部下を潰していることに気づかないデキる上司たち

部下を潰していることに気づかないデキる上司たち

  • JBpress
  • 更新日:2017/05/19
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Turkish President Recep Tayyip Erdogan delivers a speech during Istanbul Youth Festival in Istanbul on May 4, 2017./AFP PHOTO/OZAN KOSE

私は企業の経営を心理的側面から分析して経営改善を行う経営心理士として、経営コンサルティングを中心に活動している。これまでに数百件の経営相談を受けてきたが、経営相談を受ける中で経営やビジネスにおけるいくつかの成功・失敗に関する法則性が見えてくる。

失敗に関する法則性の1つに、プレイヤーとして突出した能力を持った人間がマネジャーになると部下の可能性を潰してしまうというケースがある。

もちろんこのタイプの人でも部下をきちんと成長させることができている人もいる。ただ、このタイプの上司に悲鳴を上げる部下を多く見てきた。

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名プレイヤー必ずしも名監督ならず

スポーツの世界でも名プレイヤーが名監督になれるとは限らないように、ビジネスの世界でも名プレイヤーが必ずしも優れたマネジャーになるとは限らない。というのもプレイヤーに求められる役割とマネジャーに求められる役割は異なるからだ。

プレイヤーの役割は、自らが動き、自らが高いパフォーマンスを発揮することである。一方、マネジャーの役割は、プレイヤーを動かし、プレイヤーに高いパフォーマンスを発揮させることである。

そのため、マネジャーは自分がスポットライトを浴びようとするのではなく、部下にスポットライトを当てるような動き方をすることが求められる。

人間がモチベーション高く、自発的に動き、高いパフォーマンスを発揮する時とは、自分の意見や仕事ぶりが認められ、成長を実感して自信を持つことができ、そして自由を与えられた時である。

逆に、人間のモチベーションを下げ、自発性を損なわせ、パフォーマンスを下げるためには、相手の意見や仕事ぶりを否定し、自信を失わせ、そして自由を奪えばよい。

マネジャーには部下が前者のような状態になるように関わることが求められる。しかし、プレイヤーとして優秀な上司は、悪気はないものの、結果として後者のような関わり方をしていることが少なくない。

人は頑張った分だけ成果を認めてもらいたい、褒めてもらいたいという欲求を持つ。その欲求が満たされると、それが成功体験という「快」の刺激となり、その「快」の刺激が得られることに「面白さ」を感じるようになる。

しかし、プレイヤーとして優秀な人は求める仕事の水準が高いため、一般的なプレイヤーと比べて部下の仕事ぶりに満足できる確率は低くなる。

また、仕事ができない人の気持ちを理解することが難しいため、「なぜこれくらいのことができないんだ?」といった怒りや不満を覚えやすい。加えて、「普通こうするだろ」「言われなくても普通ここまでやるだろ」といった具合に、レベルの高い「普通」を求める傾向がある。

そのため部下の仕事ぶりに対して、褒めることよりも、できていない点の指摘や注意の方が多くなり、結果として部下の仕事ぶりを否定しがちになる。

高い目標が「普通」の人とそうでない人

また、プレイヤーとして優秀な人は、下積みから今に至るまでの各ステージにおいて、そつなく労せず仕事をこなしてきていることが多い。

そして、1つの目標を達成すると、より高い目標を自らに課して、それに向かってさらなる努力を始める。それが本人にとっての「普通」だったりする。

そのため、部下が苦労の末に目標を達成しても、そんなに苦労するほどの目標でもないだろと、労をねぎらったり、褒めたりすることもなく、淡々と次の目標を与える、あるいは次の目標を設定させる。

と同時に、部下に求める仕事の水準をさりげなく引き上げる。部下は苦労の末に目標を達成しても、労をねぎらってもらうことも褒められることもなく、求められる仕事の水準だけがどんどん上がっていく。

その結果、自信を持つことができないままにプレッシャーだけが高くなっていく。

また、プレイヤーとして優秀な人は成功体験が豊富であるがゆえに、自分の意見が正しいと思い込みがちであり、部下の意見になかなか聞く耳を持てず、自分の意見を押しつける傾向がある。

