2023年に廃止決定の「ジュニアNISA」に注目が集まる意外なワケ【税理士が解説】

2023年に廃止決定の「ジュニアNISA」に注目が集まる意外なワケ【税理士が解説】

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  • 更新日:2021/11/25
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平成28年にスタートした「ジュニアNISA」。払出し制限などの条件が厳しく、利用者が伸び悩んでいたため、令和5年末の廃止が決定しました。しかし、廃止が決定されたとたんに申し込みが殺到したのです。本記事では岡野雄志税理士事務所の岡野雄志税理士がその理由を解説します。

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「子ども1人に10万円」が実現!? 学費を支えるのは誰?

新型コロナとの攻防は、長期戦の様相を呈してきました。そこで、公明党が衆院選マニフェストでコロナ禍の子育て支援として掲げたのが、0~18歳の子どもを対象としたひとり10万円の「未来応援給付」。議論が交わされてきましたが、実現化の運びとなりそうです。

コロナショックで経済が停滞し、収入減となった家庭もありますから、もちろん、給付金はあるに越したことはないでしょう。しかし、10万円の給付が、果たしてその後も子どもが学業を続けられる支えとなるかどうか……。

というのも、文部科学省の『平成30年度子供の学習費調査』によると、幼稚園から高等学校まで公立の場合の学習費総額(※)は521万2,311円。幼稚園から高等学校まで私立に通えば1,777万7,010円。大学へ進学すれば、さらに100~300万円余を要します。

※学習費総額は保護者が1年間に子どもひとり当たりに払う学校教育及び学校外活動経費で、幼稚園2年間、小学校6年間、中学校・高等学校は各3年間として計算しています。

そこで、子どもの将来に向けた資産運用をサポートする制度として、平成28(2016)年にスタートしたのが「ジュニアNISA(未成年者少額投資非課税制度)」です。

そもそもNISA(ニーサ)とは、英国のISA(Individual Savings Account/個人貯蓄口座)をモデルにした、日本版ISA(Nippon Individual Savings Account)を意味します。通常、株式や投資信託などの売却益や配当金には所得税、住民税、2037年12月末までは復興特別所得税も含め20.315%が課税されますが、これが非課税になる制度です。

自らNISAやつみたてNISAをされている方はご存じでしょうが、ジュニアNISAはNISAやつみたてNISAの子ども向け版です。……というと、誤解されやすいのですが、子ども自身が投資・運用するための制度ではありません。対象は日本に居住する0~19歳の未成年者ですが、目的はあくまで子どもの将来へ向けた資産運用です。

つまり、子や孫のため実際に投資・運用するのは親や祖父母ということになります。具体的手順として、まずはジュニアNISA取扱金融機関に子ども名義の2口座を開設します。ひとつ目は親や祖父母が資金を入れる「課税ジュニアNISA口座」、ふたつ目は購入した株式等を管理する「ジュニアNISA口座」です。

通常なら、子ども名義の口座に親や祖父母が資金提供し管理も行えば、「名義預金」とみなされ、将来、相続発生の際に税務調査の対象となる危険があります。その点、ジュニアNISAなら「名義預金」と疑われず、しかも利益に対する所得税や住民税は非課税です。

そのため、将来の相続税対策として、可愛い孫の教育資金形成に一役買いたい富裕層高齢者の人気を集めています。Uさんも、待ちわびた孫の誕生に喜び、ジュニアNISAを活用しようと考えたおひとりでした。

廃止決定のジュニアNISAに注目が集まる意外なワケ

ジュニアNISAは口座開設する年の1月1日時点で名義人が19歳(※)以下であれば、申し込めます。しかも、0歳からOKなので、孫の誕生祝いとして始める祖父母の方も多いようです。非課税投資枠は年間80万円で、投資開始から最長5年間、利益が非課税になります。

※成年年齢の引き下げに伴い、令和5(2023)年1月からは17歳。

しかし、以下のような禁止事項や注意点もあります。

■ジュニアNISAの禁止事項や注意点
・親権者が所有する上場株式や株式投資信託等をジュニアNISA口座に移すことはできない。

・開設できるのはひとり1口座のみ。

・金融機関の変更は不可。

・非課税枠の未使用分を翌年へ繰り越すことはできない。

・一度利用した非課税枠は売却しても復活しない。

・売買損失が発生しても他の口座での株式等の配当金や売買益等との損益通算はできない。また、損失の繰越控除(3年間)もできない。

・上場株式の配当金やETF・REITの分配金を非課税とするには、証券会社で受け取る「株式数比例配分方式」を選択する必要がある(他口座の上場株式の配当金等も自動的に「株式数比例配分方式」が選択されてしまう)。

