デザート・トリップ:疑う者をも黙らせた本物のクラシック・ロックのメガフェス

デザート・トリップ:疑う者をも黙らせた本物のクラシック・ロックのメガフェス

  • RollingStone
  • 更新日:2016/10/20
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デザート・トリップ:疑う者をも黙らせた本物のクラシック・ロックのメガフェス

「老人版コーチェラ・フェスティバル」などと揶揄された歴史的イベントは、6組の伝説的アーティストの衰えないパワーを見せつけた。

納得のステージだった。ザ・ローリング・ストーンズのミック・ジャガーはデザート・トリップ出演を発表した2016年春、ロック界の重鎮たちが集うこのフェスティバルを「老人版コーチェラ」と自虐的に揶揄し、10月7日の初日のステージでも、現役で活躍する60年代〜70年代の6組の伝説のロックスターが集結したフェスティバルを「英国紳士音楽家たちのためのパームスプリングス老人ホームだ」とジョークを飛ばした。「80年代後半を覚えているかい?」とジャガーが前置きしてからバンドは、1989年のアルバム『スティール・ホイールズ(原題:Steel Wheels)』からの一曲『ミックスト・エモーションズ(原題:Mixed Emotions)』へ突入した。

ストーンズもまたデザート・トリップに登場した他のアーティスト同様、新たな曲を披露して会場を盛り上げた。バンドはフェスティバル後まもなくリリースされるニューアルバム『ブルー&ロンサム(原題:Blue and Lonesome)』から、ジミー・リードのカヴァー『ライド・エム・オン・ダウン(原題:Ride ’Em on Down)』を演奏。さらにサプライズとして、ザ・ビートルズの『カム・トゥゲザー(原題:Come Together)』もライブで初披露した。まるで、1969年にストーンズがレコーディングした『レット・イット・ブリード(原題:Let It Bleed)』の代わりに自分たちが書いた曲であるかのように堂に入った演奏だった。ストーンズのステージの翌日、ニール・ヤングが若く勢いのあるバンド、プロミス・オブ・ザ・リアルを率いて『ハート・オブ・ゴールド~孤独の旅路~(原題:Heart of Gold)』や圧巻のギターを聴かせた22分間の『ダウン・バイ・ザ・リヴァー(原題:Down by the River)』などでオーディエンスを大いに盛り上げた。また、「ハンググライダーによる自爆テロリスト」などと歌う問題作『Neighbors』などの未発表曲も披露した。同10月8日には、ポール・マッカートニーがビートルズのメンバーとして初めて『ホワイ・ドント・ウィー・ドゥー・イット・イン・ザ・ロード(原題:Why Don’t We Do It in the Road?)』をヤングと共演した。1968年にリリースされたこの曲をマッカートニーがライヴで披露するのは初めてのことだった。

米大統領選の第2回直接討論会が行われた直後の10月9日、元ピンク・フロイドのシンガーでベーシスト、ロジャー・ウォーターズがデザート・トリップの最初の週を締めくくった。彼はピンク・フロイドの名曲と共に、政治色の濃いビジュアル・メッセージを含むステージをアメリカで初めて披露した。ハイライトは、『ピッグス(三種類のタイプ)(原題:Pigs (Three Different Ones))』を使った共和党候補ドナルド・トランプに対する容赦ない攻撃だった。バックには、同曲が収録されたピンク・フロイドのアルバム『アニマルズ(Animals)』(1977年)のアルバム・ジャケットに描かれた、ロンドンのバターシー発電所と煙の上がる煙突群のイメージを再現した。本番2日前にバックステージで撮影されたフェスティバルの予告編でウォーターズは、「このステージ制作には4ヵ月もかけたんだ」と誇らしげに明かしている。「これぞプロの仕事さ。バターシー発電所が砂漠のど真ん中に出現したら驚きだろ? 俺たちはそれをやってのけたのさ」。

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(Andy Keilen for Rolling Stone)

デザート・トリップは、ボブ・ディランやザ・フーを含むノスタルジックな出演アーティストや、1,599ドルの3日間通しチケット代と総額1億6000万ドルとも言われる空前の売上額が何かと話題にされた。しかしこのフェスティバルは、ロックの歴史の中で最も競争が激しく休む間もない怒涛の時代を生き残り、今なお現役のソングライターとして円熟味のあるステージを披露しているロックスターたちの饗宴だった。ザ・フーは、2014年から実施しているワールドツアーとほぼ同じセットリストを披露したが、『愛の支配(原題:Love Reign O’er Me)』や『無法の世界(原題:Won’t Get Fooled Again)』で聴かせるロジャー・ダルトリーの素晴らしいシャウトや、ロックオペラ『トミー(原題:Tommy)』のメドレーにおけるピート・タウンゼントのギターとザック・スターキーのドラムのぶつかり合いなど、おなじみのシーンであってもこれまでよりさらにパワフルなステージングを魅せた。ストーンズがビートルズのカヴァー曲を披露すれば、マッカートニーはアンコールに、ストーンズのイギリスにおける最初のナンバー1ヒット曲『アイ・ウォナ・ビー・ユア・マン(原題:I Wanna Be Your Man)』を返した。「実はジョン・レノンと僕が書いてストーンズにあげた曲だ」と紹介した。

