【ヤクルト】真中満監督が退任発表前にくれたメッセージ

【ヤクルト】真中満監督が退任発表前にくれたメッセージ

  • 文春オンライン
  • 更新日:2017/08/23

真中監督に話を聞き続けた今シーズン

ヤクルト・真中満監督の辞任が決まった。8月22日の試合前の囲み会見で、「来季、もし(チームを)預かったところで、正直勝つ自信はない。そんな中で(続投要請を)受けても失礼」と彼は言った。わずか2年前のセ・リーグ優勝監督の言葉が切なく響く。

今季初め、定期的に真中監督にインタビューするという連載仕事が舞い込んだ。それは、現役監督に日々の戦いを振り返ってもらいつつ、チーム作りの苦労や秘訣を尋ねるという企画だった。長年のヤクルトファンであり、真中監督とは同学年でもある僕にとって、願ってもないオファーだった。自分と同年齢の男がどのようにチームを率い、どのような思いを抱いているのか、ぜひとも知りたかった。僕は依頼を快諾し、定期的に真中監督に会う日々が始まった。開幕を直前に控えた取材初回のことだった。僕は念のために、彼に告げた。

「長いペナントレース。おそらく、いいときも悪いときもあると思います。ときには、失礼な質問をするかもしれません、ときには、答えづらい質問もあるかもしれません。ひょっとしたら、気に障ることもあるかと思いますが、率直な質問をぶつけさせていただきたいと思っています」

僕の言葉に対して、真中監督は笑顔で応える。

「僕は、そういうのは気にしないタイプなんです。番記者に聞いてもらえればわかると思うけど、たとえ連敗中であったとしても僕は普段通りに接するし、いつも通りに質問には答えますから、全然心配しないで何でも聞いてください。お互いにそれが仕事ですから」

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今季限りでの退任を発表した真中満監督 ©文藝春秋

こうして、彼に定期的に話を聞く連載が始まった。しかし、開幕直後からヤクルトは本当に弱かった。40年近くファンを続けているけれど、ここまで負けたことは記憶にないほど負け続けた。「敗戦」に耐性がついていると思っていた自分が、ここまで落ち込むとは、自分でも想像しないほど圧倒的に負け続けた。

しかし、当の真中監督は、最初の宣言通りに僕の質問に対して、いつも丁寧に答えてくれた。「7月7日の惨劇」の翌日に話を聞いたときもそうだった。クローザーに転向したばかりの小川泰弘がまさかの6失点。屈辱の逆転負けを喫した翌日でも、淡々と前日の「惨劇」を振り返ってくれた。

「悔しさは、前日に球場を出るまでに忘れる。そして、反省すべき点は反省した上で、気持ちを切り替えて次の試合に臨む」

真中監督は力強く語った。しかし、「監督生命をかけるぐらいの強い思いで決断した」と語っていた小川のクローザー転向は失敗に終わり、小川は再び先発要員に戻った。退任会見で、「7月にはすでに退任を決断していた」と語っていたけれど、思えばこの「ライアンのクローザー転向失敗」も、退任決断の主因になっていたのかもしれない。

真中監督から託された「最後のメッセージ」

改めて僕は、真中満の引退試合を思い出す。あれは2008年10月12日のことだった。この日の神宮球場は、真中だけではなく、度会博文、小野公誠、河端龍の引退試合でもあった。球場全体に感傷的なムードが漂う中で、真中は3対3で迎えた8回裏に代打で登場。しかし、横浜ベイスターズの牛田成樹の前に空振り三振に倒れている。試合終了後の引退セレモニーで、彼は言った。

「最後の最後でみっともない三振、スミマセン!」

その瞬間、神宮球場はドッと笑いに包まれた。明るいキャラクターで人気だった真中らしい、別れのあいさつだった。涙ではなく笑い。ほのぼのとした空気が、そこには流れていた。

引退直後の真中にロングインタビューをしたことがある。このとき彼はすでに翌年からの二軍打撃コーチ就任が決まっていた。

「まだ若いし、選手たちとは年も近いから、積極的にコミュニケーションを取っていきたいよね。コーチとしてはまだまだ新米だけど、決して背伸びをせずに自分の学んできたことを若い選手たちに伝えていきたいな」

そう、このとき彼はまだ37歳だった。「まだ若い」と、何の衒いもなく言える時期にあった。そして、それから9年の月日が流れた。真中は一軍監督となり、すでに不惑も半ばを過ぎている。決して、「選手たちとは年も近い」と言える関係ではなくなった。それでも、一軍監督就任1年目の2015年には、見事に前年最下位のチームをセ・リーグ優勝に導いた。自分と同学年の監督が、自分の愛するチームに入って、見事に優勝を飾る。長年のヤクルトファンとしてこんなに幸せなことはなかった。

そして今年、真中監督に定期的に話を聞く日々が始まった。たとえ連敗中であっても、ふがいない敗戦を喫した直後であっても、彼は淡々とインタビューに応じてくれた。すでに退任を決意していたにもかかわらず、彼は懸命に「最後まで指揮を執り続ける」「ここで投げだしたら、次を引き継ぐ人がかわいそうだ」と言い続けた。

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どんなチーム状況でも淡々とインタビューに応じていた真中監督 ©文藝春秋

正式発表前だから、「辞任」を匂わす発言はできない。けれども、嘘をつくのが下手な人なのだろう。常に明るく振舞いつつも、彼の言葉の背後にほのかに見え隠れする悲壮感、いや、決意のようなものを僕は感じ取っていた。8月半ばの取材、別れ際に彼は言った。

「次回、9月になれば、もっといろいろなことがしゃべれるようになるから……」

この言葉が何を意味するのかは明白だった。続けて、彼は言った。

「本来ならば優勝して、明るく元気な勢いの連載になるはずだったのにすみません。でも、長谷川さんも、勝ち続けている監督ではなく、負け続けている監督の姿を間近で見ることができたことは、それは逆にいい体験になるかもしれないですね」

それは決して、自虐的な物言いではなかった。真中満のこの言葉から、同学年の男として僕は、彼からのこんなメッセージを受け取ったように思った。

「たとえどんな成績であっても、僕は最後まで指揮を執り続ける。だからあなたも、最後まで取材をまっとうしてください。最後の姿をきちんと見届けてください」

監督の辞任劇が、こんなに悲しかったことはこれまでに経験がない。同級生の男の生きざま、去り際を、散り際を、僕は最後まで見届けるつもりだ。真中満という男が、どのように残りの試合を率いていくのかを、しっかりと見届けたい。そして、次回取材の際にはハッキリと本人に伝えたい。「お疲れさまでした。そして、どうもありがとうございました」、と。

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(長谷川 晶一)

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