営業時間短縮要請で明暗。[都心/地元]飲食店の悲鳴

営業時間短縮要請で明暗。[都心/地元]飲食店の悲鳴

  • ハーバービジネスオンライン
  • 更新日:2020/09/16

これまで東京23区限定で出されていた飲食店の夜10時までの時短営業の要請が解除される。飲食業界は4月の緊急事態宣言以降、危機的状況が続くが変化の兆しも。明暗が分かれた業界の悲喜こもごもをリポートする!

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◆港区、中央区、千代田区の“中央3区”に激震

8月後半の平日夜、とある歓楽街を歩いていると、後方から「このままじゃマジで死ぬわ」という声が聞こえてきて、思わず振り返った。声の主は飲食店のキャッチとおぼしき30代ぐらいの男性。別店舗の前掛けをつけた男性も傍で大きく頷いている。

4月7日に発令された緊急事態宣言と外出自粛要請で弱った飲食店に、追い打ちをかけるかのような8月の営業時間短縮要請。6月に東京アラートが解除され、徐々に戻りつつあった客足に、9月半ばまでの時短営業延長(東京23区限定)で、急ブレーキがかかった。9月8日には老舗洋食チェーンの「キッチンジロー」が23区内の12店舗と大阪の1店舗を閉めると発表し、世間を騒がせた。

都内の飲食店事情に詳しい『食楽』編集長の大西健俊氏は次のように語る。

「どこも苦しい状況ですが、特に厳しいのが港区、中央区、千代田区の中央3区。もともと住人が少なく、ビジネスマンが多いエリアな上に、緊急事態宣言解除後もリモートワークを推奨する企業が多い。それに伴い、接待や宴会も軒並み激減しています。9月に入って赤坂の老舗居酒屋『M』にお邪魔したのですが、通常夕方5時の口開け早々満席になるお店に客は自分たちのみ。7時までにはポツポツと人が入ってきましたが、店主の話によると、現在の客入りは平常時の5、6割といったところだそうです」

◆個人利用が多い居酒屋も厳しい状況に

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宴会や接待需要が主軸の飲食店が直撃をくらっているのはわかるが、個人利用が多い居酒屋も厳しい状況に立たされている。「飲んで電車に乗るのが憚られる」「気軽に同僚を誘えなくなった」などの心理的要因も大きいのだろう。

「昨年、銀座にフレンチの店『O』をオープンしたシェフによると、140万円の家賃に従業員の給料と食材費を合わせると毎月400万円が飛んでいくそうです。それでも独立前からのお客さんが来てくれるらしく、何とか凌げている状態。もっと苦しいのは、チェーンや多店舗展開している店。出ていく金額も大きいので、少しでも流血量を抑えるべく早めに閉店の判断を下しています。うどんすきの『美々卯』が関東撤退を発表したのも5月末でしたよね」(大西氏)

2軒目、3軒目での利用が多いスナックやバーも厳しい。四谷3丁目のスナック「アーバン」の臼井悠さんは語る。

「ウチは地下のカラオケスナックなので、換気の面からいっても不安があり、来る人は拒みませんが、こちらから積極的な営業がかけられない状況です。休業していた4~6月の売り上げはほぼなし。7月以降も通常の5分の1ぐらいでしょうか。保証協会・金融公庫共に早い段階で融資を申し込みましたが、怖いのは来年度。今回の協力金も給付金も課税対象なので、年末までに店内の改装などで経費を使わないと、と焦っています」

都知事の「夜の街」発言で直撃をくらった歌舞伎町のバー「O」も厳しい状況が続いているという。

「もともと遅い時間から開けているお店が多いエリアなので、夜10時までというのは実質、ここでは飲むなと言われているようなもの。協力金?1日分の売り上げ程度にしかなりませんが、歌舞伎町自体の客足が落ちているので、8月中は閉めていらっしゃるお店も結構ありましたよ」

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◆客足の戻りが早いのは、地元密着型の店舗

9月に入り、銀座インズや有楽町の交通会館など、名のある商業施設の苦境も耳に入るようになってきた。その一方で、一足早く客足を回復しつつあるのが、都心から離れたハブ駅にある繁華街や私鉄沿線のベッドタウンだと大西氏は語る。

「9月も営業時間短縮要請が継続していた23区内にありながら、北千住の飲み屋街は10時以降も酔客を多く見かけました。実感値では、マスクをつけていない人も増えています。また、週末の二子玉川も人出がすごい。今年の夏はどこにも行けなかったけれど、比較的罪悪感が薄い地元で家族サービスをと考える人が多かったからでしょう。6月に国土交通省が支援策として、飲食店などの路上利用の規制を緩和すると発表しましたが、中央線沿線やニュー新橋ビルの裏手などは、外にテーブルを出して飲んでいる人もかなりいます。もともと海外に比べて日本は規制が厳しかったので、こういう動きはどんどん進めばいいと思います」

さまざまな対策を積み上げ、難局を乗り越えようとしている個人店もある。蒲田の人気スペインバル「Flowers & Spanish Sonrisa」の上田光嗣さんは語る。

「飲ん兵衛が多い土地柄というのもありますが、6月にはゆっくりお客さまが戻ってきて、7月には9割以上の戻り。売り上げベースでいくと席数を減らしたにもかかわらず前年比108%でした。理由は単純で、営業開始時間を早めて営業日数を増やし、メニューと食材を見直して一皿一皿のクオリティを上げたんです。しかし、8月の時短要請で売り上げは5割まで落ち込みました。10月ぐらいからまた客足が戻ってくれるんじゃないかと願いつつ、いまは辛抱するのみです」

また、地元密着型の店舗には、経営者が高齢化し、無理をしてコロナ禍のなか営業を続けるならいっそ、と店じまいをした店舗もある。そうかと思えば、山手線内側の家賃相場が下がり、安値で好立地の物件を押さえる気鋭の若手シェフもいると大西氏。これを機に、東京の飲食業界で一気に世代交代が進むかもしれない。

◆地元密着型の飲食店店主の心のうち

スマホのアプリから取得した位置情報ビッグデータを解析し、流動人口データを提供しているAgoopによると、コロナ禍で「都心部では著しい人口の減少が発生し、郊外では分散する形で人口の増加が確認できた」という。

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データ提供/Agoop

では、時短要請が延長となった23区内と外で差はあったのだろうか?杉並区の西端に位置する西荻窪の人気居酒屋の店主は語る。

「小池さんが営業自粛解除の対象から23区を除外した日の夜、某局が取材にきて、『吉祥寺が外れたのをどう思うか?』と聞くので、『アンタらが大騒ぎするから店に客がきにくくなるし、自粛警察が暴れるんだよ!』と言ってやりました。8月の半ばくらいから9割以上お客さんが戻ってきているので、もう余計なことは言ってほしくないのが本音です。実はコロナ以降、客層が変わりつつあるんです。ここらはどこのお店も地元在住の常連がついていて、客の入れ替わりは激しくないのですが、ここにきて、新規のお客さんがかなり増えました。これまで都心で飲んでいた人が、1軒目から地元で飲むようになったからでしょう」

リモートワークが定着しそうな今、中央の空洞化はさらに進む?

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【大西健俊氏】

1977年、神奈川県出身。月刊誌の編集を経て、食や旅をテーマに編集者として活動。現在、『食楽』編集長、地方創生メディア『ONESTORY』副編集長等を務める。

<取材・文・撮影/山脇麻生 撮影/細川葉子>

※週刊SPA!9月15日発売号より

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