栃木SCがギリギリで「泥沼」から脱出。J3の過酷さが身にしみた...

栃木SCがギリギリで「泥沼」から脱出。J3の過酷さが身にしみた...

  • Sportiva
  • 更新日:2017/12/06

今季J3は、最終節で頂上決戦を迎えた。

首位に立つ栃木SCがアウェーに乗り込んでの2位アスルクラロ沼津との一戦は、勝ち点59の栃木が勝てば、文句なしの優勝が決定する。一方で、勝ち点58で追う沼津が勝っても、まず間違いなく優勝を決めることができた(沼津と同勝ち点の3位ブラウブリッツ秋田は得失点差で10点以上あったため)。長いシーズンを締め括る最終節としては、最高の舞台設定である。

No image

J3優勝は逃したものの、最終節でJ2昇格が決まった栃木SC

しかし、J3優勝をかけた大一番は、両者の間に微妙な熱量の差があったことは否めない。この試合がどんな結果で終わろうと、J2参入に必要なライセンスを持たない沼津は、J2へ昇格することができないからだ。

対照的に栃木は、J2昇格への募る思いがこれ以上ないほどに高まっていた。一昨季にJ2で最下位(22位)に終わり、J3降格。1年での復帰を目指した昨季も、J3で2位となりながら、J2・J3入れ替え戦でツエーゲン金沢に敗れ、J2昇格を逃していた。

12月3日、試合会場となった愛鷹広域公園多目的競技場のスタンドは、アウェー側ゴール裏は言うに及ばず、メインスタンドもおよそ半分を栃木の黄色のユニフォームが埋めていた。仮に優勝を逃したとしても、入れ替え戦がなくなった今季は、2位以内に入ればJ2復帰が確定する。

今季こそ、絶対――。黄色に染まったスタンドには、ホームのサポーターを凌駕する悲壮な決意がみなぎっていた。

試合は、ある意味でタイトルがかかった大一番らしい展開で進んだ。

どちらもロングボールを多用し、一方がヘディングではね返したボールを、もう一方もヘディングで返し、浮いたボールの落下点では肉弾戦が繰り広げられる。ボールが地上を転がる時間が非常に短い試合は、決して内容的にレベルの高いものではなかったが、互いの負けたくないという思いが強く表れていた。

開始わずか7分にして、沼津がFW薗田卓馬のゴールで先制しても、展開に大きな変化はなかった。栃木のFW西谷和希が振り返る。

「互いにラフなサッカーになって、硬い試合になってしまった。グラウンダーのパスが少なく、もう少し自分が(試合を)落ち着かせられたらよかったけど……、前を向いてドリブルしたときにはチャンスを作れたが、その回数も少なかった」

ボールが行ったり来たりを繰り返すだけで、目立ったチャンスが生まれない試合展開に、黄色のスタンドからは次第に焦りの色がにじみ出た。昨季はリーグ戦のラスト2試合で1敗1分けと、波に乗れないままに挑んだ入れ替え戦で金沢に敗れた。そして今季もまた、最終節を前に5戦連続勝利なし(1敗4分け)の状態に陥っていた。

2年連続でのシーズン終盤の失速。またしても、最後の最後でJ2昇格を逃すのか。そんなムードが、少なからず漂い始めたときだった。

77分、栃木のCKを沼津がクリアし切れず、2度3度と力なく宙に浮いていたボールが、栃木のDF菅和範の目の前へ転がる。菅は「自分が打とうかと思ったが、ネイツが横にいたので」、右でフリーになっていたFWネイツ・ペチュニクへパス。これをペチュニクが左足で冷静にゴール左スミへ蹴り込んだ。栃木の横山雄次監督が語る。

「(先制された後も)チームとして大崩れせず、0-1のままいけたことが追いついた要因だと思う。年間を通して大事にしてきた『全員攻撃、全員守備』を、チーム全員がしっかりまとまって出すことができた」

昨季の悔しさを知る菅も、「失点は早い段階だったが、取り返せるという強い気持ちがあった。(先に)失点する試合も経験しているし、逆転も経験している。1年間の積み重ねがここで生きた」と胸を張る。

同点に追いついた後の残り時間は、沼津のパワープレーに防戦が続いたが、粘り強くはね返し続けた。そして1-1のまま、スタジアムに鳴り響いた試合終了のホイッスル。その瞬間、黄色に染まったスタンドからあふれ出た感情は、はじける歓喜というより、ジワジワと湧き上がるような安堵だった。

