アイリスオーヤマだけが「ヒット商品」を連発できる必然的理由

アイリスオーヤマだけが「ヒット商品」を連発できる必然的理由

  • 現代ビジネス
  • 更新日:2019/03/26
No image

アイリスオーヤマが「LED」シェア一位になれた理由

「ついに」というべきか、「とうとう」というべきか、ともかくこの日がやってきた。

2018年、LED電球・蛍光灯の年間売上げシェアトップの座が入れ替わった。

No image

〔photo〕iStock

全国の主要家電量販店・ネットショップのPOSデータを集計した「BCNランキング」の2018年暦年における「LED電球・蛍光灯」カテゴリーで、アイリスオーヤマが31.9%で1位となったのだ。前年まで1位の座にあったパナソニックが31.0%で第2位、第3位が東芝グループの東芝レイテックで12.2%だった。

2014年(2013年暦年の売上げが対象)から始まったこのカテゴリーのランキングは、17年までの4年間、パナソニックと東芝レイテックがワンツーを占め、この2社で7割超のシェアを確保したこともあった。少し古い世代には電灯といえば、長きにわたり、“光る”東芝であり、“明るい”ナショナルだったから、白熱電球からLED電球に時代が変わっても、その2社が売上げ上位を占めるのが当然と思われていただろう。

かたやアイリスオーヤマは2009年ごろからLED照明事業に本格的に参入したばかり。この新参者がわずか10年で、老舗企業2社を押しのけて業界ナンバーワンになったわけだ。

ではなぜ、アイリスオーヤマはそうしたことを可能にしたのか。

そもそも日本で一般家庭にLED照明が広がり始めたのは2009年以降のこと。民主党政権発足直後の2009年9月、国連気候変動首脳会議(国連気候変動サミット)の場で、ときの鳩山由紀夫首相が日本の2020年までの温室効果ガス排出削減の中期目標として「1990年比25%削減とすること」を表明したことがきっかけになった。

その当時、アイリスオーヤマでは中国製のLED照明を4980円で販売していた。しかし鳩山発言をうけて、11月に当時の大山健太郎社長(現会長)は、社内に照明の需要期である3月までに、自社生産で手ごろな価格のLED照明の開発を命じる。通常、開発には7ヵ月かかるため、2ヵ月は短縮しなければならないという難題だったが、2010年3月の発売に間に合わせたばかりか、寿命も長くなり、価格もそれまでの約半分の2300円~2500円に引き下げることができた。

さらに同年11月には、白熱電球1年分の電気代に相当する1980円での販売も可能になった。他のメーカーのLED照明は1本5000円で販売されており、圧倒的な低価格での提供だった。こうしたスピーディな開発と、市場ニーズへの対応こそが、アイリスオーヤマを業界トップに押し上げたといっても過言ではない。

アイリスオーヤマは、その後もLED照明の改良、ラインアップの拡大を繰り返し、現在にいたっている。同社のLED照明は、一般財団法人省エネルギーセンターが主催し、省エネルギーを推進している製品に与えられる「省エネ大賞」を平成30年度(2018年度)に受賞している。これで4年連続5度目の受賞だ。

年間1000点の新商品を生み出す「プレゼン会議」

ところでアイリスオーヤマがどんな会社なのか、ご存じだろうか。

最近では、LED照明はもちろん、銘柄によって水加減を調整してくれるIHジャー炊飯器、大風量セラミックファンヒーター、天井の温かい空気を足元まで回すサーキュレーターなど、スペックが特徴的な同社商品のテレビCMを見かけることも多い。昨年には同社初の黒物家電として4Kテレビを発売したことがニュースになったことから、アイリスオーヤマを新興のトガッた家電メーカーという印象をもつ人も少なくないだろう。

しかし売上規模で見れば、じつは同社の家電売上げは単体売上の半分を上回ったところであり、グループ全体で考えれば6分の1程度にすぎない(2018年度業績)。

同社では、メーカー機能と問屋(ベンダー)機能をもった業態メーカーベンダーとして、自らを位置づけている。アイリスオーヤマは、当初ホームセンター(HC)向けメーカーベンダーとして、業界の成長とともに業績を伸ばしてきたが、現在では、ドラッグストアやEC(ネット通販)という成長業態向けの商品開発も進めている。

