「正直・公正・マジ実直」 うつけん3度目の都知事選を支えた意外なSNS発信

「正直・公正・マジ実直」 うつけん3度目の都知事選を支えた意外なSNS発信

  • Forbes JAPAN
  • 更新日:2020/08/01
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2020年の東京都知事選挙は、新型コロナウイルスの影響もあり、候補者によるインターネット上での選挙活動が白熱した。小池百合子都知事は「街頭演説をしない」として、代わりにYouTubeやインスタグラムでの動画配信などに力を入れた。

史上最多の22人の候補者が出馬した今回、地方暮らしが長かった筆者にとっては初の都知事選だった。今回は街中に行く機会も少なく、選挙カーを見かけることはなく、インスタグラムやツイッターのSNSを中心に、情報収集をしてみた。

そんな中、3度目の選挙で約84万票を集めた宇都宮健児さんのSNS発信に興味を持った。「正義の弁護士」とも称され、反貧困ネットワーク代表として貧困問題に長く取り組んできた。地道で実直なキャラクター、ともなれば地味になりがちだが、彼のSNSでの発信は様子が異なった。

「うつけん」の愛称で呼ばれ、奇抜な手法で注目される泡沫候補と肩を並べるほど、ある意味、ぶっ飛んでいるようにも感じたのだ。現在73歳。彼の発信を支えたメンバーに、SNS戦略について聞いた。

取材に応じてくれたのは、SNS担当の柴田麻里さんと、選挙期間中に宇都宮さんのインスタグラムアカウントを開設したMさん(仮名)だ。

──まず都知事選の際の担当と、普段のお仕事を教えてください。

柴田さん:私は普段はフリーランスのライターや編集者として働いています。2012年の都知事選から宇都宮さんの広報をお手伝いしていて、今回からSNS担当をしています。主にツイッターの「宇都宮けんじ 広報」のアカウントでの発信に力を入れていて、フェイスブックも担当してました。

Mさん:僕は自分でアパレル雑貨のブランドを企画し、オンライン販売をしています。海外向けにインスタグラムを運営していますが、柴田さんから声がかかり、宇都宮さんの発信のお手伝いをしてみたいと思いました。5月末の出馬宣言の後、6月9日から宇都宮さんのインスタグラムを開設して手探りで発信してきました。

──SNS発信はどんなメンバーでされていますか。また事前に戦略を決めていましたか。

Mさん:30〜40代のボランティア約10人で運営しています。そこまで事前にすり合わせたわけでもありませんが、ツイッターとインスタグラムのSNSとしての特徴は違うので、その点は意識しましたね。TikTokも投票日4日前に別の担当者が始めました。

柴田さん:ツイッターって速報性が重要視されますよね。選挙戦では活動の告知が最も重要です。今回は新型コロナウイルスの感染防止のため、事前に街宣(街頭宣伝)の場所を告知せずに行い、その代わりにすべてネット配信しました。またZoomを使ったオンラインイベントにも力を入れていました。

普段なら選挙事務所に集まりますが、今回私はずっと自宅でリモートだったのでスケジュール確認の情報収集が大変でした。宇都宮さんは現場主義なので、自身の政策に関連する現場に行って関係者の話を聞いたりする「政策現場レポート」をしていました。人手が少ないながらも、宇都宮さんのそういうところをいかにうまく伝えるかを意識して、発信しました。

──ツイッターとインスタグラムの発信ではどんな違いを意識しましたか。

柴田さん:宇都宮さんは弁護士として長年の実績があり、人柄を知ってもらうためにも、著書からこれまでの活動をまとめて発信していました。

また非常に分厚い総合政策集があり、こんなにも多くの政策をどうやって伝えるんだろう? と思いましたが、特に話題になりそうな政策を伝えるようにしました。例えば「グリーン・リカバリー」といった気候危機についての政策は宇都宮さんだけしか打ち出しておらず、他の候補者と差別化を図れるように、分かりやすく政策のバナーを作って発信しました。

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宇都宮さんが掲げた「グリーン・リカバリー」政策のバナー

Mさん:インスタグラムの場合はツイッターのようにニュース性よりも、ビジュアルとして感覚的に見るので、宇都宮さんのことを好きになってもらうために本人の魅力を伝えるようにしました。

そのためには、まず魅力が何なのか。SNS担当のチームはチャットでよくやりとりをしていたのですが、長く宇都宮さんのボランティアをしている人が多く、愛されていることがすぐに分かりました。雑談からヒントを得ていったんです。

あんパンと牛乳が好きと分かると、日中一緒に行動するスタッフに「宇都宮さんが食べている映像をおさえてください」とお願いしました(笑)。ほかにも、自分でいつもiPadを持ち歩いて操作したり、選挙のたすきをかけたまま電車移動したり、素顔が見えるオフの写真や映像を撮ってもらって投稿しましたね。

逆に、選挙アカウントにありがちな、街宣の画で埋め尽くされるようなことはなるべく避けていました。街宣については、絶対に見てもらいたい「決めの演説」を選んでアップしました。

この投稿をInstagramで見る#あんぱんと牛乳  #宇都宮けんじ の大好物はあんぱんと牛乳 #UKバナー2020 #都知事選宇都宮けんじ(@utsunomiya_kenji)がシェアした投稿 - 2020年 6月月30日午前2時14分PDT

──インスタグラムのストーリーズの使われ方も印象的でした。

Mさん:一方的な発信ではなく、応援してくれる人たちとのコミュニケーションを生かしたいと思い、ストーリーズを多用しました。

そもそも自分が宇都宮さんを応援したいと思ったのは、毎日のように東京が抱えている課題の現場へ足を運んでいて「選挙は社会を変えていく運動のひとつにすぎない」という考え方に惹かれたからなんですね。だからインスタグラムも、選挙が終わった後でも見て学べるものであってほしいと思い、都政の課題を示す2分ほどの政策動画を投稿しました。それらの動画は、IGTVに保存して今も見られるようにしています。

