いざという時に使えないAEDをなくせ!人の命をIoTで救う努力が始まった

いざという時に使えないAEDをなくせ!人の命をIoTで救う努力が始まった

  • @DIME
  • 更新日:2017/09/25
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公共施設や公園などに置かれているAED。AEDは私たちが予想する以上に使われている。

「セコムでこれまで取り扱った累計約17万台のAEDによって、ご利用者からの報告があった分だけでも今までに約2000人の方が一命をとりとめています。AEDを使うという認識が浸透してきていると感じます。だからこそ、AEDを使いたかったのに使えないとなると、非常に大きな問題です。命につながる問題ですから、AEDがいつでも使える状態に保つことはとても重要です」(セコム 本社 特品部 部長 佐藤謙一氏)

一般財団法人 日本AED財団によると、突然の心停止に対し、119番通報で救急隊の到着を待っていたのでは9.2%の人しか救命できない。心臓マッサージをすると、その2倍の16.1%、AEDを使うと54%、半数以上の人を救えるという。ここまでの実績があるのなら、AEDも、それを使う私たちも、いつでも使える状態にあることが重要になってくる。

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日本AED財団のウェブサイトより。

IoT(Internet of Things)、モノのインターネットという言葉がよく聞かれるが、さまざまなものが単独、またはスマートフォンなどを介してネットにつながるようになった。多くのモノが通信機能を備えることで、モノやサービスが便利になるのがIoTの世界だ。

実はAEDもネットにつながろうとしている。セコムとドコモは、「LPWA」と呼ばれる通信を利用して、さまざまな場所に設置されているAEDの状況を遠隔で監視・管理する「AEDオンライン管理サービス」の運用を目指し、実証実験を行った。このサービスでは、AEDが正常状態にあるか、持ち出されていないかなどを、LPWAの通信を利用して監視する。異常が発生した場合にはセコムが対応して正常化することにより、AED設置者の維持・管理の負担を減らすことが目的だ。

■AEDの維持管理は大きなストレスになっている

まずAEDについて簡単におさらいしよう。AED(Automated External Defibrillator、自動体外式除細動器)は、心停止などの際に、機器が自動的に心電図の解析を行い、心室細動を検出したら除細動を行う医療機器だ。公共施設などさまざまな場所に設置され、万が一の際にはその場にいる人が自由に使えるようになっている。

AEDはアメリカで登場し、日本で一般の方が使えるようになったのが2004年。日本全国で約60万台のAEDが備えられており、病院、消防などを除く一般市場には約50万台が置かれているという(2014年12月時点。出典元:平成26年度厚生労働科学研究(坂本班)「AEDの普及状況に係わる研究」)。セコムは一般市場用AEDを中心に累計で約17万台を取り扱っており、トップレベルのシェアを持っている。

AEDは持ち運べる装置なので、バッテリーが使われている。このバッテリーや、肌に貼り付けるパッドといった消耗品は定期的に交換する必要がある。機器本体の耐用年数も6~8年だ。また、AEDは医療機器であることから、設置者が日々の維持・管理もしなくてはならないのだが、これが「なかなかうまくいかない」とセコム 本社 特品部 部長 佐藤謙一氏は指摘する。

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セコム 本社 特品部 部長 佐藤謙一氏

「AEDはいざというときにしか使わない装置なので、交換時期や耐用年数が来ていることに気が付かないことも多い。また、異常がないかを毎日確認する必要があるのですが、設置者がこれを行うのが多大なストレスになっています」(佐藤氏)

パッドの使用期限が過ぎていたり、バッテリーがなくなっていたりして、実際に使おうとしたときに使えないという事例が出始めたため、2009年頃から行政がAEDの点検や管理についての注意喚起を強化し始めた。セコムは、電話回線などでセコムのコントロールセンターにつないでAEDの状態を監視する遠隔モニタリングサービスを開始する。AEDに異常がないか、持ち出しされているかを監視し、異常があったら正常復旧させ、持ち出されているときは使われている可能性があるので、アフターフォローに動く。また、消耗品が期限切れになっていないかを管理することもできるという。

遠隔モニタリングサービスは、使えない状態を防ぐことができる画期的なサービスだが、電源工事が必要になり、月額の契約料もかかるため、管理するすべてのAEDを遠隔モニタリングするところまでは至っていないという。

