180億円規模のドーム大改修! 西武ライオンズが描くビジョン

180億円規模のドーム大改修! 西武ライオンズが描くビジョン

  • ハーバー・ビジネス・オンライン
  • 更新日:2018/01/13
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株式会社埼玉西武ライオンズがメットライフドーム周辺の改修計画を発表した。約180億円という規模からは、球団のみならず、西武グループ全体の意気込みが感じられる。この改修を通して、球団がどのようなビジョンを描いているのか直撃した。

◆完全ドーム化も検討されていた

2018年は埼玉県所沢市へ本拠地を構えてから40周年の節目の年。これまで大きな投資ができていなかったこともあり、選手寮や室内練習場といったインフラが老朽化していたことも改修に踏み切った要因だという。

「約3年前から検討を始め、ようやく計画がまとまって発表させていただきました。メットライフドーム周辺のエリアは一般的に市街化調整区域となっているので、何かを開発したり、建設するときには行政と相談する必要があります。特に今回の改修は大規模かつ、広範囲に及ぶものなので、ひとつひとつやり取りをしながら進めていくうえで、時間がかかってしまったんです」(経営企画部長・光岡宏明氏)

ライオンズはもちろん、他球団のファンの間でも話題となった今回の改修。だが、発表に至るまでの道のりは決して平坦なものではなかった。

「ファンの皆様からは、施設面においていろいろご意見を頂戴していましたし、ネット上での反応も十分認識しておりました。ただ、地域の特性もありますし、検討していくうち、場当たり的にひとつずつ改修しても、対処できないということがわかったんです。結果的には3年かかりましたが、ファンの皆様と選手、それぞれに対してしっかりしたプランを提示することができたと思います。ドーム内が『暑い』『寒い』というご意見も同じで、実は完全ドーム化も検討していました。しかし、法令対応なども含め、実現しようとすると、もうひとつドームを造れてしまうほどの予算がかかる。さらに野球興行を行いながら工事ができるレベルではないため、工事期間中はメットライフドーム以外の場所で興行を行う必要があり、現実的な案ではありませんでした。であれば、今あるいいところに着目していこう、と。これだけドームの外に広がりを持った球場はほとんどないので、そこに我々は可能性を見いだしました」

グルメやイベントなど、球場を中心としていかに野球以外の娯楽も楽しめる空間を生み出せるか……。近年、野球界のキーワードのひとつとなっているのが「ボールパーク」だ。国内では球場内に観覧車やメリーゴーランドを設置した楽天生命パーク宮城(東北楽天ゴールデンイーグルスの本拠地)などが、いち早くその流れを取り入れている。ライオンズは絵空事のような漠然としたプランを描くのではなく、自然共生形というある意味で地に足のついた計画を進めていくこととなった。メジャーリーグのスタジアムや、国内でも似た地域性をもつ球場を視察するなど、マーケティングには力を入れたという。

「地理的な特徴と市場規模に関しては特に注目しました。国内でも都市のド真ん中にあるものに関しては、あまり比較対象にならないということで、ビッグマーケットに近接している球場がどういった取り組みをしているか、それがどう施設に反映されているのかをリサーチしました」

こうして外周エリアの拡張、飲食店などのインフラ増強を打ち出したライオンズ。はたしてどのような効果を見込んでいるのだろうか?

◆「インスタ映え」するフォトスポットも

「メットライフドームは特においしい球場グルメがあるとファンの皆様に評価いただいております。これまで基本的には買って席で食べるという観戦スタイルでした。外周通路の外に空間を設けることによって、フードエリアのモニターを観ながらですとか、あるいは子供を遊ばせながら観るなど、今までにない観戦スタイルがご提供できるかなと考えております」

近年ブームとなっている「横丁」感覚で、グルメやお酒を味わいながら、ゆったりと観戦……。など、観戦スタイルが多様化することにより、幅広い集客が見込めるはずだ。屋外こども広場やイベントスペースを設置することで、「どこの球団も力を入れているはず」というファミリー層の開拓も、これまで以上に進めていく。

