今さら聞けない「ジョブ型雇用」と就活生への影響

今さら聞けない「ジョブ型雇用」と就活生への影響

  • 東洋経済オンライン
  • 更新日:2021/10/14
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「ジョブ型雇用」「メンバーシップ型雇用」という言葉があるが、そもそもどんな意味なのか (写真:NOV/PIXTA)

就職活動を進めていく中で耳にする「ジョブ型雇用」。そもそもジョブ型雇用とは何なのか? そしてどのような変化をもたらすのか。これから社会に出る就活生に向けて、新卒採用・就職活動の視点を踏まえて紐解いていきたい。

メンバーシップ型雇用=日本型雇用

ジョブ型雇用は「職務、勤務地、労働時間を限定する」雇用形態のことだ。企業側が必要とする職務や求める技能を限定したうえで、「仕事に人を割り当てる」という考え方で、欧米で広く取り入れられている。

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一方、 ジョブ型雇用と対立する形で出てくる言葉が「メンバーシップ型雇用」だ。これは「職務、勤務地、労働時間を限定しない」雇用形態のこと。「人に仕事を割り当てる」という考え方だ。別名「日本型雇用」とも呼ばれていて、「終身雇用」「年功序列」「新卒一括採用」といった特徴を持つ。それらは長らく日本企業の人事を支えてきた。

筆者が深く関わっている「新卒一括採用」を例にとると、多くの学生は入社後の育成を前提として、卒業と同時に就職する。企業は同じ時期に採用した人材を効率よく育成・戦力化して、定年まで自社の社員として働いてもらうことができ、効率という観点では理にかなった手法だと言える。これらの特徴から、日本における若年層の失業率は世界と比較しても極めて低く、社会的な意義も大きい。

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ではなぜ今、「ジョブ型雇用」が注目されているのだろうか。

理由はさまざま考えられるが、最も大きいのは「終身雇用」が失われつつあるという現状だ。メンバーシップ型雇用は、生涯一つの会社で勤め上げることが前提となり初めて、労使双方にとってメリットの大きい雇用形態手法だ。企業は将来的な回収を見込んで人材に投資できるし、労働者は安定した収入を担保に希望しない異動や転勤にも応じて会社に奉仕する。

しかし、現在は社会の変化が激しく、企業の多くは厳しいグローバル競争にさらされ、大企業であっても安泰ではない。そして競争に勝ち抜くために単に労働力を削減するのではなく、時代に応じた人材の確保や配置が必要になる。たとえば、自動車メーカーがEV化の進展で、電機メーカー出身のエンジニアの確保が続いている。今後そうした必要に応じて、専門的な人材の確保がどの企業や業界で当たり前になってくるだろう。

さらに、労働者の価値観も多様化し、ライフスタイルの変化にあわせた柔軟な働き方を考えるようになった。就活生の間では「ファーストキャリア(に選ぶ企業)」という言葉が使われ、転職によるキャリアアップを前提にしている傾向も見られる。

企業側も働く側も「新卒で就職したら定年まで」は、もはや当たり前ではなくなってきている。

こうした状況のなか、経団連は2018年に「Society5.0」の提言を発表し、そこで人事制度改革「ジョブ型雇用の導入」を盛り込んだ。労働者は、キャリア開発を組織任せにするのではなく、個人で責任をもち、スキル・能力を磨いていく必要があり、また、企業側はこうして磨かれたスキル・能力が活かせるような雇用形態を用意すべきだ、という議論に発展しているのである。

ジョブ型雇用の導入ハードルは高い

しかし、これほど話題になっているにもかかわらず、ジョブ型雇用の導入が進んでいないという現実もある。それはなぜなのだろうか。

理由として挙げられるのが、人事制度を根底から変更する必要があるという問題だ。ジョブ型雇用は採用時に「職務内容(ジョブディスクリプション)」を募集要項に提示すればよい、という単純な話ではない。

極端にいうと多くの日本企業で見られる「総合職」を廃止するような考え方だ。当然、配置・配属方法や評価制度をすべて見直す必要がある。また、多くの人が最初は「職務実績のない状態(=新卒)」で就職するわけだが、「職務実績のない人材」の資質や可能性に投資するような「ポテンシャル採用」もない。企業側には導入コストが大きく、働く側にとっても一定のリスクをともなう。

