目を逸らすな。「とんねるず」問題の裏で自殺を考えた人のいる現実

目を逸らすな。「とんねるず」問題の裏で自殺を考えた人のいる現実

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  • 更新日:2017/11/22
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放送終了が決定して話題となった、とんねるず司会の長寿バラエティ番組「とんねるずのみなさんのおかげでした」。その番組内で、懐かしのキャラクターとして登場した「ゲイのキャラクター」が差別的だとして批判が殺到し、フジテレビが謝罪に追い込まれる事態に発展したことは記憶に新しいところです。米国育ちで元ANA国際線CA、さらに元ニュースステーションお天気キャスターだった健康社会学者の河合薫さんは、自身のメルマガ『デキる男は尻がイイ-河合薫の『社会の窓』』で、この騒動について何が問題だったのか改めて考察しています。

とんねるず問題と無知の罪

「SOGIハラ」って言葉。聞いたことありますか?

これは「今」この時間も、「あなた」の身近な人が人知れずして涙しているかもしれないハラスメント。

S=Sexual O=Orientation G=Gender I=Identity

好きになる人の性別(性的指向:Sexual Orientation)や自分がどの性別かという認識(性自認:Gender Identity)に関連して、差別的な言動や嘲笑、いじめや暴力などの精神的・肉体的な嫌がらせを受けること。また、望まない性別での学校生活・職場での強制異動、採用拒否や解雇など、差別を受けて社会生活上の不利益を被ること。それらの悲惨なハラスメント・出来事全般を表す言葉です。

先日、フジテレビで放送された「とんねるずのみなさんのおかげでした 30周年記念SP」の番組内コーナーで、とんねるずの石橋貴明さん扮するゲイのキャラクター「保毛尾田保毛男(ほもおだほもお)」が登場し、侮蔑語である「ホモ」を連発。

ゲイを笑い者にしたネタを連発しました。

“みなさんのおかげでした”をリアルタイムで楽しみ、

「あなたホモなんでしょ?」(木梨)

「ホモじゃないのよ、ウワサなの」(石橋)

のやり取りを笑いながら見ていた世代の中にも、この放送には、不愉快な感情を持った人が多かったのではないでしょうか。

ただ、その一方で「そっか。保毛尾田保毛男も問題になってしまうんだな」と時代の変化を改めて痛感した人もいたはずです。少なくとも私はそうでした。

30年前、私も石橋さんと木梨さんのやり取りに大笑いし、学校でマネする友人に大ウケして……。

全く悪気はない。そう、悪気もなければ、差別しているという認識もなかった。

ただただ面白くて笑っていました。

だって、私の悪意なき笑いで「傷ついている人がいる」だなんて想像したこともなかったからです。

ですから、今回の件でいろいろな人たちがいろいろなことをコラムやTwitterで発信していましたが、いちばん胸を突かれたのが、株式会社ニューキャンバス代表取締役/トランスジェンダーの杉山文野さんが書いたこちらのコラムです。

『知らない』は社会の責任だ -保毛尾田保毛男 の一件に関して-」と題されたコラムには、次のように書かれています。

(以下、コラムより一部抜粋して要約)

番組をみて、笑う人の気持は僕にもわかる気がする。

僕らがどんな気持であったか、理解しようと努力をしてもらうことを願うことは許されるだろうか。

昔、家のコタツで両親と一緒にテレビを見ていて「保毛尾田保毛男」が登場して

「いやぁねぇ、こうゆう人」

と言うひと言を聞いた時、僕はその場に普通の顔をして居続けることができなかった。

胸が潰れるほど苦しくなった。

次の日、学校でみんながそのホモキャラをマネし「キモい!キモい!」とふざけ合っているのを見て、いじめられたらどうしよう、居場所がなくなっちゃったらどうしようと想像して、学校に行くのが怖くなった。でも、休んだら休んだで、その原因を追求されてバレるのも怖い。学校へ行き、むしろ一緒になってマネをしてみんなの笑いをとっていた。

僕は「人権を意識してエンタメを作るべきだ」と主張するつもりはない。

しかし、「悪気のない」笑いの裏でどれだけ多くの人が傷つき、時には自殺にまで追い込まれているという現実を知ってほしい。

笑いを生み出す想像力を、ほんのすこし、僕らのところまで広げてもらえたら、どれだけ多くの人が救われるだろう。

幸い僕は生き残れた。

「知らない」ということ、無知であること、「知ろう」としないこと、無知を認めないこと。

それがいかに刃となるか。

今でこそ私は、LGBTなどの問題だけでなく、マイノリティの人たちの“声にならない声”を必死に拾い上げ、コラムを書いたりテレビやラジオなどのメディアでコメントしていますが、“30年前の私”はそういったことを一瞬たりとも考えたこと、想像を巡らせることもありませんでした。

「幸い僕は生き残れた」ーーー。重たい言葉です。

昨年からHIV陽性者のための大規模な調査研究に、研究者のひとりとして参加しているのですが、先日、アンケート調査の中間分析を行いました。

調査項目は、HIV検査、陽性告知、医療環境、暮らし、仕事、セクシャルヘルス、アディクション、人間関係、心の健康などがあり、私は「心の健康」を担当しています。

その中に自殺念慮を問う項目を設けているのですが、ショッキングな結果が出ていたのです。

対象者1100名のうち7割以上が「これまでに自殺を考えたことがある」と回答。

そのうち「過去一年間に本気で自殺を考えたことがある」という人が約3割もいました。

また、「これまでに自殺の計画を立てたことがある」とした人が4割。そのうち4人にひとりが「過去一年間に計画を立てた」と回答しました。

一般住民を対象にした調査(日本財団自殺意識調査2016)では、「過去一年間に本気で自殺をしたい」という人は3.4%でしたので、この結果の深刻さが理解していただけると思います。

もちろんこの調査は「HIV陽性者」が対象であり、LGBTを対象にしたものではありません。

しかしながら「『知らない』は社会の責任だ 」という点では全く同じです。

彼らのほとんどはセクシャルマイノリティであり、HIVも今は死の病いではなくクスリを服用することで普通に生活ができます。

「『知らない』は社会の責任だ 」と杉野さんは綴っていましたが、「知ろうとしない」のは個人の責任だと思うのです。

私にも知らないことがまだまだたくさんあると思います。

みなさんの知っていること、私が知るべきこと、是非、教えてください。

※自殺念慮とは、特別な理由なく、または周囲の人には理解できないようなきっかけで「自殺したい」という思いにとらわれてしまう心理状態。ストレスの原因から逃避するために自殺を手段に選ぶ「自殺願望」とは違い、能動的かつ具体的に自殺を計画しようとする傾向がある。

image by:Shutterstock.com

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