Netflix『舞妓さんちのまかないさん』で再燃か。特例では済まされぬ舞妓さんの過酷な労働実態

Netflix『舞妓さんちのまかないさん』で再燃か。特例では済まされぬ舞妓さんの過酷な労働実態

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  • 更新日:2023/01/25
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森七菜、出口夏希のW主演でNetflixシリーズとして配信が始まった『舞妓さんちのまかないさん』。小山愛子原作でアニメ化もされた人気作品のドラマは、日本だけでなくアジアを始め世界で注目されているようです。そんな舞妓さんが働く姿に疑問が生じたと語るのは、メルマガ『週刊 Life is beautiful』著者で「Windows95を設計した日本人」として知られる世界的エンジニアの中島聡さんです。昨年大きな問題となった舞妓経験者の暴露ツイートに関する厚労大臣の発言の無責任さを問題視。「伝統文化」だからこそ法律で手厚く保護する必要があると訴えています。

プロフィール:中島聡(なかじま・さとし)
ブロガー/起業家/ソフトウェア・エンジニア、工学修士(早稲田大学)/MBA(ワシントン大学)。NTT通信研究所/マイクロソフト日本法人/マイクロソフト本社勤務後、ソフトウェアベンチャーUIEvolution Inc.を米国シアトルで起業。現在は neu.Pen LLCでiPhone/iPadアプリの開発。

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Netflix「舞妓さんちのまかないさん」を観て調べた労働基準法や風営法の問題

Netflixで「舞妓さんちのまかないさん」を見始めました。京都の花街を舞台にした、食を中心にしたドラマで、ドラマとしてはとても面白いのですが、中学校を卒業したばかりの16歳の女の子が、「見習い」として夜の宴会の席に出る場面があり、それが労働基準法や風営法に違反するのではないかが気になって仕方がないので、色々と調べてみました。

労働基準法第61条には、

使用者は、満18歳に満たない者を午後10時から午前5時までの間において使用してはならない。

とあり、ここだけ見ると、どう考えても違法です。

しかし、日本はいまだに小中学校のみ義務教育であるため、中学を卒業して直ぐに働く子供たちがおり、それを可能にする法律として、民法第6条に

子は、親権を行う者の許可を得なければ、職業を営むことができない。

と親の許可があれば、「労働者」として働けることになっています。さらに、民法第6条には、

一種又は数種の営業を許された未成年者は、その営業に関しては、成年者と同一の行為能力を有する。

とあり、これが未成年でも午後10時以降でも働ける理由になっているそうです。

一方、風営法の第22条には、

第二十二条 風俗営業を営む者は、次に掲げる行為をしてはならない。 三 営業所で、十八歳未満の者に客の接待をさせること。

と明記されており、これだけで舞妓は違法に思えますが、京都市の解釈としては、「舞妓は法的には労基に規定される労働者ではなく見習いです。京都市の条例で舞妓は『伝統芸能の継承者』として酒席へ出ることを特例で認められている」そうです。

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この事件に関して、後藤茂之厚生労働省大臣に対する記者とのやりとりが、公開されています。
後藤大臣会見概要 |令和4年6月28日|大臣記者会見|厚生労働省

【記者】 京都の花街で働く芸妓ですとか、舞妓と呼ばれる女性への法的な保護について伺います。芸妓や舞妓という方々は、所属する置屋との間で雇用契約が存在しない場合もございます。特に舞妓においては、未成年者でありながらも仕事のなかで飲酒をすることもあります。こうした芸妓や舞妓という方々は、労働基準法の適用される労働者とみなされるのでしょうか。



また、所属する置屋ですとか、実際に働く花街、お茶やという場所というのは労働基準法や労働安全衛生法の適用される事業場となりますでしょうか。



いずれも該当しない場合というのは、未成年者を含む芸妓や舞妓という方々にはどのような法的な保護がなされるのでしょうか。大臣のご所見をお願いいたします。



【大臣】 まず、個別の事案についてはお答えがしにくいということについては、申し上げておきたいと思います。



労働基準関係法令においては、健康や福祉の確保の観点から、18歳未満の労働者について、夜10時以降の深夜業や、酒席に侍する業務に従事させることを禁止しています。



労働基準法が適用される労働者であるか否かは、契約の名称にかかわらず、仕事の依頼や、業務指示等に対する諾否の自由はあるのか、業務を遂行する上で指揮監督を受けているか等の実態を勘案しまして、総合的に判断されるものであるため、一概にお答えすることは困難であると考えます。



また、ご指摘の「置屋」が労働基準法上の「事業場」に該当するか否かについても、個別に実態を踏まえて判断されるものであるため、一概にお答えすることはできないと考えております。



いずれにしても、ご質問にあった未成年者の飲酒については、「二十歳未満の者の飲酒の禁止に関する法律」によりまして、飲酒も、酒の提供も禁止されているものと承知をいたしております。芸妓や舞妓の方々が適切な環境の下で、芸妓や舞妓としてご活動いただくことが重要であると考えております。

大臣(もしくは、この答弁の原稿を書いた官僚)が、この問題を真正面から直視しておらず、積極的に対処する気が全くないことが良く分かる答弁です。

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Twitterでアンケートをとったところ、以下のような回答になりました。

日本の伝統文化だから、このままで良い。 22.4% 労働基準法・風営法上問題なければ、このままで良い。 28.7% 必要ならば法律を改定してでも禁止すべき。 48.9%

勘違いしている人が多いのですが、労働基準法、民法、風営法上は、働く人を守るために作られた法律であり、もしこれらで舞妓さんたちを守れないのであれば、法律を改定してでも彼らを守る(この例では、彼女たちが酒の席に同席できないようにする)のが、政治家の役目なのです。

なので、重要なことは「中学校を出たばかりの女の子が酒の場に同席することが良いことかどうか」という観点からどうあるべきかを決め、その観点から、法律に不備や抜け道はないかを議論し、必要に応じて法律を変更するべきなのです。

舞妓さんたちが、実際にお酒を飲まされたり、顧客と風呂に入ることを命じられたりすることが起こっていることを考慮すれば、「酒の場に同席する」ことを禁止にすべきなのは明らかです。後藤大臣は「個別に対処する」と答弁していますが、自分達にどんな権利があるのか、何が不適切なのかの判断すら出来ない未成年者が関わっている場合には、個別対処ではまったく不十分で、政府が積極的に動いて、包括的に対処すべきです。

私が政治家であれば、まずは民法第6条を改定し、たとえ親の同意があろうと、未成年者は未成年者として扱わなければならない(つまり10時以降は働いてはいけない)とし、同時に、風営法は「見習いであろうと、未成年者の酒の場への同席は禁止する」とします。

さらに、舞妓さん向けの冊子を作り、そこに彼らの権利を分かりやすく明記し、何が不適切な行為かを具体例を挙げて説明し、かれらがいつでも相談できるような相談窓口を設置します。そして、その冊子を毎年一度、彼女たちに配ることを置屋の義務とするなどの措置が必要だと思います。

伝統文化として舞妓を残したいのであれば、彼女たちに不適切な労働をさせずに舞妓のシステムを維持する方法を作りだすべきなのです。それがどうしても無理であるならば、舞妓は「滅ぶべき伝統文化」なのです。

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image by:Osaze Cuomo/Shutterstock.com

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