実際、経団連のメッセージを見ても、「ジョブ型雇用へ完全に移行せよ」ではなく、「メンバーシップ型を活かしながらジョブ型を最適に組み合わせた、『自社型』雇用システムをつくり上げていくことが大切」という表現をしている。

このような状況下で、新たに注目されているのが「ジョブ型採用」だ。導入が難しい「ジョブ型雇用」のうち「予め職務内容を限定し、提示する」という考え方を新卒採用という場面において活かしていこうとする考え方である。

「ジョブ型採用」は「新卒一括採用」に「ジョブ重視」という考え方を取り入れた手法で、あくまで、初期配属の職種や配属部署を確約するなどして、「学生が入社後すぐに何をするのか」を明確にするものだ。

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企業側にも学生側にもジョブ型採用のメリットはある(画像:マイナビ)

企業は学生に対して「希望する仕事ができる」ことを提示することで優秀な人材を確保し、”わからない”ことに起因する不安感(内定ブルー)の解消を目的としている。学生にとっても、初期キャリアの段階で「(仕事を通じて)何ができるようになるのか」を知ることができ、仕事内容が明確になることのメリットは大きいだろう。「ジョブ型採用」は現在の雇用制度のメリットを残しつつ、あらかじめ仕事内容を提示して、就職先を仕事軸で選ぶ機会を提供することができるのだ。

こうした動きはまだ少数派だが、学生の就職活動においても意識変化が生まれることが想定される。

「自分が入社後数年間でどのような仕事ができるか」という「仕事軸で就職先を選ぶ」という選択肢を持つようになるのだ。一方、多くの企業は「総合職採用」のスタイルが主流で、学生が入社後の業務内容や配属について入社前に知りたいと思っても、企業側は明確なことを伝えるのが難しい場合もある。

しかしながら、企業によっては、新入社員の多くが配属されやすい部門が存在する場合もあるし、その企業の事業内容から職務内容を想定することは可能だろう。その企業の仕事内容に関して、内定承諾の前にしっかりリサーチして、少しでも情報を得ておく、という方法もあるのではないだろうか。

就活生が考えるべきこと

もしジョブ型採用が広がれば、就活生は「どのように生きたいか」を主体的に考えることがより求められる。就職はゴールではなくて、キャリアのスタート。自分のキャリアに責任をもち、どのようなキャリアを築きたいか考えていくことが重要となる。

そうすれば、学生時代に身につけておくべき能力や経験などが具体的に見えてくるのではないだろうか。新卒採用は確かに育成前提の採用手法だが、ゼロベースのスタートでは時間もコストもかかる。変化や競争が激しい状況のなか、より短期間で戦力化することが求められることも十分にありうる。そうしたなか、成長スピードを上げるために、学生は「仕事を学ぶ準備ができている状態」にしておくことが、大きなアドバンテージになるだろう。

例えば、専攻内容がそのまま仕事につながるのであれば、まずは学業を頑張る、でももちろんよい。プログラミングやデータ分析力、語学力、卒業論文を書く際に磨かれる文章構成力もそうだし、ホスピタリティが必要な職種ではボランティアといった課外活動そのものがスキルを磨く活動といえる。

上記のような活動は就活中に自己PRにつかわれるエピソードのように思われるかもしれないが、目的が異なる。「経験したことを語り自分をPRする」ためではなく、「今後、自分が働くうえで必要だからスキルを身に付ける」という目的である。「働くうえで必要だからスキルを身に付ける」という姿勢で取り組めば、学びの質も量もより充実したものになるのではないだろうか。この前提に立つと、自分が企業に入社してどんな仕事ができるのか、という情報が前もって必要になってくることは言わずもがなである。

就職活動のゴールは内定獲得ではない。少し視点を先へ持っていき、「卒業後、社会に出て活躍できる人材になる」ことを目標に、日々の活動に取り組んでみてはどうだろうか。

(東郷 こずえ:マイナビ キャリアリサーチラボ 主任研究員)

東郷 こずえ

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