同時刻に行なわれていた試合で秋田が勝利を収めたため、栃木は秋田に逆転優勝を許す結果にはなった。それでも「優勝はできなかったが、昇格できてサポーターと喜び合えて、うれしかった」とキャプテンのMF廣瀬浩二。2位を死守した栃木は、3年ぶりとなるJ2への帰還を果たした。

この2年間は栃木にとって、いつ終わるとも知れない、果てしなく長い時間だったに違いない。

「栃木はJ2で戦ってきたチーム。環境もよくなってきて、『J1を狙うぞ』というところでのJ3降格だった」

2年前の悪夢をそう振り返る廣瀬は、「自分がキャプテンをやって2年目での降格だったので、責任を感じた」と話す。

当然、「早くJ2へ昇格しなければ」の思いは強かった。しかし、「昨季は『1年で絶対に昇格するぞ』という気持ちで臨んだが、最後のところ(入れ替え戦)でチャンスをつかめなかった」

廣瀬は険しい表情で「苦しいオフだった」と、失意のまま過ごしたシーズンオフを振り返る。

だが、悶々(もんもん)とした日々を過ごすなかで、「(昇格を逃したまま)悔しい思いでチームを去らなければいけない選手もいた。彼らの分までしっかり戦おうと決めた」と廣瀬。「今年を(J3での)最後の1年にしてやる」。覚悟を決めて勝負のシーズンに向かった結果が、最終節での劇的なJ2昇格決定だった。

「2年間戦ってみて、J3は過酷なカテゴリーだと身にしみた。J2に戻れてホッとしている」

そう語り、笑顔を見せるキャプテンは、ようやく少しだけ肩の荷を下ろすことができたのかもしれない。

とはいえ、栃木にとってJ2昇格は通過点に過ぎない。来季は今季以上に厳しい戦いが予想される。昇格を決めたばかりにもかかわらず、横山監督が「優勝できなかったことで課題をもらったと感じている。チームとして来年J2で戦えるように準備したい」と、早くも来季へ目を向けるのも無理はない。

「最低目標のJ2昇格はできた」と言いながらも、「最後に失速し、全部よかったと喜べない心境がある」と語る指揮官は、夏の移籍で獲得したペチュニクの活躍を挙げ、「チーム戦術やまとまりは大事だが、タレントのある選手が必要なんだと改めて思った」と、戦力補強の必要性を示唆する。

今季、栃木のチーム総得点44は、J3で5位タイ。加えて、8ゴールの西谷がチーム得点王では、J2昇格を果たしたチームとしてはあまりに寂しい。来季、1ランク上のカテゴリーで戦うことを考えれば、指揮官が少なからず危機感を覚えるのも当然のことだろう。

それでも、「J3を戦い抜いたことは力になる」と廣瀬が語るように、雌伏の時を過ごした2年間は、間違いなく栃木というクラブをパワーアップさせたはずだ。この2年間が無駄ではなかったことを、栃木は来季以降の戦いで証明していかなければならない。

廣瀬が続ける。

「J2では、自分たちの力を出し切れないと勝てない。やることを変えず、目の前の試合で力を出し切るところを栃木のストロングポイントにしてやっていきたい」

J3降格から2年。長く苦しい時を経て、栃木はようやくスタートラインに戻ってきた。

◆まずいぞ、ハリル。コロンビアは前回より強くて、日本など眼中にナシ>>

◆名古屋グランパス「第2次風間革命」はJ1の舞台で吹き荒れるのか?>>

■Jリーグ 記事一覧>>

この記事をお届けした
グノシーの最新ニュース情報を、

でも最新ニュース情報をお届けしています。

外部リンク

Jリーグカテゴリの人気記事

グノシーで話題の記事を読もう!
【ライターコラムfrom仙台】“Be STRONG”の道はまだ続く...2017年の仙台が掴んだものとは?
五輪マスコット投票開始
[プレミアリーグWEST]ともに目標達成できず...勝者・広島ユースは得失点差で2位、神戸弘陵はプリンスリーグ降格に
アジア王者浦和、UAEで開催国以上の人気 大会スタッフが証言「浦和と鹿島は有名」
サガン鳥栖がシーズン報告会 豊田来季2桁弾誓う

注目のキーワード

キーワードで気になるニュースを絞りこもう

  • このエントリーをはてなブックマークに追加