未熟な部下の意見を「いや、違うだろ」「分かってないね」と正してあげ、これまで成功を収めてきた自分の意見を教えてあげることが部下のため、と本人は思いやりの気持ちを持って意見を押し付ける。

ただ、本当の思いやりとは、いったん部下の意見を聞き、受け入れられるところは受け入れようとする姿勢を持つことである。

そういった姿勢を持つことなく、一方的に上司としての意見を押し付けられると、部下は自分の意見が軽んじられた、あるいは否定されたことにプライドを傷つけられる。これが繰り返されると、それは次第にトラウマとなり、部下は本音としての自分の意見は言わなくなる。

そして、上司の顔色を伺いながら、上司から否定されない、上司の意向に沿った意見を「自分の意見」として言うようになる。そうやってだんだんと部下の発言の自由が奪われていく。

発言の自由を奪われるとモチベーションが下がる

発言の自由が奪われると、それに比例して発想の自由さも失われていく。また、人は自分の頭で考えて、自分のやりたいようにやることにモチベーションや面白さを感じる。

ただ、プレイヤーとして優秀な上司は部下に仕事を任せた場合でも、成功体験が多いがゆえに「自分はこうやって上手くやってきた」「自分ならこうやるのに」と細かなやり方にまで口を挟みがちである。

仮にそのやり方が最高の効率をもたらすやり方であったとしても、部下にモチベーション高く、面白さを感じながら仕事をやってもらうためには、少々の非効率はあっても部下自身の頭で考えた部下のやりたいやり方でやらせてあげる寛容さを持つことも必要である。

そういったやり方を認めず、自らのやり方を押し付け続けると、部下は創意工夫することをやめ、指示されたことを指示された通りにやるだけになる。

ただ、プレイヤーとして優秀な上司の上記のような行動は、必ずしも悪気があってやっているわけではない。自分の仕事の水準が高く、その水準を部下にも求めようとすることから生じてしまう行動であり、この点が本人にとっての盲点になっている。

ただ、こういった関わり方をされると部下は委縮し、自信を失い、自らに可能性を感じることができなくなっていく。そして、部下はいわゆる「指示待ち人間」に変貌していく。

こうやって、プレイヤーとして優秀な上司は部下の可能性を潰していく。

冒頭にも申し上げたように、マネジャーの仕事は部下にスポットライトを当てることである。中には自らの優秀さを部下に分からせることで、マネジャーになってもなお自らがスポットライトを浴び続けようとする上司もいる。

しかし、これでは部下は育たない。部下を育てるためには、むしろスポットライトを浴びたことのないような部下に対しても、いかにスポットライトを当ててあげるかを考えるような関わり方が求められる。

そのためには部下の苦労や気持ちを理解できていなくてはならない。

部下の痛みを知り日本一に

「はじめは自分は3流のプレイヤーでした。でも、そこから泥水すすりながら地べたを這いつくばって、いっぱい悔しい思いをして、いっぱい泣いて、なんとか這い上がってきました。なので、部下の苦労や痛みは誰よりもよく分かります。これが自分の唯一の武器だと思っています」

とある企業で何百もの営業チームがある中で、日本一の営業成績を修めたチームのリーダーがこんな話をされていた。このリーダーは下から数えた方が早いような業績しか残せなかったチームを粘り強く指導し、日本一の業績を修めるまでに育て上げた。

自らの経験を基に、スポットライトを浴びたことのないような部下でもスポットライトを浴びられるようになるためにはどうすればいいか、それを必死で考えてきた。
その結果がこの業績となって現れたという。

マネジャーという仕事をするうえでも、プレイヤーとしての能力は求められる。そのため、プレイヤーとして優秀な人はマネジャーをするうえでもアドバンテージを持っている。

しかし、その優秀さは部下を育てる上では時にディスアドバンテージとなることがある。マネジャーの役割は部下にスポットライトを当てること。その点に意識を払って、真の優秀なマネジャーとしての道を歩んでいただきたい。

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