大気汚染によるアトピー性皮膚炎発症メカニズムの一端を解明

大気汚染によるアトピー性皮膚炎発症メカニズムの一端を解明

  • QLife
  • 更新日:2016/12/01

転写因子「AhR」の活性化とアトピー性皮膚炎の関係探る

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画像はリリースより

アトピー性皮膚炎は、アレルギー体質の人に見られる、慢性的なかゆみを伴う皮膚炎です。虫に刺されたときのような一時的なかゆみとは異なり、強いかゆみを伴う湿疹が慢性的に起こり、かきむしった結果、症状がますます悪化してしまうというケースもあります。

患者数は世界的に増加していますが、主な治療法はステロイド剤を塗ることによる対症療法で、かゆみの根本的な原因の解消には至っていないのが現状です。発症には遺伝的要因と環境要因の両方が関与していると考えられていますが、大気汚染などの環境要因がどのように関わっているのか詳細はわかっていません。

東北大学大学院医学系研究科の日高高徳医員らによる研究グループは、大気汚染物質に転写因子「AhR」を活性化する成分が含まれていることに着目。既に、大気汚染物質に暴露される表皮でAhRを恒常的に活性化させたマウス(AhR活性化マウス)が慢性皮膚炎を発症することがわかっており、AhR活性化マウスの表皮での機能を詳しく解析することで、大気汚染によるAhRの活性化とアトピー性皮膚炎の関係を探りました。

かゆみを狙った治療薬の開発に期待

AhR活性化マウスの性質を詳しく調べた結果、皮膚のアレルギー性炎症やバリア機能障害、ぜん息様の症状を発症しやすくなるなど、ヒトのアトピー性皮膚炎と非常によく似た症状を示すことがわかりました。さらに、アトピー性皮膚炎患者と同様に表皮内に神経が侵入しているため、かゆみを感じやすい状態になることが解明されました。

また、表皮の遺伝子発現を調べたところ、AhR活性化マウスの皮膚では神経伸長が見られるよりも前に、神経栄養因子「artemin」の遺伝子「Artn」の発現が誘導されることが判明。arteminを働かなくする抗体の投与によって、AhR活性化マウスの表皮内神経伸長とかゆみ過敏性が改善したことから、AhRがarteminの発現誘導により、かゆみ過敏性を引き起こしていることが示されました。

これらの結果から、皮膚についた大気汚染物質がAhRを活性化し、表皮でのartemin産生を誘導することで、アトピー性皮膚炎の諸症状が引き起こされるという、発症メカニズムの一端が解明されました。研究グループは「AhRの活性やarteminの働きを抑える物質の探索により、アトピー性皮膚炎のかゆみをターゲットとした新しい発想の治療薬を開発できる可能性がある。既存の治療薬と組み合わせることで、症状を抑えることが容易になると期待される」としています。(菊地 香織)

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日本医療研究開発機構 プレスリリース

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