ルネサス混迷、異例の2カ月操業停止で社員一時帰休と給与カット...巨額負債の隠れた爆弾

ルネサス混迷、異例の2カ月操業停止で社員一時帰休と給与カット...巨額負債の隠れた爆弾

  • Business Journal
  • 更新日:2019/04/26
No image

半導体大手、ルネサスエレクトロニクスが国内外の13工場で生産停止を検討している。6月末にはグループ従業員の5%に当たる1000人近くの希望退職も募る予定だ。

まず、国内9工場のうち、シリコンウェハーに電子回路を刻む「前工程」を行う6工場で最大2カ月間、操業を止めると3月29日に発表した。茨城県の那珂工場や熊本県の川尻工場などが対象となる。

4~5月の大型連休を起点とする1カ月と、8月の夏休み期間の1カ月間、工場を停止する予定。正式に発表されたのは、4~6月に最大1カ月停止するというもの。従来、夏休み期間などに1週間ほど休業することはあったが、1カ月の生産停止は極めて異例だ。

国内工場の従業員は1万人規模。操業休止の間は一時帰休とすることになり、給与の8割程度の休業手当を支給する。7月以降の稼働については未定である。

ルネサスは3月20日に定時株主総会を開き、呉文精社長は生産調整について「検討しているのは事実」と認め、「需要が回復しないリスクに備え、コストを削減する」とその狙いを説明した。

ルネサスの2018年12月期の連結決算(国際会計基準)の売上高は前期比2.9%減の7565億円、営業利益は同33.0%減の681億円、純利益は50.0%減の509億円だった。中国景気の減速で企業の設備投資が減速しており、エアコンやファクトリーオートメーション(FA)向けの半導体需要が減った。中国の自動車市場がマイナス成長となった影響を受け、主力の車載用のマイコンの販売が振るわなかった。

だが、中国の景気の“変調”による逆風は、ルネサス1社の問題ではない。半導体や電子部品など幅広い業種に影響が広がっている。

ルネサスには、これ以外にも固有の事情がある。

日本の顧客比率の高いルネサスは、成長市場への進出が不可欠だ。17年2月、アナグロ半導体に強い米インターシルを約3200億円で買収した。19年3月30日、データセンター向けの製品に強みを持つ米インテグレーテッド・デバイス・テクノロジー(IDT)を約63億ドル(約6930億円)で買収する手続きを終えた。対米外国投資委員会(CFIUS)の承認を得た。買収資金は銀行から調達する。有利子負債は18年末に1929億円だったが、この買収で9000億円を超え、50%台だった自己資本比率も30%前後まで悪化する見通しだ。

2社合わせると1兆円を超える巨額の買収案件となる。総資産が9678億円(18年12月期末)のルネサスにとって、会社の形が変わるような一大変革期となる。

しかし、世界的な半導体市況の下落もあって、IDTの買収は「割高」とアナリストは指摘する。当然のことだが、ルネサスは多額ののれん代を抱えることになる。

米格付会社、S&Pグローバル・レーティングは3月28日、ルネサスの長期格付けを「トリプルB」から「トリプルBマイナス」に1段階引き下げた。

●世界の半導体は30カ月ぶりに減

世界の半導体市場は様変わりした。18年実績では10年前の2倍に成長したが、ルネサスが18年9月にIDT買収を発表した直後に、半導体価格は下落に転じた。

今年1月、フラッシュメモリの価格は30カ月ぶりに前年水準を割り込んだ。2割を上回る高成長が続いたが、18年後半に減速し、19年に入るとマイナス圏に突入した。

フラッシュメモリの用途はスマホが約4割、データセンター向けが約3割、自動車やパソコンなどが残りの約3割といわれている。

成長を牽引したのはグーグルやアップルなど「GAFA」と呼ばれる米IT(情報技術)大手のデータセンター投資だった。クラウドの普及でデータ量が急増し、データを記憶する「メモリー」と呼ばれる半導体の特需をもたらした。ところが、18年夏からGAFAが調達を抑制。フラッシュメモリの価格は1年で4割以上下落した。

中国では自動化投資ラッシュが半導体の需要の大きな支えになってきたが、米中貿易戦争の余波で家電や車、工作機械向けが急減した。近年の需要拡大を支えてきたGAFA、中国という2本柱が勢いを失った。

呉社長は19年後半の半導体の需要見通しについて「英国のEU(欧州連合)離脱や米中貿易摩擦があって予測しにくい」と、株主総会で述べた。

ルネサスは在庫リスクを軽減するため、長期の操業停止と人員削減に踏み切るわけだ。呉社長は車載用を重視している。一方、ルネサス再建の陰の立役者である柴田英利CFO(最高財務責任者)は、データセンター向けなど車以外の強化を主張。2人の意見の相違がメディアで取り沙汰されている。

IDTの買収が3月30日で完了したのを受けて、中期経営計画を策定し直す。車載か非車載か――。明確な方向性を打ち出すことができるかがカギを握る。

国内販売網も再編する。販売代理店契約を結ぶ専門商社の数を16社から6社に絞り込む方向だ。コスト削減策の一環である。今後1~2年で、「特約店」と呼ばれる代理店をリョーサン、菱電商事など6社に集約する。

ルネサスは10年の発足後、特約店を30社から16社に減らしたが、本格的な販売網の再編はこれ以来となる。
(文=編集部)

この記事をお届けした
グノシーの最新ニュース情報を、

でも最新ニュース情報をお届けしています。

外部リンク

経済カテゴリの人気記事

グノシーで話題の記事を読もう!
アマゾン銀行が誕生...2025年、日本の「銀行」はここまで激変する
ブガッティLa Voiture Noire──その価格、なんと14億円
ライザップ、松本晃氏が半年で敵前逃亡した“蟻地獄”...数十社の不振子会社群に慄然
熱いぞ!ANAとJALの「仁義なきハワイ争奪戦争」が始まる!
コンビニ店主「もう生きていけない」 経営難でも近くに新店、ドミナントの実態
  • このエントリーをはてなブックマークに追加