10月7日の日没と共に始まったボブ・ディランのステージは、『雨の日の女(原題:Rainy Day Women #12&35)』や『追憶のハイウェイ(原題:Highway 61 Revisited)』など往年の名曲で始まり、やがて90年代のバラード『メイク・ユー・フィール・マイ・ラヴ(原題:Make You Feel My Love)』から最近の暗い曲『ペイ・イン・ブラッド(原題:Pay in Blood)』まで彼の歴史を辿る曲が並んだ。そして1965年に戻り、『廃墟の街(原題:Desolation Row)を電子楽器版で披露した。ステージの巨大スクリーンにディランの姿はほとんど映されず、古いニュース映画が流された。ステージが始まって数曲目で、モニターに映った自分の姿が気に入らないからと、ディランがステージのカメラを止めさせたとも言われている。

プロデューサーのドン・ウォズは翌日のバックステージでSirius XMのインタヴューに答え、「これまでで最高のボブ・ディランのステージだった。まったく無駄がなく、バンドも素晴らしかった。曲は必ずしもボブの考え方と一致しているとは限らないが、彼のグルーヴは何十年も続いている」と絶賛した。ストーンズのニューアルバムをプロデュースしたウォズはまた、ストーンズがステージへ向かう姿も見ている。「彼らはとてもリラックスした感じで、ステージを心から楽しんでいた」。ビートルズのカヴァー曲を披露したことに関しては、「たぶん、リハーサルの時に冗談半分でやってみたものの延長だったんだろう」と語った。

デザート・トリップ自体は実現不可能かとも言われた事業だったが、伝説のアーティストが集結した他にはない素晴らしいイベントになった。集まった6組のアーティストの内、ザ・フーだけが1967年のモンタレー・ポップ・フェスティバルと1969年のウッドストックに出演している(ニール・ヤングはクロスビー・スティルス・ナッシュ&ヤングの一員としてウッドストックに参加したが、映画への出演は拒否した)。ロジャー・ウォーターズは予告編用のインタヴューの中で、コーチェラ・フェスティバルのプロモーターGoldenvoiceの社長ポール・トレットが最初に出演を打診してきた2015年11月のことを振り返っている。「"週末のイベントにニール・ヤング、ボブ・ディラン、ローリング・ストーンズ、ポール・マッカートニー、ザ・フーがもし集まったら一緒にやるかい?"って言って、とにかく契約書でなくとも出演を確約した書面を欲しがったんだ。俺はその全員が「イエス」と言うだろうな、と思ったよ。だけど正式契約となると難しいだろう、とも感じた」。出演した6組の1日のギャラは1人あたり平均700万ドルで、デザート・トリップの総製作費1億ドルの約半分を占めたと見られている。

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(Andy Keilen for Rolling Stone)

出演者の平均年齢が72歳で、会場に用意された水洗トイレは1,000基以上という話は決して大げさな話ではなく、しかもデザート・トリップの会場は誰もが楽しめるイベントだった。アリーナとグランドスタンドに設けられた最上級の指定席にはクッションとカップホルダーが付き、ステージに最も近い場所に若者向きのスタンディング席が設けられた。高級飲食施設のDesert Trip Culinary Experienceにはエアコン付きのラウンジがあり、凝ったデザートを提供した。しかし、1日199ドルの自由席のチケットでもバーガーやクラフトビール、ベジタリアン料理からシーバスリーガルまで、さまざまな料理やドリンクを楽しめた上、広いロックの写真展にもアクセスできた。カリフォルニア州ポモナの独立系の音楽ショップGlass Houseが運営する期間限定のレコードショップでは、中古LPが3ドル程度、シングル盤が1ドルで販売された。

"デザート・トリップ2"に出演するアーティストの噂が既に広まっている。主催者のGoldenvoiceは2017年のイベントについてまだ何も公式に発表していないが、エルトン・ジョン、ブルース・スプリングスティーン、スティーヴィー・ワンダー、フリートウッド・マックなどの名前がまことしやかに流れている。一方、今年のトリップ参加者たちは2週に渡るイベント終了後、それぞれいつもの生活へと戻っていった。ディランは11月末まで続くツアーに出て、ザ・フーは来春まで予定が埋まっている。ストーンズはまもなく新しいブルース・アルバムを、ヤングは12月にアコースティック・アルバムをリリースする。そしてマッカートニーは新たな音楽に取り組み、ウォーターズは1992年以来となるソロ・スタジオ・アルバムをレディオヘッドのプロデューサー、ナイジェル・ゴドリッチと共に制作に取りかかっている。

ウォーターズは、「デザート・トリップでは、ギターを持った誰かが常に心を打つ曲を奏でていた。チケットが売り出された頃には、誰もこんな素晴らしいイベントになるなんて予想していなかっただろう。何せ実現できるかどうかも信じられないようなイベントだったからね。ここに参加できて本当によかったよ」と、最後に語っている。

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