『おかえりモネ』亮と未知が“縛り”から解放されることを願って 心強い大人たちの冷静さも

『おかえりモネ』亮と未知が“縛り”から解放されることを願って 心強い大人たちの冷静さも

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  • 更新日:2021/10/14
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『おかえりモネ』写真提供=NHK

気仙沼を襲う、激しい嵐。『おかえりモネ』(NHK総合)第109話は、恐らくこれまでの中で最も緊迫感のある回だった。時刻は夕方の四時、百音(清原果耶)の予報通り気仙沼の天気は荒れ、組合の滋郎(菅原大吉)から感謝の電話が届く。沖に出ていた亮(永瀬廉)の船も、あと1時間くらいで戻ってくるだろうということだ。未知(蒔田彩珠)は、クリスマスをともに過ごした喫茶で分厚い本を読みながら、彼の帰りを待ち続けていた。

参考:『おかえりモネ』第110話では、戻ってきた亮(永瀬廉)を未知(蒔田彩珠)が迎えに行く

彼のことを待つことには慣れている彼女も、今回ばかりは話が違う。「海から戻ったら、話したいことがある」と、ようやくはっきりとした意思を正面から亮に伝えたこと、そして、その彼が未だに帰ってこないこと。そんな未知を真っ直ぐみて、「わかった」と微笑んだ亮。不謹慎かもしれないが、「この戦いが終わったら、彼女に思いを伝えるんだ」と仲間に伝えた矢先、その兵士が死んでしまう戦争映画のお決まり……つまり、“死亡フラグ”を立たせるのには、十分すぎる展開なのだ。

案の定、嵐の激しさは増す一方。しかし、そこで高橋(山口紗弥加)が一斉に避難してきた船での重労働を終えた漁師たちに向け、労いの言葉をかけながら居酒屋の宣伝をラジオで発信していた。「海が荒れたら荒れたで、商売になる」、そういった物事の二面性をサラッと描く良いシーンだ。

しかし状況は悪い方へと向かっていく。亮の乗っていた船が低気圧にはまってしまい、下手に動けば転覆してしまう可能性もあるというのだ。野坂(森田望智)にも連絡をとり、詳しい気象情報へアクセスする百音。すでに2メートル近い波が発生していることもあり、風の強さが肝になっているため内田(清水尋也)の力も借りることに。

一方、その頃は永浦家に三生(前田航基)もやってきて、みんなで亮の安否を願う。東京にいる明日美(恒松祐里)、悠人(高田彪我)も電話で繋がる。そこに新次(浅野忠信)や朝岡(西島秀俊)も加わり、まさに気仙沼と東京編の錚々たるメンバーが大集結したような今回。皆が、亮の安否を願うという光景は、これまで一人でたくさんの苦しみや傷を受けたのに笑顔でそれを誤魔化してきた彼のことを、誰もが案じ、見守るという力強い構図になっている。

なにより、未知だ。彼の船が帰れないどころか、転覆の危険性がある中で6時間もその場で耐えなければいけないという事実に動揺する。

「もっと早く言えばよかった、もう全部やめちゃおうよって、漁師とか船とか、海とか、私たちって結局ずっと縛られてきたんだよ。私まだ、亮くんと何も話せてない」

そう涙ながらに言葉をこぼす未知は、百音の胸に飛び込んだ。未知と亮が抱えてきた、“縛り”。未知はそこから、何とか一歩二人で抜け出そうとしていたのではないだろうか。その矢先にこんなことになってしまい、その悲しみをようやく姉の百音に託し、すがりついて泣くことができた。百音も、やっとそれを受け止めることができた。これまでどこか溝があり、素直になりきれなかった二人が何もかも取り払った純粋な “姉妹”に戻れた瞬間でもある。

一方で、こういう時の大人組の冷静さも心強い。新次は野坂や百音が必死に分析したデータに基づいて出した対処法と同じ結論を、現場の状況把握と地図を確認しただけで導くことができた。やはり彼が本当に優秀な漁師であることがわかるシーン。思えば、百音が生まれた嵐の夜、島から船を出したのも彼だった。そして、朝岡。こういうとき誰よりも冷静な彼は焦る百音に「自分たちの力を過信してはいけない」と嗜める。

「不確かな未来を自分たちの思う通りに操作できるわけではありません。祈るしかできないという経験を、私たちは何度もしています」

ずいぶん前のことに思える、『おかえりモネ』第5話。朝岡と出会った百音が、彼と別れる際に見ると良いことがあると言われる彩雲が10分後に出ると予告され、その通りになった時「なにこれ、魔法!?」と驚いていた。しかし、違うのだ。今回の朝岡が言う通り、気象予報士はあくまでデータという根拠に基づいた予測するしかなく、“魔法使い”ではない。だからこそ、最悪の事態を免れるために事前勧告を必死になって行うのだ。それは東京編でも描かれたこと。そして毎回、やるべきことをやった後に彼らができることは、祈ることしか残されていない。初めて会ったとき百音にとっての“魔法使い”だった、そして誰よりもその苦い経験してきた朝岡だからこその、重みのある言葉だった。

時刻は午前3時。たくさんの人が亮の船を心配して起きているなかで、鳴り響く一本の電話。すぐに百音の下にも届いた知らせは、未知のためにも、新次のためにも、みんなのためにも吉報であってほしい。

※高田彪我の「高」はハシゴダカが正式表記。

(アナイス(ANAIS))

アナイス(ANAIS)

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