こそ、親子のつながりを強めて、子供たちの「自己肯定感」を高めるチャンスかもしれない。親も、子供の成績に一喜一憂することなく、子供にとってベストの進路を考えるきっかけにすればいいのではないか。

【参考サイト・文献】
内閣府「我が国と諸外国の若者の意識に関する調査(平成30年度)」
『ドイツ人はなぜ「自己肯定感」が高いのか』(キューリング恵美子著・小学館新書)

NEWSポストセブン

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