大学選手権に出ずともプロ注目の逸材。白鴎大・中山誠吾は「和製ジーター」となるか

大学選手権に出ずともプロ注目の逸材。白鴎大・中山誠吾は「和製ジーター」となるか

  • Sportiva
  • 更新日:2021/06/10

大柄の選手にありがちな緩慢さはまるでない。白鴎大の中山誠吾は190センチ、97キロの大型遊撃手として、プロスカウトからも高く評価されている逸材である。

たとえば、三遊間よりの打球に素早く回り込むと、自慢の強肩を生かしたノーステップスローで楽々とアウトに。前のボテボテのゴロにも軽快なフットワークからランニングスローを決めるなど、従来の大型遊撃手のイメージを一掃させる。

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強肩強打の大型遊撃手、白鴎大の中山誠吾

「もし自分がこの身長と体重の選手を見たら、『絶対に守れないだろう』って思うでしょうね(笑)」

中山は小学2年で野球を始めると、すぐにショートを任された。長身だったこともあり、中学まではピッチャーを任されることもあったというが、本職のショートは栃木の強豪・青藍泰斗高校に入ってからも変わることはなかった。

「学校の同級生もそうですし、初対面で会った人には『どこ守っているの? ピッチャー?』ってよく聞かれます」

大学進学後はチーム事情もあって、ファーストやサードを任された。「上の世界で通用するような長距離砲に育てたい」という黒宮寿幸前監督の親心からだった。

大学1年秋の横浜市長杯(関東地区大学野球選手権)からスタメンで起用されると、大学2年の秋の関甲新学生リーグで3本塁打、3年秋のリーグ戦でも4本塁打を放つなど、素質を開花させた。

一躍スラッガーとして注目を集め始めた中山だったが、本人はショートを守ることにこだわりを持ち続けていた。

「大学もショートで入ったんですけど、そこからファーストやサードを経験させてもらって......でも、ショートを守れない悔しさもどこかにあって、それだけこだわりがあったんだと気づきました」

3年秋、病床に伏した黒宮監督に代わって指揮を執った藤倉多祐(かずまさ)監督から「来年はショートをやるぞ」と伝えられ、自ずと気合いが入った。

「昨年の冬から今春にかけて、しっかり動けるようにと体重を絞り、基礎練習を反復して、守備を鍛え直しました。それでも試合でエラーをしたら『やっぱり動けない』と思われるだろうし、そう見られるのは嫌なので、とにかく球際に強くなろうと練習しました」

ウエイトトレーニングでパワーをつける一方で、アジリティトレーニングにも励み、瞬発力は格段に増した。

今年春のリーグ戦では、久しぶりのショートだったにもかかわらず、67回の守備機会で失策はわずか2つ。目標に掲げていた「年間ノーエラー」は果たせなかったが、高い守備率を発揮した。

中山は「プロ野球選手になりたい」という夢を叶えたい一心で、幼少の頃から野球に打ち込んできた。修学旅行や文化祭、体育祭といった学校行事にもほとんど出た記憶がないという。

高校3年の秋、同級生の石川翔が中日からドラフト2位で指名されたが、中山にはプロから声はかからなかった。

「これまで自分よりすごい選手をたくさん見てきましたし、高校の時もプロを目指していたんですけど......先に石川にプロに行かれて、その時も素直に喜べなかったですし、自分がみじめだと思ったこともありました」

なんとしてもプロの世界に飛び込みたい。コロナ禍で揺れた昨年春も、中山は自主練習に明け暮れた。

「コロナ禍の自粛期間は、むしろ自分にとってプラスでした。『このまま野球ができなくなっちゃうんじゃないか』というよりは、『今のうちに差をつけておこう』と。今がチャンスだと思って、練習に励んでいました。自分は特別センスがあるわけじゃないので、人の何倍も努力しないといけない」

そんな中山には白鴎大に来て、影響を受けた先輩がいる。2学年上の大下誠一郎(現・オリックス)だ。

「誠一郎さんは自分の部屋にもよく来てくれて、相部屋の山田和哉(現・JFE東日本)さんと3人でよく練習しました。野球への意識というか心構えが、やっぱりほかの人と違うところにあって。そういう姿を間近で見られたのは財産になったと思います」

また、プロ入りして恩返ししたい人がいる。父の誠さんだ。

中山がショートにこだわるのも、大学、社会人でショートを守っていた誠さんの影響である。中学時代は父が監督を務める栃木ヤングベースボールクラブで守備のイロハを叩き込まれた。

「中学3年の時に父が転職することになって......新しい職場が決まるまでの約1年間、その時期は遊んだ記憶がないくらい、毎日グラウンドに通って練習しました。そこで基本的な動作を体に染み込ませました」

父からは「迷ったら前に出ろ」と言われ続け、それが今のアグレッシブな守備にもつながっている。

「父と一緒に練習してきたことが、今も試合中のちょっとした反応に出る。そう考えると、本当にいい教えを受けたと思っていますし、父のもとで野球ができて本当によかったと思っています」

だからこそ、遊撃手としてプロに行きたい。非凡な長打力にスポットが当たっているが、中山自身はもっと守備を見てもらいたいという思いが強い。

「高校3年の時に石川翔とも『4年後、絶対にプロに入る』と約束しましたし、今年はチャンスだと思っています。ただ、意識しすぎるのはマイナスだと思うので、自分ができることをコツコツとやるしかない。それでダメだったら仕方ないと思えるようにやりきって、その時を待ちたいです」

国内ではあまり類を見ない大型遊撃手だが、MLBにはデレク・ジーター(元ヤンキース)やアレックス・ロドリゲス(元ヤンキースなど)、フェルナンド・タティスJr.(パドレス)を筆頭に、名だたる実績者が並ぶ。

日本球界の常識を覆す大型遊撃手へ──その可能性を中山誠吾は秘めている。

永田遼太郎●文・写真 text & photo by Nagata Ryotaro

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