■省電力で低コストのLPWAで遠隔監視する

NTTドコモ 法人ビジネス本部 第二法営業部 第四営業部担当部長の鉄村和之氏も、一般の携帯電話回線を使ってモノを監視する難しさを指摘する。装置の通信モジュールにSIMを入れて監視することは可能だが、モジュールには電源が必要だ。ビルに配置するならあまり問題ないが、AEDは公園などにも置かれるので、その場合、電源をどこから取るかという問題が出てくる。また、通信コストも高くつく。「今の携帯電話通信は速くてデータ量の多い通信は得意だが、遅くてデータ量が少ない通信には柔軟に対応できない。それがLPWAで可能になります」(鉄村氏)

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NTTドコモ 法人ビジネス本部 第二法営業部 第四営業部担当部長 鉄村和之氏

LPWAとはLow Power, Wide Areaの略で、乾電池で対応できるような低消費電力で広いエリアをカバーできる無線通信のジャンルを示す言葉だ。免許が不要の周波数帯を使う「SIGFOX」「LoRa」、免許が必要な「LTE-M」「NB-IoT」などの規格があるが、ドコモは今回、LoRaを使ってLPWAネットワークを構築している。

SIGFOXは1国1キャリアで提供されており、日本では京セラコミュニケーションシステムが取り扱っている。NTTドコモ 第一法人営業部 第四営業担当部長 坂本秀治氏は、「SIGFOXも検討したが、エリア構築やグローバルでの広がりを考慮」したとLoRaを選んだ理由を説明。なお、その他のLPWAネットワークについても取り組むとしている。

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NTTドコモ 第一法人営業部 第四営業担当部長 坂本秀治氏

LoRaを始めとするLPWAの通信は、複数の機器と接続出来る点はWi-Fiのシステムに似ているが、親機を設置すると、その下に50台、100台といった多くの子機をぶら下げることができる。また、見通しのいい場所であれば、親機と子機の距離が2キロ程度離れていても通信が可能だ。子機にかかるコストは非常に安く、必然的に1つの端末にかかるコストも相対的に安くなる。

ただ、コストに関しては、親機に何台ぶら下げるかや、通信の頻度によっても変わってくるので、一概にはいえないと坂本氏はいう。出力電力も小さくシンプルな構成で部品点数も少ないLoRaの方がLTE-M等のセルラー型と比較して安価となる可能性もあるが、LoRaは親機を含めたネットワーク構築が必要なので、子機さえ用意すればすぐに使えるセルラー型のLTE-MやNB-IoTにもメリットはある。「全国津々浦々でサービスを提供するならセルラー型、スポットで提供する場合は非セルラー型が安くなる可能性があります」(坂本氏)

■安全安心を支えるIoT

実証実験は、9月2日、代々木公園で開催された渋谷区の防災訓練「SHIBUYA BOSAI FES 2017」の2日間で行われた。NTTドコモ代々木ビルの26階と、セコムの本社18階に親機を建て、子機を代々木公園内に設置したセコムのAED管理ユニット3台に接続し、約2キロの長距離通信が安定的に低消費電力で行えるかどうかを確認した。この2日間で幸いにもAEDが実際に使われることはなかったが、AEDの講習会で使われた際は、状態がしっかり認識されていたという。実証実験としては成功だ。

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ドコモは実証実験で、LPWAの「LoRa」ネットワーク、LPWA通信モジュール、LPWA対応IoTゲートウェイ、データを管理する通信サーバを提供した。

ドコモとセコムは、この実証実験で得られた結果を元に見えてきた課題に対応し、2018年内の運用開始を目指している。LoRa自体も間もなく商用サービスが開始される予定で、企業、自治体、それぞれのユーザーに合わせたソリューションを提供したいとドコモは意気込んでいる。

AEDに通信機能が搭載されることで、設置者のストレスが大幅に軽減されるとセコムの佐藤氏はいう。「今は設置者の自助努力に任せていますが、遠隔モニタリングができるようになると、設置者の負担が減り、AEDもしっかり管理され、助かる人も増えると思います」(佐藤氏)と期待する。

AEDがLPWA通信で遠隔モニタリングされるようになれば、低コストでAEDの正常な状態が常に保たれ、いざというときに使えないということは、さらになくなっていくだろう。その一方で、私たちはAEDの設置場所、使い方を知っておくべきだとも感じた。せっかく準備万端用意されたAEDを知識がないことから使えず、救える命を救えないことがあってはならない。

今後も、私たちの気がつかないところで、あらゆるモノに通信機能が実装されていく。IoTは生活を便利にしてくれるのはもちろん、安全安心にも大きな役割を果たしてくれるはずだ。

取材・文/房野麻子

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