米国で麻痺を起こすウイルスへの感染が増加、その症状と予防策

米国で麻痺を起こすウイルスへの感染が増加、その症状と予防策

  • Forbes JAPAN
  • 更新日:2022/09/23
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米疾病予防管理センター(CDC)は2022年9月9日、エンテロウイルスD68(EV-D68)の感染者が増加しているとして、公衆衛生勧告を発表した。エンテロウイルスD68に感染すると、ごくまれにだが、重度の筋力低下が起きる「急性弛緩性脊髄炎(AFM:Acute Flaccid Myelitis)」という、ポリオのような疾患にかかることがある。

CDCはまた、ライノウイルス(RV)とエンテロウイルス(EV)の両方またはいずれか一方で陽性反応を示した子どもたちが、重篤な呼吸器疾患を発症して入院するケースが増えている点も指摘した。

ライノウイルスとエンテロウイルスは症状が似ており、一般的な検査では違いを見分けることができない可能性があるため、特殊な検査が必要だ。追加検査を実施した結果、検査サンプルの多くがエンテロウイルスD68に感染した子どもたちのものであることが確認された。

非ポリオエンテロウイルスに感染すると、呼吸器系の症状が起きる(ライノウイルスと混同されるのはそのためだ)。非ポリオエンテロウイルスは他にも、発疹や手足口病(HFMD)、心筋炎、ウイルス性髄膜炎、脳炎といったさまざまな症状を引き起こす。

エンテロウイルスD68に感染して入院した子どもたちは、咳や息切れ、喘鳴(ぜんめい)といった呼吸器系の症状が現れる可能性もある。また、まれであるとはいえ、急性弛緩性脊髄炎(AFM)として知られる急激な筋力低下が起きることがあり、その場合は筋力の回復はほぼ見込めない。

感染リスクを減らすには
ライノウイルスとエンテロウイルスD68のような呼吸器感染症を予防するには、清潔に保つことと、手洗いの励行が重要だ。私たちはすでに、マスクを着用すればインフルエンザや風邪、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)への感染を大幅に減らせることを知っている。そのため、CDCや多くの公衆衛生当局はなぜ、マスク着用という常識的な予防策を廃止したのかと疑問視する人は多い。学校や企業、自宅で、換気をもっと行うよう強く求める声も多数上がっている。

汚れた手で目や鼻、口を触らないようにすることも大事だ。そういった体の粘膜面は、ウイルスにとって手っ取り早い感染ルートとなる。コップや食器などの共有も避けよう。

咳やくしゃみが出るときは、ティッシュや袖で口元や鼻を覆い、すぐに手を洗うか、除菌剤で消毒すること。

ドアの取っ手など、人がよく触るものの表面は、頻繁に殺菌しよう。公共の場で蛇口を触ったりドアを開けたりするときには、ペーパータオルを使うと、なおいい。そうした対策をとると、病気になる頻度がとても減ることに驚くはずだ。

受けられる予防接種をすべて万全に受けておくことは不可欠だ。子どものときに受けた予防接種も、新型コロナウイルスの感染拡大が始まって以降、多くが効果を失っている。非常に重要なのはポリオの予防接種だ。麻しん(はしか)も、多くの地域で感染が急増しているが、命にかかわる病気だ。

残念ながら、エンテロウイルスのワクチンは存在しないようだ。米コロンビア大学のウイルス学者ビンセント・ラカニエロ(Vincent Racaniello)はこう話す。

「エンテロウイルスD68が話題になっているが、体の麻痺を引き起こしうるエンテロウイルスは他にもさまざまな種類がある。他の国々でも同様で、アジアにはエンテロウイルス71(EV71)があり、欧州にも別のエンテロウイルスが存在する。エンテロウイルスは1種類ではなく、それぞれ異なっているので、ひとつのワクチンで対処することはできない」

また、筋力低下は急激に起こるため、いったん麻痺してしまったら、薬が効かない可能性がある。抗ウイルス薬やモノクローナル抗体はエンテロウイルスには効かない、とラカニエロは考えている。

となると、頼りになるのは公衆衛生措置と常識的な対策ということになるが、これらはたいてい、不十分なままのようだ。

forbes.com 原文

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