独立リーグからの再挑戦組も。プロ野球合同トライアウトで夢を捨てきれない男たち

独立リーグからの再挑戦組も。プロ野球合同トライアウトで夢を捨てきれない男たち

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  • 更新日:2016/11/30
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1万人以上のファンが集まる“異常事態”に当初予定していたバックネット裏の席だけでなく、内野スタンド席も開放された

11月12日。阪神甲子園球場で行なわれた「プロ野球12球団合同トライアウト」に投手42人、野手23人が集結した。

この日、結果を出したからといって、来季の契約が約束されるわけではないが、それでもやるしかない。前編記事に続き、男たちの熱き1日に密着したリポートをお送りする。

* * *

今年で16年目を迎えたトライアウトは、「ピークを過ぎたベテラン選手が挑むもの」というイメージがあるかもしれないが、若い選手の参加も意外に多い。今年も23歳の西川健太郎(中日)や堤裕貴(オリックス)ら、20代前半でプロ野球界を追われた選手たちが再びNPBを目指して奮闘した。

なかには、独立リーグなどを経てトライアウトに挑む選手もいる。DeNAの前身、「横浜ベイスターズ」の最後となる2011年のドラフトで指名された次の3人の投手もそう。そろって高卒3年目で戦力外となった後も野球を続け、このトライアウトで大きく成長した姿を見せた。

BCリーグの群馬で2年目を迎えた伊藤拓郎は今季、エースとして活躍。独立リーグ日本一を決めるチャンピオンシップでMVPを獲得し、3度目のトライアウトに挑んだ。

「今年はフォームを直して、いい感じで投げられました。ただ、トライアウトに参加するのは今回で最後。NPBに戻れなければ、また群馬で努力します」

その伊藤とチャンピオンシップを争った、四国アイランドリーグの愛媛に所属する古村(こむら)徹は、今季から現役に復帰して“左の中継ぎ”として活躍。この日も2三振を奪った。

「去年は(DeNAで)打撃投手をやり、『ゆくゆくは球団職員として残ってほしい』と声をかけてもらったんですけど、『もうユニフォームを脱ぐのか…』と思うと、やっぱり悔いがあった。僕は公立高校出身で甲子園も初めて。砂を持って帰ろうとも思ったんですけど…NPBに戻ったときに取りに来ます」

“11年組”のドラフト1位・北方悠誠(ゆうじょう)は、2年前のトライアウトでバックネットに暴投し、イップスであることを告白。しかし、今年7月に愛媛に入団すると、130キロ台に落ちた球速を150キロまで戻して甲子園に乗り込んだ。

「今年は、上半身を意識せず、左足だけを考えるようにして投げていたらよくなった。愛媛で我慢して使ってもらったおかげです。状態が戻ってきている実感もあって、今は野球がすごく楽しい。今後、さらによくなる予感もあります」

地元の甲子園でひときわ大きな歓声を集めていたのは、やはり阪神の選手たちだ。

05年の高校生ドラフト1巡目の鶴直人は、最速144キロのストレートで3人を完封。

「甲子園のマウンドは最高でした。緊張もあったけど、想像を超える声援で『やってやろう』という気持ちになりました。おかげで自分の力を全部出せたと思います。本当に幸せだったんだな…とかみ締めながら投げました」

ユーティリティとして活躍した坂克彦は、投手の好投が目立つなかで5打数2安打と結果を残し、「納得はしていないけど、とりあえずヒットが出てよかった」と安堵の表情を浮かべた。一方、ストレートのフォアボールを与えるなど制球に苦心した岩本輝(あきら)は「いいところを見せたかったけど…これが今の自分の力です」と唇をかんだ。

スタンドは、甲子園に帰ってきた“元阪神”の選手たちの登場にも沸いた。

3年連続のトライアウト出場となる西村憲(BC石川)は、大声援に「ちょっと危なかった。込み上げてくるものがありましたね」と感激。昨年はBCリーグを防御率0点で終えてトライアウトに挑むも獲得球団はなし。今回は三振と凡打、四球で終えた。

「去年はしっくりきていない部分があったけど、今日はまあまあ。応援されると力が出せるんだなと思いました。こんな歓声を聞くと、また甲子園で投げたいという気持ちがいっそう強くなりますよね」

07年の大学・社会人ドラフト1巡目の白仁田(しらにた)寛和(オリックス)は、2安打を浴びてしまった結果を嘆いた。

「大声援に応えることができなかったのが残念です。戦力外はある程度覚悟していましたが、プロでやりきったという感じはない。高望みせず、でもちょっとだけ期待して待ちたいです」

すべてのプレーが終わった後、センターの守備位置で柴田講平が一礼をして引き揚げていく姿には哀愁があった。

「お世話になった球場ですからね。感謝の気持ちです」

プロ野球人生の運命を決めるトライアウト。そこには悲愴な思いばかりではなく、希望や成長する喜びも内包されている。彼らは運命の1日を経て、再びそれぞれの人生に分かれていく。

(取材・文/村瀬秀信 撮影/祐實知明)

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