GSOMIA破棄、日韓共に支障なし...日本政府は韓国へのお詫びが優先、徴用工問題で

GSOMIA破棄、日韓共に支障なし...日本政府は韓国へのお詫びが優先、徴用工問題で

  • Business Journal
  • 更新日:2019/08/24
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韓国の文在寅大統領(写真:YONHAP NEWS/アフロ)

経緯

韓国大統領府は22日、関係閣僚らが出席する国家安全保障会議(NSC)を開き、日韓の軍事情報包括保護協定(GSOMIA<ジーソミア>)を終了させると決め、文在寅大統領に報告した。

決定を受けて記者発表した大統領府の金有根・国家安保室第1次長は、韓国がGSOMIAの破棄に踏み切った理由について、日本政府が2日、輸出手続きを簡略化できる輸出優遇対象国(ホワイト国)から韓国を除外した際、日韓間に安保上の問題が生じたためだとしたことを指摘。このことが「両国間の安保協力環境に重大な変化を招いたと評価した」とし、「このような状況で、安保上の敏感な軍事情報の交換のために結んだ協定を維持することは国益に合わないと判断した」と語った。

日本側の反応

安倍晋三首相は23日午前、首相官邸で記者団に「日韓請求権協定に違反するなど信頼関係を損なう対応が残念ながら続いている」と韓国側の対応を批判した。また、「国と国との信頼関係を回復し、約束を守ってもらいたいとの基本的な方針は今後も変わらない」と述べた。

岩屋毅防衛相は同日午前、防衛省で記者団に「現下の地域の安全保障環境を完全に見誤った対応であり、失望を禁じ得ない。極めて遺憾だ」と述べた。「北朝鮮がミサイル発射を繰り返すなど地域の安全保障環境が厳しさを増しているなかで、日韓、日米韓の連携は重要だ」とも語り、韓国側に再考を促す考えを示した。

米側の反応

米国のポンペオ国務長官は22日、記者会見し、韓国がGSOMIAの破棄を決めたことについて、「日韓には対話を継続するように促してきたが、韓国の決定には失望している」と述べた。また、GSOMIAの破棄決定を受け、韓国の康京和外相と電話会談を行ったことを明らかにした。決定をめぐる米側の不満を直接伝え、日本との緊張緩和を急ぐよう求めた模様だ。ポンペオ氏は「日韓共通の利益が米国にとって重要なのは疑いようがない。関係の正常化に向けて日韓が動き出してくれることを期待している」とも語った。

国務省としても22日、声明を出し、「GSOMIAを破棄すれば、米国および同盟国の安全保障上の利益を阻害することになると、文在寅政権には何度も説明してきた」と指摘した。その上で、破棄の決定に関し「北東アジアの厳しい安全保障環境について、文政権が深刻な思い違いをしていることを示している」と批判した。

韓国国防省関係者によると、米国のエスパー国防長官は韓国の鄭景斗国防相と23日午前、電話で会談し、破棄の決定に懸念を伝えた。

米国防総省は22日にも2回にわたって声明を出し、「日韓が他の分野で摩擦を抱えていたとしても、我々の相互防衛をめぐる完全性は断固として維持されなければならないと信じている」と強調した。米国は北朝鮮や中国と対峙するにあたって日米韓の連携を重視し、GSOMIAの締結を日韓に対し強く後押しした経緯がある。国防総省の声明は、日韓の対立が安全保障分野にまで影響を及ぼすような事態は避けるべきだとの考えをにじませたものだ(読売新聞より)。

破棄の国際法的位置づけ、破棄による安全保障上の影響

この「破棄」は有効なものを一方的に破棄したのではなく、1年ごとに延長することになっており、その期限がきたが、韓国は延長を行わなかったもので、条約違反ではない。

この協定は2016年に実施されたものである。では、この協定の成立以前には情報共有はどのようなかたちで実施されていたか。

それまでも、米国は韓国、日本と緊密な情報共有を行ってきた。米国は自己の判断で、韓国側の情報で日本に必要とみられるもの、日本側の情報で韓国に必要とみられるものを相手国に伝達していた。従って、介在する米国が存在する限り、情報の入手が困難になり安全保障上支障が出るというものではない。

この協定は、北朝鮮に対応することを当面の目的としているが、より重要なことは、増大する中国の軍事力に対抗する日米韓軍事協力体制を強化することにある。従って米国主導の協定である。だからこそ、ポンペオ国務長官や米国国防省が破棄に対する遺憾の意を表明し、その延長を求めている。

問題は、日韓軍事情報協定の是非だけではない。日韓関係全体をどのようにするかである。ここに、日本政府と韓国政府に大きい隔たりがある。

安倍政権は1965年締結の日韓基本条約があるので、これに則って処理すればいいとの立場である。他方、韓国の文政権は日韓基本条約ですべて解決したとの立場ではない。比較的穏健な韓国学者は次のように指摘する。

「日韓基本条約後も、日韓双方は戦前の問題をどのように解決するか協議を続けてきた。それが河野談話、村山談話となっている。これを踏まえた関係を維持すべきではないか」

【参考:「慰安婦関係調査結果発表に関する河野内閣官房長官談話」(平成5年8月4日)】

(1) 慰安所は、当時の軍当局の要請により設営されたものであり、慰安所の設置、管理及び慰安婦の移送については、旧日本軍が直接あるいは間接にこれに関与した。

(2)慰安婦の出身地については、日本を別とすれば、朝鮮半島が大きな比重を占めていたが、当時の朝鮮半島は我が国の統治下にあり、その募集、移送、管理等も、甘言、強圧による等、総じて本人たちの意思に反して行われた。

(3)本件は、当時の軍の関与の下に、多数の女性の名誉と尊厳を深く傷つけた問題である。政府は、従軍慰安婦として数多の苦痛を経験され、心身にわたり癒しがたい傷を負われたすべての方々に対し心からお詫びと反省の気持ちを申し上げる。

(4)そのような気持ちを我が国としてどのように表すかということについては、有識者のご意見なども徴しつつ、今後とも真剣に検討すべきものと考える。

【参考:村山内閣総理大臣談話「戦後50周年の終戦記念日にあたって」(平成7年8月15日)

(1)私たちは過去のあやまちを2度と繰り返すことのないよう、戦争の悲惨さを若い世代に語り伝えていかなければなりません。

(2)現在取り組んでいる戦後処理問題についても、わが国とこれらの国々との信頼関係を一層強化するため、私は、ひき続き誠実に対応してまいります。

(3)わが国は、多くの国々、とりわけアジア諸国の人々に対して多大の損害と苦痛を与えました。私は、疑うべくもないこの歴史の事実を謙虚に受け止め、痛切な反省の意を表し、心からのお詫びの気持ちを表明いたします。

徴用工問題の解決へ

日韓の間で一連の日韓関係悪化の端緒になった徴用工問題も、従軍慰安婦と同様の対応ができるはずである。具体的には、少なくとも、

「(1)多大の損害と苦痛を与えました。私は、疑うべくもないこの歴史の事実を謙虚に受け止め、痛切な反省の意を表し、心からのお詫びの気持ちを表明する。

(2)  我が国としてどのように表すかということについては、有識者のご意見なども徴しつつ、今後とも真剣に検討すべきものと考える」

との立場を表明し、徴用工問題の解決の糸口にすべきではないか。

(文=孫崎享/評論家、元外務省国際情報局長)

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