「子供のとき球場に訪れた方は、大人になってからも球場に戻ってきやすいという面はあります。ただ、現状では家族で来て、3時間座って観戦するというのはなかなか難しい。’17年から『ライオンズキッズパーク』という空間を設け、小さいお子様に野球にちなんだ遊びをしていただくといった取り組みをしています。メットライフドームのエリアは起伏が激しいので、改修後はその地形を活かした遊具や施設を設置し、よりファミリー層にも楽しんでいただきたいと思います」

現在、ライオンズのメイン観客層は30~40代の男性客、男女比率はおおよそ7対3だという。しかし、近年はそんな客層にも変化が出てきている。

「お母さんと娘、女性同士でいらっしゃる方が増えてきていますね。日によって土日のデーゲームの前に西武第二球場を開放してキャッチボールイベントをやっているのですが、そこでも女性の親子同士でキャッチボールをする方が出てきている。これまでキャッチボールといえば、お父さんと息子でというイメージでしたが、少しずつ様子が変わってきている気がしますね」

球団側も“インスタ映え”しやすいフォトスポットを設置するなど、女性客を取り込むための施策を次々と打ち出している。

「‘17年は、フォロワー数の多いインフルエンサーを球場にお呼びして、まだ野球観戦をしたことのない子たちを集め、その様子をSNSにあげてもらうというトライアルを行いました。初観戦の子たちが、メットライフドームを見てどう感じるのかというヒアリングもしています。『そもそも野球観戦や野球自体に触れる機会がなかった』という意見が一番多く、『実際に来てみると野球を知らなくても楽しめる』という声がほとんどでした。まずは球場に来てもらうキッカケが大事ということで、’18年以降はその仕組みづくりをやっていこうと思っています」

◆スマートスタジアム化でサービスも多様に

また、今回の改修計画では「スマートスタジアム化」を進めることも発表された。すでに’13年からドーム内でインターネットにアクセスできる無料サービス「Lions Wi-Fi」を開始しているが、今後はさらにコンテンツを充実させていく予定だ。

「サービス内容については、まだ検討している最中です。アメリカや国内にも、いろんな事例がありまして、いろんな案や意見が出ていますが、サービスまで持っていくには障害もあります。たとえばアプリなどを使って、席にいながら飲食物を注文するという案も出ています。しかし、どうやって席まで配達するのか? 供給量はどうなるのか? そのサービスを価格に転嫁していいのか……? 超えなければならないハードルがあるなかで、どのサービスをやるのがベストなのかを検討しています」

また、メットライフドーム、選手寮、室内練習場だけでなく、ドームのすぐ側にある西武第二球場も改修されることにも注目したい。スタンドが設置されるなど、選手の育成にも欠かせない内容だ。

「現在の西武第二球場はお客様が観る環境が整備されているとは言えず、快適にご観戦いただけるようにしたいというのが理由のひとつです。それによって、選手が常に観られている環境で練習や試合をすることができる。特に若い選手に関しては、人に観られる環境でプレーすることが刺激になり、レベルアップにも繋がると考えています」

こういった改修を望んでいたのは、ファンだけではない。選手からも設備をよくしてほしいという声は挙がっていた。ファンと選手の間で板挟みになったまま、水面下で計画を練り上げていた球団職員の苦労も報われるはずだ。

「選手に迷惑をかけていた部分もありましたが、それを踏まえて、いい施設を造りたいと思っていました。確定したことではないので、計画中は何も言えず……。『本当は考えてるんだよ』と伝えたい場面も多々ありましたが、そこはぐっとこらえました。発表できるまでは、我々も我慢していたというのが正直なところです」

40年もの時、そしてさまざまな障害を乗り越えて、大きく動き出したメットライフドームの改修計画。今後は、’18年6月からドーム外、来シーズンオフにドーム内の工事が始まり、’21年春ごろの完成を目指す。埼玉西武ライオンズという球団を強化することにより、西武グループ全体のブランド力をアップさせるという意志が伝わってくるだけに、ライオンズの試合結果というスポーツ面だけでなく、西武HDの業績というビジネス面にも注目していきたい。

<取材・文・撮影/林 泰人>

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