希望と絶望の狭間で<パート3>。「精神的にも参るから、相手としては嫌」

【内田篤人の告白】希望と絶望の狭間で<パート3>。「精神的にも参るから、相手としては嫌」

  • サッカーダイジェストWeb
  • 更新日:2016/10/21
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「運動量がベースの戦い方は間違っていると思います」と独自の見解を展開した内田。写真:小倉直樹(サッカーダイジェスト写真部)

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清武は弟みたいな存在だ。写真:小倉直樹(サッカーダイジェスト写真部)

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ハリルホジッチ監督の要求は「スタンダード」という。写真:小倉直樹(サッカーダイジェスト写真部)

7月初旬、鹿島のクラブハウスを訪れると、練習のピッチには内田の姿があった。パスゲームもこなし、正確なロングボールを何本も味方に通す。右ひざの状態は見るからに良くなっており、そう遠くないうちに復帰できるだろうという期待感を持てた。

その後、シャルケで復帰に向けて調整を続ける内田が10月4日にはMRI検査で「良い結果」を得た。カムバックに向けてひとつ階段を上ったわけだが、そこに至るまでの苦労などを本人の声で振り返りたい。以下のインタビューは、7月にシャルケへ渡る前に記録したものだ。<パート1、2>に続き、<パート3>をお届けしよう。

【内田篤人の告白】希望と絶望の狭間で<パート1>。「その時は正直、治る気がしなかった」

【内田篤人の告白】希望と絶望の狭間で<パート2>。「彼が移籍したダメージは大きかった」

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──昨年12月のサッカーダイジェストの独占取材では「ポジションを変えるなら?」という質問に、内田選手は「CBとボランチ。アンカーもやってみたい」と答えています。

「体力よりも頭の使い方が重要そうという意味で、自分に向いているポジションなのかもって思います」

──内田選手はSBでプレーする時も、「身体と同じぐらい頭を使っている」と言っていました。

「予測して先に動けたら、無駄な体力を使わなくて済む。並んでしまうと、どうしてもね。190センチくらいの選手にはゴリゴリって行かれちゃいますから」

──将来を見据えてポジションのコンバートを考えることは?

「やってみたい願望はあるけれど、それは監督が決めることなので。僕は指示に従うだけです。ただ、左SBは面白そう。(利き足の)右でボールを持っても広い視野を確保できるから、パスコースがたくさんある。右サイドにいる時は死角になる部分が多いので、左サイドの右利きはいいなと思う。右サイドの左利きもそうだけど」

──ということは、右SBとして守りにくい相手は右利きのアタッカー?

「僕はそうですね。利き足はさて置き、ネイマールや(リオネル・)メッシもサイドから中に切り込むプレーが得意。日本人なら、宮市(亮)、宇佐美(貴史)、(香川)真司かな。上手くカットインしてコンビネーションで崩すというのが、現代サッカーのスタンダードに映ります。

違う見方をすれば、爆発的なスピードで縦に行けちゃう選手は貴重。ファルファン、ドグラス・コスタ、(フランク・)リベリあたりは、行けちゃうから凄いですよ」

――来ると分かっていても止められない。

「そうそう、縦に行ける選手。日本人にはいないかな」

──スピードと言えば、ハリルホジッチ監督は「縦への速さ」を求めていますね。

「監督の要求はあくまでスタンダード。『奪って、速く』というのはシャルケの練習でもやっている。それしかやってないんじゃないかというくらいに。世界の常識と言っても大袈裟ではない」

──ただ、それを今の日本代表が実践できているかは疑問です。

「練習時間をもう少し増やせればできるんじゃないですかね。シャルケやドルトムントなんて、攻守の切り替えのところしか練習しません。パス回しとかではなく、ボールを奪う、もしくは奪われた後にどうするかという部分に重点を置いています。そういうトレーニングを代表でどこまでできるかじゃないですか」──欧州組と国内組で(縦への速さへの)認識の差はありますか?

「ありますけど、ほんの少しだけです。海外に行って、1回体感したらできるわけで。その差が深刻な問題とは思わない」

──山口(蛍)選手も半年という短い期間でしたが、ドイツにいました。そこでの経験は財産になりますか?