・3月31日時点で18歳である年の前年12月31日までは、払出し制限がある。災害等やむを得ない場合を除き、制限期間中に払い出すと、ジュニアNISA口座が廃止され、過去に遡って非課税の取扱いがなかったものとされる。

特に最後の「払出し制限」は、ジュニアNISAの最大のデメリットといわれてきました。例えば、小中学校や高等学校の入学資金に充てたい場合などには、払い出せないからです。そのため、利用者が伸び悩み、政府は令和5(2023)年末のジュニアNISA廃止を決定しました。

ところが、皮肉なことに廃止が決定した途端、申込みが殺到。なぜなら、令和6(2024)年1月以降ならいつでも、何歳でも払出し可能となるからです。今年中にジュニアNISAを始めれば、令和5(2023)年の廃止までに80万円×3年間=最大240万円の非課税枠が利用できます。

ジュニアNISA制度期間内に名義人が成人すると、成人する年の1月1日にNISA口座が自動的に開設されます。一般NISAにするか、つみたてNISAにするかは、本人が選択します。一般NISAを選択すると、ジュニアNISA口座内の金融商品は、NISA口座に移行可能です。

令和5(2023)年末に未成年の場合は、翌年以降、各年において5年間の非課税期間が終了した金融商品を「継続管理勘定」へ移管できます。これにより、成人になるまで金融商品を非課税で保有し続けることが可能です。時価が80万円超でも、全額移管が可能とされています。

「継続管理勘定」への移管をロールオーバーと呼びます。ジュニアNISA制度終了前でも、5年間の非課税期間を超えた6年目にロールオーバーすることで、NISA口座での非課税期間を延長することができます。……と、ここでハタと、Uさんはある重要な事柄に気づきます。

「ジュニアNISA」を活用した生前贈与に潜む落とし穴

最近生まれたばかりのUさんのお孫さんは、今0歳。現在、Uさんは73歳。孫が18歳になるまで、あと18年間あります。73歳+18年間=91歳。人生100年時代になったとはいえ、91歳まで孫の資産をUさんご自身で管理し続けられるでしょうか?

ロールオーバーで令和5(2023)年の終了後もジュニアNISAを継続できたとしても、その後ずっとUさんが管理できるとは限りません。

ジュニアNISAは年間上限額が80万円なので、暦年贈与の基礎控除110万円を併用すれば贈与税もかかりません。そのため、生前贈与に適しているといわれています。

しかし、生前贈与に活かせる特例や非課税措置は、そのほかにも多々あります。例えば、「直系尊属から結婚・子育て資金の一括贈与を受けた場合の非課税制度」です。

この制度は、平成27(2015)年4月1日~令和5(2023)年3月31日の間に、20歳以上50歳未満の方が結婚・子育て資金に充てるため、親や祖父母から1000万円以内の贈与を受けた場合、贈与税が非課税となるものです。これを利用して、お孫さんではなく、その親であるお子さんに子育て資金を提供するという方法もあります。

また、以前、『「孫の教育資金を負担しすぎた老夫婦」口座残高を見て大後悔…』にも書きましたが、親や祖父母からの都度贈与は贈与税非課税です。都度贈与とは、生活費や教育費といった日常生活に必要な経費が発生した際に、その都度、扶養義務者が支払うことを指します。

例えば、ジュニアNISAが令和5(2023)年に終了したら、制限がなくなる令和6(2024)年に払い出し、保育園入園料など、その時点で必要な教育費に用います。そして、その後は都度贈与に切り替えるという方法もあります。

生前贈与や相続税対策にはいろいろな方法があり、ケース・バイ・ケースで専門知識を必要とする場合もありますので、まずは専門家に相談してみることをおすすめいたします。

※プライバシーに配慮し、実際の相談内容と変えている部分があります。

岡野 雄志

岡野雄志税理士事務所

岡野 雄志

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