東大卒ママが教える 歴史漫画と伝記が「成長できる子」を育むわけ

東大卒ママが教える 歴史漫画と伝記が「成長できる子」を育むわけ

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  • 更新日:2021/05/02
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「失敗してもいいんだ」「努力すればこんなことができる」と思うことができる「しなやかマインドセット」が大切(写真/GettyImages)

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歴史が得意な人たちに、「どんな勉強をしているの?」という質問をぶつけると、たいてい、二つの答えが返ってきます。

一つ目は「山川の教科書を完璧にすること」。書店の参考書売り場にまで並んでいるほど、有名な教科書です。

そして二つ目に挙げられるのは、「歴史の漫画を読むこと」。

■歴史の漫画を読むと、人間関係がわかって、出来事が頭に入りやすくなる

歴史は暗記モノとはいいますが、漫画を読むと、「この事件が起こるにあたり、どういう人間関係のもつれや背景があったのか?」という問いに、ちゃんと血の通った理由があったのだと分かりやすくなります。

例えば、反乱者側が勝利したという日本では例を見ない内乱とされる「壬申の乱」では、中大兄皇子(天智天皇)の弟である大海人皇子(天武天皇)と、息子である大友皇子が、天皇の地位を巡って戦いました。

そこには、大友皇子の母親の地位が高くなかったという事実、それにもかかわらず中大兄皇子が自分の子どもを後継者にしようとした気持ち、その行動に不満をもった人たちの、感情の動きが見えてきます。

そして、中大兄皇子が大海人皇子の妻だった額田王をめとったり、後継者争いの前に大海人皇子が中大兄皇子に出家を申し出たりと、登場人物たちの立場や気持ち、勇気や駆け引きが分かり、人間の人生が複雑に絡み合って紡がれた出来事として頭に入ります。

つまり、教科書を読むだけでは単なる四つの文字でしかない「壬申の乱」が、ぐっと人間らしいストーリーに感じられ、身近なものになってくれるのです。

さて、そんな歴史上の人物の人生、さらに言えば人物の精神的な部分にまで踏み込むために、私は、漫画に加えて、伝記を読むこともお勧めしています。

もちろん、勉強のために偉人一人ひとりのストーリーを読んでいたら時間が足りないわけですが……。私が伝記を読むことをお勧めする理由は、座学の歴史の勉強のためというより、「ある人物がどのような困難にあい、それをどのように捉え、乗り越えたか」という心の持ちよう、つまりは「マインドセット」を学べるという点にあります。

■「かちこちマインドセット」と「しなやかマインドセット」

スタンフォード大学の心理学者であるキャロル・ドゥエック教授曰く、人間のマインドセットには、才能は生まれつき決まっていると考える価値観の「かちこちマインドセット」と、努力によって人は成長できると思える「しなやかマインドセット」の2種類ある、とのこと。

そして子どもがどちらのマインドセットになっていくかは、親の接し方が影響してきます。

例えば、親から頻繁に、「100点がとれてすごいね」「賞がとれて偉いね」と結果ばかりを褒められた子どもは、「次に100点とれなかったらどうしよう」という不安から、挑戦することに対して消極的になっていきます。

つまり、自分が果たして今より上にいけるかどうかに関して疑問を抱いてしまい、現状を維持しようとするため、マインドセットが固くなるのです。

対して、「失敗したけど頑張ったね」「たくさん勉強をしたから良い点が取れたね」など、成長までの過程を重点的に褒められた子どもは、どんどん努力して挑戦し、親に褒められようとします。そこで成長していく自分を実感できるため、しなやかなマインドセットになっていきます。

よくマウンティングをしてくる人がいますが、それは「自分の能力はすでに決まっているもの」と考えている、かちこちマインドセットの人の特徴なのだそう。能力はこれ以上伸ばすことができないという気持ちが根底にあるため、今現在持っている能力を誇示して勝負しなくてはと考えるのだそうです。

自分の子どもがどちらのマインドセットでいてほしいかと聞かれたら、たくさん挑戦し、失敗を恐れずに上を見て成長していく、しなやかマインドセットでしょう。

ただ、人間の心の持ちようなんて、一朝一夕で作られるような簡単なものではないため、変化させるのは難しい作業です。

かちこちに固まってしまった価値観を徐々に柔らかくしていくために、それでは、どのような手段を使えば良いのか。そこで効果を発揮してくれるのが、「伝記」というアイテムなのです。

■「失敗していいんだ」を偉人たちが教えてくれる

伝記の中では、主人公がたいてい非常に大きな困難にぶつかります。しかしそれを乗り越えて、世界的に認められるものを作り上げたり、素晴らしい業績を残したりします。

つまり、しなやかマインドセットをもった人物の人生を知ることで、自分の気持ちを「失敗してもいいんだ」「努力すればこんなことができる」という方向に向けていくのです。

ちなみにここで、伝記ではなく誰か学校の友達の例を挙げて、誰々ちゃんは挑戦しているよ、頑張っているよ、と比較してしまうと、子どもは他人の軸を参考に自分を測ってしまうため、自己肯定感が下がりやすくなります。

ですから、しなやかマインドセットの人間の行動を見せるには、 過去に存在した実際の偉人が、最も好ましいのではないかと思っています。

いくつか例を挙げてみましょう。

有名な話ですが、エジソンは100回以上実験を失敗しても、それを失敗とは認識せずに「うまくいかない方法を発見した」と捉えて、どんどん挑戦していきました。その結果、電球をはじめ、蓄音機や映画を観るキネトスコープなど、さまざまなものを発明しました。

西郷隆盛は、2度も島流しにあいましたが、そこから薩長同盟を結び、明治維新を成し遂げました。

ナポレオンも、最初は下級貴族でいじめられっ子という状況でしたが、一人ぼっちでもたくさんの本を読み、血統を重んじていたフランスで、最終的に皇帝にまで上り詰めました。

千円札の人として子どもにもおなじみの野口英世は、幼少期は火傷で左手の5本の指がくっついたような状態になってしまい、学校をズル休みしてしまうほど周囲にバカにされましたが、それが悔しくて一生懸命勉強に励み、世界に名を残す細菌学者になりました。

このように人間は、どんなに厳しい状況下で大きな困難に出くわしても、挑戦し行動を続けていけば、想像が及ばないところまで大きく成長できるようになるのです。

■やたらと「水」に興味がある息子。いまハマっている絵本は『しずくのぼうけん』

うちの息子も、けん玉をした時など「自分にはできない」と言ってきたことがありますが、では、「無理だと思うほどの挑戦と努力をしたのか?」と聞いてみると、実際はほとんど何もしていなかったりします。

たった数回できなかっただけで「無理」と決めつけてしまうのは、人生を歩んでいくうえであまりにもったいない考え方です。

息子は4月から小学2年生になったばかりで、政治が絡んだ西郷隆盛のような小難しい話にはまだ目を向けてくれません。

ただ、やたらと「水」に興味をもっているため、しょっちゅう、『しずくのぼうけん』という本を読んでほしいとせがんできます。

このしずくも、ストーリーの中で、蒸発したあと雲の上から落ちたり、水のくせに溺れたりと、たくさんの困難にあうのですが、それを乗り越えて前に進み、どんどん冒険に出かけていきます。これはこれで、しなやかマインドセットの良い例になる……といいなぁ、なんて思いながら、願いを込めて毎晩のように読み聞かせています。

杉山奈津子

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