「幸せにこだわると逆効果」いま知っておくべき3つの心理的パラドックス

「幸せにこだわると逆効果」いま知っておくべき3つの心理的パラドックス

  • Forbes JAPAN
  • 更新日:2022/09/24
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人間はパラドックスに溢れた生き物だ。私たちはしばしば、自分を救ってくれると思ったものが破滅への道であることに気がつくし、その逆もまた然りだ。

これは一般の人に限った話ではなく、心理学の研究者や第一人者も、自分たちの仮説をひっくり返すような現象が頻繁にある。

今回は、直感を覆し人間の行動の機微を改めて理解することができるかもしれない3つの事例を紹介する。

#1.幸せにこだわると逆効果になる
幸福の追求は旅のようなものだが、幸福は本当に目的地なのだろうか? 『Current Opinion in Behavioral Sciences(行動科学の最新知見)』に掲載された新しい研究によれば、そうではない。

カリフォルニア大学バークレー校の心理学者フェリシア・ザーワスは「幸福を極端に重視する人は、短期的にも長期的にも幸福を手に入れる可能性が低い」と述べている。

彼女の研究によれば、幸福を過剰に評価することで、特定の瞬間の肯定的な感覚が低下し、全体として心理的な幸福度や人生の満足度が低くなることがわかった。

このパラドックスを説明するために、ザーワスが引用したのは、あるグループの参加者には幸福に焦点を当てた偽の新聞記事を見せて幸福を大切にする価値観に誘導し、別のグループには幸福とは無関係な話題の記事を読ませた研究だ。

その結果、幸福を大切にする価値観に誘導された人は、他のグループの人と比べて幸福感が低いことがわかった。

ザーワスは「自分の幸福感や満足感に過剰にこだわると、人生の『もしもああしていたら』や『なぜそうなっていないのか』にばかり目が行ってしまって、逆効果になるのです」と説明する。

また、ザーワスは、幸福を追い求めるあまり陥りがちな、失望を招く2つの誤りについても言及している。

・ 1つは何が自分を幸せにしてくれるのかはわからないので、実際の役に立たない戦略をとってしまうのだ。たとえば、多くの人は(他人のためではなく)自分のためにお金を使えば幸福度が上がるはずだと信じているが、実証研究によると、自分のためにお金を使う人は、他の人のためにお金を使う人よりも幸福度が低いという逆の結果が示されている

・ また、社会的な圧力により、人は常に幸福を感じていなければならないという誤った考えが奨励されることがあるが、研究によればそれは間違った考えなのだ。(それがポジティブなものであれネガティブなものであれ)自分の感情を受け入れることで、時間とともに幸福感を高めることができる

ザーワスは、この幸福への道に立ちふさがる逆説的状況から抜け出せないでいる人たちのために、役立つ2つの脱出方法を説明している。

・ 1つ目は、幸福をうまく追求するための効果的な戦略を採用することに焦点を当てる方法だ。メンタルヘルスの専門家は、その人の状況に応じて、どのような幸せのエクササイズが最も効果的かを見極める手助けをすることができる

・2つ目は、感情的な目標を設定するプレッシャーを減らし、幸福を追求する過程で自分の感情を悪く捉える可能性を減らすために、マインドフルネスの実践に焦点を当てる方法だ

#2.悪夢は、起きている間の生活をより良くするために存在する
誰でも奇妙で不穏な夢を見る。そうした夢を見た後には、なによりもまず、その夢を完全に忘れたいと思うだろう。

しかし、学術誌『Dreaming』(ドリーミング)』に 掲載された、オリビア・トゥシグナントを代表とする研究によれば、不穏な悪夢は起きている間の生活で重要な感情的役割を担っていることが明らかになった。

彼女によれば、悪夢や好ましくない夢の中には、私たちを助けてくれるものがあるという。

・ 私たちが、1日をどのように方向づけ、どのように捉えるかの中に潜む、精神的にネガティブな要素に注意を向させてくれる。その組み合わせは、心労を示しているのかもしれない。そのように注意を向けることによって、ストレスの増加に寄与しているものを解決または(たとえば心理療法士と)共有し、ストレスを処理して解放することができる

・ 相対的な捉え方で、起床時のネガティブな感情を減少させる。朝には、悪夢を引き起こしたかもしれない前日のストレスに比べ、気分は軽くなっている

最近、不穏な悪夢を見るようになったという人に、トゥシグナントは次のようなアドバイスを行っている。

1. ペースを調整し、夢について共有することができる心理療法士と協力することで、時間とプロセスに関連した生活のストレス要因のパターンに気づくことができる

2. 夢を日記に書いたり夢の内容を詳しく説明したりする。口頭であれ、視覚的であれ、夢の結末を変えることができるのだ。その後、毎晩寝る前に、古い夢ではなく、新しい夢を10~20分程度、声に出して語ってみると良いだろう。この記録、変更、リハーサルのプロセスが、エビデンスに基づく悪夢からの回復セラピーの前提となる

3. 悪夢から目覚めたときに、心地よいもの(たとえば、落ち着く声を聞く、テディベアを抱きしめる、癒される香りをかぐなど)と関わることで、感情的な安心感や安全感をより強く感じることができる

「自分の心に好奇心を持ち続け、自分を支えようとする心自身を慈しみましょう」とトゥシグナントはいう。「夢は自分だけのものということを忘れないでください。それらは現実ではなく、あなたの心の中にもともとあるキャンバスに描かれたアートなのです。最終的に、夢の意味を決めるのは夢を見ているの自由なのです」

#3.集団的トラウマがコミュニティを救う
テロや自然災害のような集団的トラウマを経験すると、すでにうつ病や不安神経症の人は限界を超えるかもしれないと考えるかもしれない。しかし、最近『Personality and Social Psychology Bulletin』(人格社会心理学会報)に掲載された、ペース大学の心理学者アンソニー・マンシーニが率いる研究結果は、別の見方を示している。

マンシーニらは、新入生が大学に適応するための研究を行っていたが、偶然にも、ハリケーンサンディ(2012年に発生した大型ハリケーン)が大学キャンパスを襲った。

このことにより、マンシーニは、ハリケーンに直面した学生を対象に、ハリケーン前後のメンタルヘルスの研究を行うというユニークな立場となり、ハリケーンにさらされた学生とハリケーンにさらされなかった学生を比較する機会さえもが与えられた。

「どちらの比較でも、ハリケーン経験グループの方が良い成績を示した」と彼はいう。「ハリケーン経験グループの振る舞いを、ハリケーン前後で比較したところ、苦痛、否定的感情、愛着回避が減少していた」

マンシーニによって「逆境からの心理社会的利益」と呼ばれるこの現象は、社会的支援の増加、愛着不安の減少、愛着回避の減少につながった。その結果、ハリケーン経験グループは、ハリケーンを経験することによって、実際に質の高い日常生活を送っていることが明らかになった。

マンシーニによれば、ストレスには意外なほど心理的な利点があり、特にコミュニティの中で人との絆を深めるという意味で有効だという。

マンシーニは「ストレスの多い体験の後には、人と関わりたいという本能に従いましょう」と助言する。「新しい関係を築いたり、既存の関係を強化したりすることができて、その両方が将来あなたの利益になるかもしれません」

forbes.com 原文

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