実際、同社のホームページで取扱製品のカテゴリーを見ると、LED照明や家電製品から、調理用品、日用品、寝具・インテリア、収納用品、ペット用品、園芸用品、さらには米、ハードオフィス・資材、ヘルスケアなどまで、実に幅広い。しかもその製品種類が多様であるだけでなく、それらの製品それぞれが、「業界初」「値ごろ価格」で形容されるものばかりなのが目を見張る。

No image

日用品から生鮮米まで商品は多岐にわたる

こうしたオリジナルな商品開発を可能にしているのが、大山会長をはじめ役員、幹部社員立会いのもと毎週月曜日に行われる「プレゼン会議」なる新商品開発会議だ。

アイリスオーヤマでは、年間1000点の新商品を開発している。コンビニエンスストアの店内にある商品数が約3000とも4000とも言われているから、その4分の1から3分の1を年間で新商品として発売していることになる。

「プレゼン会議」では毎回60案件ほどが俎上に上がる。企画立案者は大山会長の前で「従来品と何が違うのか、競合との差別化はどうか、利益にどれだけ貢献するのか」をプレゼンテーションしていく。それを見て大山会長が製品化をするか否かを決定していくのだが、1件にかける時間は約5分程度だという。

なぜこういう「プレゼン会議」にしているのか。以前、大山会長は「社長や役員層と同じ情報を共有したうえで、経営層がどう判断するか、直接ふれることが、幹部社員の育成につながる」と答えている。

ロングセラーにあえて頼らない…独自の経営スタイル

アイリスオーヤマでは新商品開発に対して独自の数値目標も掲げている。「発売後3年以内」の商品を「新商品」として定義し、全社売上高に占める新商品の比率を目標値にしているのだ。しかもその目標値は1998年に50%を超え、2013年以降は6割以上に引き上げているから驚きである。

一般にメーカーが経営の安定化を図るためには「ロングセラー商品をどれだけ持てるか」ということに重きを置く。しかしアイリスオーヤマではロングセラーに頼らず、たえずヒット商品の新陳代謝を図っていくことで経営の安定化、さらなる成長を目指しているのだ。

同社が扱う商品数は現在、約1万6000点もある。メーカーとしてこれだけのアイテムを持っているところは聞いたことがない。この1万6000点をSCM(サプライチェーンマネジメント)として見た場合、これほどのアイテムの動きをコントロールするのは至難のワザであり、メーカーベンダーであるアイリスオーヤマでなければ実現できることではない。

世界的ヒット「透明プラスチックケース」の凄み

コストをかけたマーケット調査を実施しないというのも、アイリスオーヤマらしさだ。

「マスを対象にリサーチしてもだいたいニーズは同じものになり、そこからは潜在需要はわからない」という考えが根底にある。

マーケット調査からわかることは、他社がやっても同じ結果になる。その結果を拠り所に商品開発をすれば、同じ市場に同じような商品が出回ることになり、それだけ競争も激しくなる。「池に10匹の金魚がいて、10人でその池に行けば、一人1匹しか手に入らない」という理屈だ。

だからこそ、同社では「マーケットイン」の発想を重視する。マーケットインの発想というのは、単純に生活者からの発想、どんな利便性があるのか、どんなに便利になるのか、というシンプルな視点から商品開発につなげるという考え方であり、「プレゼン会議」の場でも、この考え方が重んじられている。

商品価格についても独自の考えをもっている。

「価格は隣の店が決める」。同じような機能をもった商品であれば、よほど差別化されていない限り、隣に置かれた商品が安ければ、お客の手はそちらに伸びる。自分たちの商品を売りたいと思えば、安値の商品価格に合わせなければならないということだ。もちろん、お互いがこれを繰り返していけば、利益を吐き出すばかりか、赤字覚悟で売らなければならなくなる。

こうした不毛な価格競争に巻き込まれないためには、どうすればいいか。それには自分たちで市場をつくって、価格決定権を持てばいい──。

こうした考えのもと、アイリスオーヤマが市場を創造した商品のひとつが透明プラスチックケースだ。「色が入っていると、中に入っているモノを見つけにくい(衣装ケースとして使ったことのある人にはよくわかることだろう…)」ということから、透明プラスチックでできた収納ケースを開発、世界的な大ヒット商品となった。その後、同じような商品が世界中で出回るようになったという話はよく知られるところだ。

