「面倒なお願いには付箋に手書きでひと言添える」「すぐに行動にしてほしいときは盛り上がったタイミングがチャンス」...世界中の大学の研究から明らかになった相手に届く伝え方とは

「面倒なお願いには付箋に手書きでひと言添える」「すぐに行動にしてほしいときは盛り上がったタイミングがチャンス」...世界中の大学の研究から明らかになった相手に届く伝え方とは

  • 集英社オンライン
  • 更新日:2023/01/25

面倒なお願いをしないといけない、もう締め切り間近だし催促したい…でも相手はどう思うだろうか…と考えすぎて数日過ぎてしまうことはないだろうか? ハーバード大学、スタンフォード大学などの研究から明らかになった伝え方の法則を、川上徹也氏の『面倒なお願いでも、気持ちよく相手に届く伝え方は? 人を動かす伝え方50の法則』(アスコム)より一部抜、再構成して紹介する。

面倒なお願いをしなければいけないとき →付箋に手書きで一言添える

ほんのささいな「ひと手間」が、大きな効果を生み出すことがあります。

サム・ヒューストン州立大学のランディ・ガーナーは、誰かに何かを依頼するとき、付箋(ポストイット)に手書きで感謝のメッセージを書くだけで大きな効果があることを実験で証明しました。

この実験は、学内の教授たちに対し、退屈で煩雑なアンケートを次の3つのパターンでお願いするというものでした。アンケートの内容はすべて共通です。

グループ① 印刷された依頼文とアンケート用紙のみで依頼
グループ② 印刷の依頼文の右上に、「少しお時間をいただきますが、アンケートにご協力ください。感謝します!」と手書きで書いて依頼
グループ③ 印刷の依頼文+アンケート用紙にポストイットを貼り、②と同じ文章を手書きで書いて依頼

さて、回収率にどれだけ変化があったでしょう? 答えは……。

① 教授たちの36%がアンケートを提出
② 教授たちの48%がアンケートを提出
③ 教授たちの76%がアンケートを提出

ポストイットに手書きでお願いや感謝のメッセージを書くだけで、なんと倍以上の回収率になったのです。依頼文に手書きで同じ文章を書いても、約10%しか回収率が増えなかったことと比べると、驚くべき効果ではないでしょうか。

付箋を貼って、たった一言書くだけで! ポストイット効果恐るべしです。

ちなみに③の依頼については、回収率が高いだけでなく、より早く、詳しく丁寧な回答がなされたということです。

このようなめざましい効果が出た理由については、2つの要素があったと考えられます。

まずは、付箋が目立ったということ。そして、そこに個人的なメッセージが書かれていたということ。これによって教授たちは「自分への特別な依頼である」という印象を受けたのです。

付箋にメッセージを書いて貼るというのは、そんなに手間ではありません。しかし受け取る側は、送り主の手間や心遣いを感じることで心が動くのです。

何か面倒なことをやってもらうときは、「ご面倒だと思いますが、ぜひお願いします!」と、心配りを感じさせる文章をポストイットに記して伝えるのがよいでしょう。メールであれば「追伸」に書いても効果があるかもしれません。

<まとめ>
面倒な状況でさえ、
自分に向けた手書きメッセージはうれしい!

すぐに行動に移してほしいとき →盛り上がったタイミングで伝える

やらなきゃと思っていても、なかなか行動に移せないということはないでしょうか?

「やろうと思ったこと」を先送りするうちに、忘れてしまうこともあります。そうなってしまったら最後。もう、なかなか思い出すことはできません。

しかもこれが他人である場合は、いったいどうすれば行動に移してもらえるでしょうか?

それには、気持ちが盛り上がっているときに、行動の「きっかけ」を作っておくのが効果的です。

このことを今から50年以上前に実証したのが、心理学者のハワード・レベンタール博士らでした。

博士らは、イェール大学のキャンパスで、被験者の大学生たちに破傷風のリスクに関する講演を聞かせました。その中で専門家が、今すぐ学内にある医療センターに行って、予防接種を受けるべきだと語りました。それを聞いたほとんどの学生は、予防接種を受けに行くと言いました。

しかし、実際にそのあと予防接種を受けに行った学生は、たった3%にすぎませんでした。

そこで今度は、別の学生たちに同じ講演を聞かせたあと、医療センターの場所に印をつけた地図を渡しました。さらに、翌週のスケジュールを確認させ、いつ予防接種を受けに行くかを決めるよう求めました。

すると、9倍以上、28%の学生が予防接種に行ったのです。「スケジュールや場所を確認する」ということが、行動のきっかけになったと考えられます。

このように、先に決めたことがのちの行動に大きな影響を与えることを、心理学では「先行刺激(プライミング)効果」といいます。

東京都立川市では、この効果を使って、「乳がん検診の受診率」を大幅に上げることに成功しました。

「乳がんのリスクを理解しているが、検診に行っていない人」に向けて、検診予約のメモなどを書き込む「受診計画カード」を送付したところ、受診率7.3%から25.5%へ、3倍以上に増えたのです。

こんなふうに、気持ちが盛り上がったタイミングで、次の行動につながるきっかけを与えれば、忘れる前に行動してくれる可能性がぐっと高まるでしょう。

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<まとめ>
すぐに動いてほしいなら、
動きやすくする「きっかけ」をつくってあげよう!

