カブスの108年ぶりの優勝に立ちふさがる、男気・黒田の愛弟子カーショウ

カブスの108年ぶりの優勝に立ちふさがる、男気・黒田の愛弟子カーショウ

  • J SPORTS
  • 更新日:2016/10/19
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目覚めかけた仔熊軍団を沈黙させたのは、米球界屈指の左腕エースだった。

10月16日、カブスが地元シカゴで先勝して迎えたナ・リーグの優勝決定シリーズ第2戦、1対0でドジャースのリードで迎えた七回二死一塁という場面で、マウンド上の左腕カーショウは投手交代を告げようとして歩み寄ってきたロバーツ監督にこう言ったという。

「彼は任してくれ。打ち取れるのは分かってるから」

打席にはカブスのポストシーズンにおける“ラッキーボーイ”の6番バイエズが入っていた。

ポストシーズン負け知らず(シリーズの意)のジャイアンツに土を付けた地区シリーズ第1戦での決勝本塁打をはじめ、前日までポストシーズン打率4割と絶好調。好守備を連発する中、前夜はメジャーでは2010年以来、カブス史上では1907年以来という歴史的なポストシーズン本盗も決めた。この試合の六回一死一、二塁という場面でも、ハーフライナーの打球を意図的にワンバウンドで捕球する頭脳的プレーで走者の混乱を誘って併殺を完成させた“持ってる男”だった。もしもカブスがそこまでの劣勢を挽回して逆転勝ちするのなら、それはバイエズの手によるものに違いなかった。

「ケンリー(・ジェンセン)に代える気満々だったんだけど、やつの目を見たら打ち取れる自信に満ちていたんだ」

と続投を命じたロバーツ監督。ところが2球目の外角速球を、バイエズはものの見事に弾き返した。打球はぐんぐん伸びて中堅後方へと飛んだ。

「一瞬、息が止まったよ(笑)」とロバーツ監督。

「こういうことがあった後はもう、(監督が)信じてくれないだろうね」

と打球に振り向いて呆然とした表情を浮かべたカーショウ。しかし、打球は背走するペダーソン中堅手のグラブにすっぽりと収まった。

「ケンリーが準備していたのは知ってたけど、6アウトを取るのだって大変なことだから、なんとか少しでも負担を減らせてあげられれば、とね」

と再びカーショウ。チームプレーと言うより「男気」と呼びたい。なぜなら、それはある意味、2勝2敗で迎えたナショナルズとの地区シリーズ最終戦の再現のようだったからだ。

公式戦で606回というメジャー記録の投手交代を記録したロバーツ監督は、地区シリーズ最終戦、4対1の七回に救援投手が2点本塁打を打たれて4対3と1点になると、クローザーのジェンセンを投入。「長くても八回途中から」という昨今の流れに逆行する前時代的な抑え投手の起用法を試みた。ジェンセンはアウトを9つも取らなければならなかったが、その試合でもカーショウは「ケンリーを誰かが守ってやらなければならない」と立ち上がり、二日前に110球を投げたばかりで登板予定がなかったにもかかわらず、9回一死から抑えのマウンドに上がってナショナルズ打線を抑えていた。

日本のメディアやメジャーファンにはよく知られていることだと思うが、「男気」で知られる黒田博樹(現広島)はドジャース時代、いつもカーショウを相手にキャッチボールをしていた。当時のカーショウはメジャーデビュー間もない20代前半の新鋭で、まだサイヤング賞投手となる前の初々しい若者だった。いつだったかクラブハウスで黒田を取材しているとカーショウがやって来て、「Excuse me(失礼します)」と言ってから「先に行って体を温めてるよ。ゆっくり話してから出てきていいからね」と言い残してグランドに飛び出していったこともあった。

そのカーショウはメジャー4年目の2011年に21勝5敗、防御率2.28、248奪三振という圧倒的な成績で1度目のサイ・ヤング賞を獲得しているが、大ブレイクしたそのシーズン中、FAになる黒田に「来年も一緒にやろうよ」とドジャース残留を懇願し、13歳も上のベテラン日本人投手の目頭を熱くさせている。

地区シリーズやリーグ優勝決定シリーズにおけるカーショウの登板志願を「黒田ゆずり」などと言うつもりはないのだけれど、そういうドラマが生まれるのはポストシーズンの熱気ゆえだと思う。

無理に「男気」にこじつけなくとも、カーショウと八回からの2回を零封して1対0で逃げ切り、シリーズの成績を1勝1敗のタイにしたジェンセンの好投の意味は大きい。なぜならカブス打線は、ジャイアンツに地区シリーズで勝ったとはいえ、シリーズ打率2割を超えていたのが2番ブライアントと7番バイエズの二人のみで、3番の主砲リゾや5番ラッセルは4試合でわずか1安打づつと、全体的には不振だったからだ。

ジャイアンツとの地区シリーズ第4戦の九回に長単4安打を集めて一気に4点を奪い、続くドジャースとのリーグ優勝決定シリーズ初戦の同点の八回に代打モンテロの満塁本塁打などで5点を奪い取って目覚めたかに思えたカブス打線がカーショウの快投のお陰でまたしても、眠ってしまったわけだ。

カブスの3番リゾや5番ラッセルはいまだにポストシーズン1安打のみのまま。ロサンゼルスへ舞台を移しての第3戦、仔熊打線がこのまま眠り続けるのか、それとも再び目覚めて、第1戦のように「マエケン」こと前田健太投手を早い回に攻略し、救援投手を打ち崩してドジャースを一蹴するのか。

現地18日(日本時間19日)に行われる第3戦に注目して頂きたい。

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