「一歩を踏み出すだけでも凄いじゃないですか。セレッソで積み上げたものを一旦捨てて、海外に行く勇気は素晴らしいですよ。僕は昔、ヨーロッパのクラブでプレーする気もなかったし、アントラーズがめちゃくちゃ好きだったからよく分かる。日本に戻ることは決して恥ずべき行為ではないと思いますよ」

──「欧州移籍=成功」というわけではないですよね。そのクラブに合うかどうかが重要です。

「そうそう。ドイツとスペインのどちらが合うのかとか、クラブの状況もある。ヨーロッパに長くいるから成功というわけではないですからね。運も大事ですよ」

──清武選手がドイツからスペインに活躍の場を移しましたね。

「スペインって、ちょっと難しいイメージがある。日本人は巧いと言われるけど、スペイン人のほうがその100倍巧いですから」

――中村俊輔選手もそう言っていました。普通のボール回しで、全員がめちゃめちゃ巧いって。

「下手な選手はいないですよ。巧さの基準が違います、スペインは」

──この前、乾(貴士)選手も「『誰や?』っていう選手がめちゃくちゃ巧い」と言っていました。

「そうでしょうね。スペインのクラブとの試合が一番疲れます。(アスレティック・)ビルバオやバレンシアとの試合は、本当に疲れた。1対1の局面で振られるし、ボールもねちねち持たれて……。ワンタッチ、ツータッチでバンバン攻め込まれたりもして、ウザかった。足にくるし、精神的にも参るから、相手としては嫌です」

──バルサ、マドリードの両チームばかりがクローズアップされますが、セビージャやバレンシアなども文字通りの強豪です。

「嫌です、スペインのチームは。身体が大きくなくても強くて巧い。ズルいな、って」

──世界最高峰とも言われるリーガ・エスパニョーラで、清武選手は成功できるでしょうか?

「清武は弟みたいな存在なので、成功してもらいたい」──清武選手の移籍先は、ヨーロッパリーグ3連覇中のセビージャです。

「良いクラブだと思います。ヨーロッパカップ戦を制しているクラブって注目度が高いですから。日本人選手で評価されているのも、(フェイエノールトでUEFAカップ[=現行のヨーロッパリーグ]を制した)『小野伸二』です。

中村俊輔さん、中田英寿さん、本田圭佑さんじゃなくて、『オノ』って言われますからね。『オノはヤバかった』って。急に話は変わりますが、コパ・アメリカは面白かった。ルーズだけど、1対1が多くて激しいし、楽しめた」

──マークの受け渡しとかがあまりないですよね、南米のチームは。内田選手が理想とする守備は? マンマーク? それとも受け渡すやり方ですか?

「受け渡したい。無駄に動きたくないんですよね。運動量がベースの戦い方は間違っていると思います。自分が監督なら、運動量に頼らず勝ちたい。走行距離、スプリント回数をどこよりも少なくして、優勝したいです。ここっていう時に走って、効率よく仕留める。そういうスタンスじゃないと、連戦中にクオリティを保つことなんてできない。どこかで必ず走れなくなる」

──ただ、走らずに負けたら大きなブーイングを浴びそうです。

「そりゃあ、怒られますよ。でも、勝てばいいんです。結果さえ出せば、ひとり8㌔しか走らなくても褒められる。だから、監督になったらこう選手に言います。『敵より少ない運動量で勝て』と」

(パート4に続く)

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プロフィール
うちだ・あつと/1988年3月27日生まれ、静岡県出身。176㌢・62㌔。函南SSS-函南中-清水東高-鹿島-シャルケ(GER)。ブンデスリーガ1部通算104試合・1得点。J1通算124試合・3得点。日本代表通算72試合・2得点。10・14年ワールドカップ出場。08・09年Jリーグベストイレブン。06年のデビュー以来、あらゆる指揮官に重用される右SB。鹿島でリーグ3連覇を経験し、10年夏からシャルケへ。15年6月に右膝の膝蓋腱を手術して戦線離脱中だが、チャンピオンズ・リーグの出場数はここまで日本人最多。早期の復帰が待たれる。

取材:白鳥和洋・広島由寛(サッカーダイジェスト編集部)
文:白鳥和洋(サッカーダイジェスト編集部)

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