締め切りが迫って催促したいとき →すでにほとんどの人から返事をもらったことを伝える

仕事をしていると、書類や提出物の締め切りに遅れる人が必ずいます。でも、人に催促をするのって、案外いやな仕事ですよね。そんな、相手に催促をしなければならないときは、「ナッジ(nudge)」 のテクニックを使ってみるのがおすすめです。

「ナッジ」とは、行動経済学者リチャード・セイラーらによって提唱された考え方で、本来は「注意や合図のためにヒジで人をそっと突く」という意味の英語です。行動経済学では「強く主張せずよりよい選択に気づかせ誘導する手法」をいいます。

2008年、イギリスでは税金の未納者が多く困っていました。国税庁は督促状を送っていましたが効果は限定的。回収できた未納金はたった57%にすぎません。そこで国税庁は社会心理学者たちと相談し、督促状にある一言を添えました。するとどうでしょう。たったワンフレーズを加えただけで、回収率が86%に上がったのです。国税庁はさっそく、この手法をイギリス全土に展開しました。すると回収できた滞納金は、前年よりなんと56億ポンド(約9296億円)も多くなりました。

さて、どんな文章を加えたのでしょうか? ちょっと考えてみてください。

実は、こんな言葉でした。

「大多数のイギリス国民は税金を支払っています」

「え? そんな簡単なこと? 信じられない」と思ったかもしれません。でもこれこそが「ナッジ」を使ったテクニックです。

人間は、大多数の人がやることを「規範」と考える傾向にあります。そしてこの規範に従わないと、居心地の悪さを感じます。こうした「多くの人間がとる傾向」を利用した誘導を「社会比較ナッジ」と呼びます。

この実験では「大多数の人が払っている」という「社会比較ナッジ」を使って、未払いの人に「自分も払わなきゃ」と思わせたというわけです。

その後、この実験は、イギリス政府直属の「行動インサイトチーム(BIT)」に引き継がれ、督促状の文面をさらに細かく変えることで、納付率がどう変化するかの調査が続けられました。その結果、ほとんどの国民が税金を払っていることに加え、「あなたは非常に少数派である」という強調文を加えると、より効果が高くなることが証明されたのです。

相手に催促をするときは、ぜひ「社会比較ナッジ」のテクニックを使ってみましょう。

<まとめ>
なかなか動かない相手でも、
「みんながやっているなら、自分もやらなきゃ」
と思ってくれる

『面倒なお願いでも、気持ちよく相手に届く伝え方は? 人を動かす伝え方50の法則』(アスコム)

川上徹也

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発売日:2022年11月11日

価格:1,540円(税込)

単行本:248ページ

ISBN:

978-4-7762-1242-3

ハーバードやスタンフォードなど世界の研究から「人を動かす」伝え方の法則を厳選。

どんな場面でも、ストレスなく伝えられるコツが詰まった1冊です。

伝えるのをためらったことがある、すべての人へ。あなたには、こんな経験がないでしょうか。「3日待っても、メールの返事が来ない。」……なぜだろう。

内容が悪かった?失礼があって怒らせた?もしかして、送信できてなかった?

ほんとうにもしかしたら、海外旅行に行ったのかも...。もう1通送ろうか、電話をかけようか。あと1日だけ待ってみるか...。そう悩んでいるうちに、時間が過ぎていく。相手から期待した反応が得られないとき、つい、自分の「言ったこと」や「考えたこと」に問題があると思ってしまうかもしれません。でもそれは、たいていの場合、「伝え方」に問題があると言ったら、どうでしょうか。

他にも、こんなシチュエーションはありませんか?

・締め切り間近でヒヤヒヤするけど、催促していいだろうか...

・2つの案まで絞られたのに、相手がなかなか決断してくれない...

・お願いしたいけれど、忙しそうで話しかけづらい...

・初対面で緊張してしまって、うまく自己PRできない...

・ガンコな相手で、全然話が通じない...

この本では、こんな「ちょっとした伝え方の悩み」を解決するためのコツを紹介しています。

「伝えるプロ」である著者が、世界の社会心理学や行動科学の研究から厳選し、交渉やプレゼン、商談、告知など、日常のさまざまな場面で活用できるよう、50の法則にまとめました。

きっと、あなたの役に立つはずです。世界がグッとシンプルになる法則を、ぜひご体験ください。

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