「漠然とした不安」は書いて整理しよう

「漠然とした不安」は書いて整理しよう

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  • 更新日:2016/11/30
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■前向きな考え方が身につく「コラム法」とは

漠然と不安を覚えたり、無性にイライラしたりする……。さまざまな感情が入り乱れてモヤモヤすることはないだろうか。そんなときはいったん、自分の感情を整理してみるべきだろう。そこで有効なのが、感情を「書き出す」という手法。認知療法にもとづいたそのやり方を、精神科医の大野裕氏にうかがった。

■書くことは「自分に相談する」こと

将来への漠然とした不安や職場での人間関係の悩み……。現代のビジネスマンは、何に悩んでいるのかを把握できないほど、多くのストレスを抱えています。そんなときはまず、1つずつ悩みを書き出して思考を整理してみることをお勧めします。なぜなら、悩みは「思い込み」であるケースが多々あるからです。

私たちは日頃、ほとんどの判断を無意識に行なっています。すべて熟考していては時間がいくらあっても足りないからです。いわば「自動思考」によって判断・行動して、生活しているわけです。とくに、精神的に疲れているときほど、自動思考で情報を処理してしまいがちです。

しかし、自動的な判断は、基本的にマイナスの部分を大きく捉える傾向があります。そのため、心が疲れているときほど、漠然とした不安が大きく広がってしまうのです。

ここで、一度立ち止まって自分の考え=認知を客観的に振り返ってみると、意外なほどネガティブな感情にとらわれて、悪い思い込みをしていたことに気づけるのです。

誰かに相談できれば「考えすぎ」「心配する必要はない」などといった客観的な意見に触れることができますが、人に相談するというのは簡単なようで実はハードルが高いもの。あまりに悩みが深ければ相手も受け止めきれないからです。

そこで、書き出すことによって自分の気持ちや考えを客観的に見る「もう一人の自分」を作ることができれば、他人ではなく「自分」に相談できるようになるのです。

■書いていくうちに思い込みが見えてくる

こで「コラム法」と呼ばれる認知療法で、7つの質問事項を埋めていくことにより、「自動思考」を是正することができます。

まずは、現実に起きて問題となっている出来事(①状況)を記入します。次に、そのときの出来事に対する感情とその度合い(②気分)を記入します。そして、そのとき、出来事をどう捉えたか(③自動思考)を書き出してみましょう。この時点で「考えと事実が必ずしも同じではない」ことに気づける方も多いでしょう。

続いて、自動思考を裏づける具体的な事実(④根拠)を挙げます。さらに、自動思考によって出た結論と反対の事実(⑤反証)を書き出します。ここまで記入すれば、考えを整理することができ、客観的な見方ができるようになります。問題の本質にも近づいているでしょう。そして最後に、「もし?のように工夫したら改善できるのではないか」といったしなやかで前向きな考え方(⑥適応的思考)を見つけることができるはずです。「前向き」と言うと「悪いことばかりじゃないよ」といった楽観的な姿勢のことだと考えがちですが、本来の「前向き」とは、次のプロセスにつながる考えのこと。現実を受け止めたうえで、どう改善していくかを具体的に考えていけるようになることです。

適応的思考に辿り着き、なんとかできるかもしれないと考えられるようになると、⑦いまの気分は軽くなります。最後にそれを書き出します。

コラム法で考えを整理したら、適応思考でたどり着いた工夫を実践してみてください。もちろん、簡単なことからで十分。小さくても結果を出していけば、自信がついてきます。

■マイナス思考のスパイラルに注意を

反射的にネガティブな考え方をしてしまうことは、自然なことです。むしろ自動思考によって物事をマイナスに捉えることは、日常生活をつつがなく送るために必要不可欠とも言えます。

たとえば、家で怪しい物音が聞こえたとき。「泥棒かもしれない……」と警戒できなくては困ります。確かめてみたら勘違いだとわかるかもしれませんが、確かめなくては手遅れになる場合も少なくありません。

問題は、「ネガティブな考え方」ばかりにとらわれて、抜け出せなくなることです。一般的に、私たちは自動的にマイナスに物事を捉えて、その後で現実を確認しながら考えを修正していく機能を備えています。しかし、気力が落ちているときには、物事を精査する思考力も低下しているため、マイナス思考から脱出できず、過度に悲観的になってしまうのです。

さらに症状がひどくなれば、「自分はそれに対処できない」「人は助けてくれない」と考えてしまう。そんなふうに考えるうちに、現実がその通りに見えてくる。現実中心ではなく、自分の考え中心になって、心の元気がなくなるという悪循環に陥ってしまうのです。

そこで大事なのは、現実にきちんと目を向けること。コラム法を使って現実を客観視できれば、問題に対処する力が出ます。

そのときに、自分の考え方の特徴がわかると、行きすぎた考えにブレーキをかけて、冷静に現実に目を向けやすくなります。よくある自動思考のクセを上に示しましたが、こうした特徴は必ずしも悪いことではありません。それが行きすぎると辛くなるのです。

ですから、気持ちが動揺したときには、考え方が極端になりすぎていないか確認してみましょう。そうすれば、自分をより客観視できるようになります。

こうして、考えを整理することができたら、現実を見るだけでなく、自分のビジョンを明確にしていきましょう。この問題を乗り越えた先で、自分はどうなりたいのか。何を成し遂げたいのかを考えるのです。

せっかく書く習慣を身につけたのですから、将来の目標も書き出してみるようにしましょう。未来に希望があるからこそ、目の前の現実に立ち向かう勇気も湧いてくるのです

大野裕(おおの・ゆたか)精神科医
1950年、愛媛県生まれ。慶應義塾大学医学部卒業。コーネル大学医学部留学、ペンシルベニア大学医学部留学、慶應義塾大学教授を経て、現在は、独立行政法人 国立精神・神経医療研究センター認知行動療法センター長。医学博士。日本認知療法学会理事長。
著書に、『はじめての認知療法』(講談社現代新書)、『こころが晴れるノート』(創元社)、『不安症を治す』(幻冬舎新書)などがある。認知療法活用サイト「こころのスキルアップ・トレーニング:うつ・不安ネット」(ウェブ・モバイルともに http://www.cbtjp.net )を発案・監修している。(取材・構成:川端隆人)『The 21 online』2016年11月号より)

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