配送費を「製造原価扱い」にする深いワケ

そんな独特の経営を貫くアイリスオーヤマだけに、物流に対する考え方にも独特のものがある。

私はこれまでに何度も同社を訪れたことがあるし、大山会長にご挨拶する度に、「物流のことは大丈夫だから」と自信たっぷりだ。しかも、上辺のことだけでそう話すのではなく、実際に物流のことを本当に知り尽くしているのである。

アイリスオーヤマならではの物流に対する考え方として、まず挙げられるのは配送費の扱いだ。

配送費は販管費として全体で管理するのが一般的だが、同社では、管理会計上、製造原価扱いにしており、どの商品に配送費がいくらかかっているのかが明らかになるようにしている。

あえて工場の稼働率を上げすぎない

こうなっていると現場でどんなことが起こるかというと、小売店から実際に受注のあった量以外には極力、製品在庫をもたなくなる。余分に倉庫在庫をつくってしまうと、売上げは計上されないのに、原価だけが計上されることになり、管理会計的には利益を押し下げることになってしまうからだ。

それだけではない。

アイリスオーヤマでは、工場は物流立地・物流設備投資を優先して立地を考えるのが原則だ。「物流センター内に工場をつくる」という発想で、1物流センターの届け先を「1日配送圏」である100~300㎞圏内で設定し、配送エリアが重複しないように工場を設置している。

物流機器については、物流に関わるコストのブラックボックス化をなくし、効率よくコントロールするために、リース契約も保守契約もしない。社内でできることはすべて自分たちで対応するという自前主義が浸透しており、自動倉庫のWCS(倉庫コントロールシステム)も社内のエンジニアが担当して開発したものだ。もちろん機器のメンテナンスも自分たちで対応している。

工場の稼働率に対する考え方もユニークだ。100%フル稼働させることはなく、ふだんは稼働率を65%程度に抑え、常時3割以上の余裕をもたせておくのが基本だ。

同社では売上予測は5割程度までぶれることがあると想定している。それでも稼働率65%で運用していれば、仮に上限まで上振れしたとしても、65%×1.5=97.5%におさまり、生産設備の追加投資をすることなく増産への対応ができる。

また、製造ラインに余裕があれば、突発的な需要増が生まれたときにも追加投資をすることなく、特需に対応することが可能だ。実際に、東日本大震災直後にはLED照明を増産することができ、同社のシェア獲得につながった。また、SARSが流行したときにはいち早くマスクの増産体制を築き、これを契機にドラッグストアとの取引を広げることができた。

売上高1兆円へ

在庫については、仕掛かり在庫および原材料在庫を持つことはあっても、完成品在庫を極力持たないというのが基本的な考え方だ。

約7700の製品については金型を保有しており、いざ製品が必要となったときには、製品の移動距離が最短になるように、世界中のどこででも製品を作れる体制を築き上げている。

アイリスオーヤマは2018年に創業60周年を迎えた。2018年7月には、その大半の期間(約54年)にわたり同社社長を務めてきた大山健太郎氏(現会長)から、息子の晃弘氏に社長の座が譲られた。現在、代表権ある会長となった健太郎氏だが、古希(満70歳)を過ぎたとはいえ、若々しく、エネルギッシュなところはいまも健在だ。

同社は2018年12月期、単体で1550億円、グループ全体で4750億円をそれぞれ売上げ、いずれも過去最高を更新した。グループ売上げは、2011年実績からほぼ2倍の規模に拡大しており、その勢いはとどまることを知らない。

2022年度には家電事業、EC事業のさらなる成長を見込み、現在の2倍以上となる売上高1兆円を目標に掲げている――。

この記事をお届けした
グノシーの最新ニュース情報を、

でも最新ニュース情報をお届けしています。

外部リンク

経済カテゴリの人気記事

グノシーで話題の記事を読もう!
増税延期なしの衆議院解散・衆参同日選挙の可能性
リゾネットに15ヶ月の業務停止命令 旅行会員権のマルチ販売
大阪メトロ、2024年度までに全駅チケットレス化へ 顔認証導入
永谷園、即席みそ汁など値上げへ
日本農業の最大の問題点"人手不足"を解決する!「ドローン農業革命」の全貌【前編】
  • このエントリーをはてなブックマークに追加