──コロナ禍で選挙活動にも大きな影響があったと思います。最後の街頭演説は「街宣ファイナル」として外で大々的にやる予定が、新型コロナウイルスの影響でYouTube配信に切り替えていましたね。

柴田さん:私は2012年の選挙戦からお手伝いをしていますが、無党派層に訴えるためにも、いかに街頭宣伝活動で多くの人と触れ合うことが大事なのか、実感してきました。それが今回はコロナの影響でできず、本当に残念でした。その代わりに、Zoomを使って市民に参加してもらって、対話をするオンラインイベントを重視してきました。

感染症対策は、選挙対策本部が一番苦心した点です。結局、密の状況を避けるために、街宣の場所については一切告知しないことになりましたが、「ネット配信をやるので必ず見てください」と発信していました。

多くの人に生で伝えられないのはすごく残念でしたし、支持者の方からは「なんで場所を教えてくれないの?」という問い合わせもあり、「感染症対策で」と答えるのが心苦しかったです。現場でも選挙事務所でもフェイスシールドにマスク、消毒液でこまめに手を消毒したり、感染症対策マニュアルを作ったり、対応に追われてきました。

さきほど、#宇都宮けんじが感染拡大を防ぐため、一人で行なったフィナーレ演説の録画はこちらでごらんになれます。

「都民の生存権がかかった選挙。自己責任社会から社会的連帯。希望のもてる東京へ」#東京都知事選#Iamwith宇都宮けんじhttps://t.co/BaxmxZPfzYpic.twitter.com/jCJ2O77T0T— 宇都宮けんじ 広報 (@utsukenpress)July 4, 2020

──都知事選で各陣営がツイッターのトレンド入りを狙っていたという報道もありましたが、どうでしたか。

柴田さん:狙っていたわけではありませんが、「#Iamwith宇都宮けんじ」が投票日の数日前にトレンド入りしたのは嬉しかったですね。これは文化人や著名人、作家などの応援メッセージの2分ほどの動画を投稿する時に使っていたハッシュタグでした。浸透するといいなとは思ってましたが、いつの間にか広がっていました。

「#私たちは微力だけど無力じゃない」などは、宇都宮さんの演説の言葉です。長い運動の経験から生まれた数々の名言は、2012年の選挙のときから発信するようにしていました。

──インスタグラムのハッシュタグ「#じわるうつけん」や「#デコるうつけん」は、弁護士としての地道なイメージとは違って、驚かされました。後者では、「正直・公正・マジ実直」とデコレーションされた画像があり、ギャルっぽい雰囲気で面白かったです。

Mさん:「#デコるうつけん」は、ある投稿者の方がストーリーズでメンションをつけてくれて発見しました。ちょっとびっくりされるかもしれないけど、真面目なところも紹介した上で、崩した感覚でストーリーズでもシェアしました。

「私にはデコることしかできないんだけど」という投稿を見て、公式アカウントから「ありがとうございます」と紹介すると、次の日の朝に新しいバージョンが投稿されていて、自分自身毎日の楽しみになっていました。他の人も「#デコるうつけん」に自分で飾った宇都宮さんの画像をシェアするようになり、盛り上げてくれました。

「#じわるうつけん」 は、オフショットを見てじわじわと面白さを感じてもらいたいと楽しめる投稿にしました。

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筆者が公式アカウントのストーリーズで見かけた #デコるうつけん の投稿(スクリーンショット)

──選挙前後で、フォロワーはどのように変化しましたか。

Mさん:若い女性にウケてるんですよね。宇都宮さん自身がインスタグラムにマッチしたんだと思います。フォロワーは0から5700人以上に。最初男女比は半々でしたが、最終的には女性が70%以上に。年齢層は、40代が多かったのがどんどん若くなって、20代がメインになりました。

柴田さん:宇都宮さん本人のツイッターのフォロワーは11万4000人で、広報アカウントは約1万6000人。2016年から始めて今年6月時点では4000人だったので、じわじわと増えましたね。

──最後に、お二人が発信する際の心がけていたことを教えてください。

柴田さん:魅力を伝えることがすべてですね。パッと出た人ではありません。30年間、弁護士としてサラ金と闘ってきて、2012年以降は都政監視の活動もずっと続けており、伝えることが山ほどあります。地味なおじいちゃんとは思われたくありませんでした。

それに誰だって叩けばほこりが出ますよね。ですが、宇都宮さんにはそれがありません。嘘がなく、上下関係なく誰に対しても同じ態度で接します。そういった誠実で信頼できる人柄についても伝わるような発信を心がけました。

Mさん:インスタグラムは、投稿のバランスですね。同じ要素のコンテンツを出し続けないようにしつつ、政策をしっかりと伝えるようにしていました。

情報を発信する際には「シェアしてもらいたいのか」「見て知ってもらいたい=いいねと思ってもらいたいのか」という2点を意識しました。

発信するネタには困らないので、出せば出すほどインスタグラムはごちゃごちゃになってしまいます。それをどう整理するのか、政策ごとにハッシュタグを変えて、動画、テキスト、画像など、細かい調整をしました。

宇都宮さんが言ってきたように、選挙に出て終わりではありません。ご本人がiPadでツイッターを使いこなすように、インスタグラムもやってもらって、インスタライブで前向きな言葉や希望の政策について語ってもらいたいですね。

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