失ってわかった「めんどくさい」の有り難さ。原発事故被災地は今

失ってわかった「めんどくさい」の有り難さ。原発事故被災地は今

  • まぐまぐニュース!
  • 更新日:2017/10/11
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福島第1原発事故の被災者約3800人が国と東電に損害賠償を求めた訴訟で、福島地裁は10日「国は津波の到来を予見可能だった」などとして、国に東京電力の責任の1/2にあたる5億円を支払うよう命じました。この報道を受け、米国育ちで元ANA国際線CA、さらに元ニュースステーションお天気キャスターだった健康社会学者の河合薫さんは、自身のメルマガ『デキる男は尻がイイ-河合薫の『社会の窓』』で、未だ癒えぬ原発事故被災者たちの心の傷と「生の声」を伝えています。

原発訴訟と福島の声

「国と東電に賠償を命じる」ーー。

東京電力福島第一原発事故の被災者約3800人が国と東電に慰謝料や居住地の放射線量低減(原状回復)などを求めた生業訴訟の判決が昨日、福島地裁で言い渡されました。

原告側は政府が2002年に発表した地震に関する「長期評価」に基づき、「国と東電は大津波に襲われる可能性を予見でき対策を怠った」と指摘する一方で、被告側は「長期評価は確立した知見ではなかった。事故前には国は東電に対策を取らせる権限もなかった」と反論。

3月の前橋地裁では「津波は予見でき事故も防げた」と国と東電に賠償を命じたのに対し、9月の千葉地裁は「津波は予見できたが、対策を取っても事故を防げなかった可能性がある」と国の責任を認めず、東電だけに賠償を命じていました。

で、今回。福島地裁は前橋地裁同様の答えを出した。

3800人の被災者の人たちに“勝利したよ”と伝えたのです。

いろいろと意見があるかもしれません。でも、個人的には「良かった」と安堵しています。

だって、原発の事故は、たくさんの目に見えないものを奪ったのです。

あの事故のせいで日常が壊され、県外の私たちの想像を絶する“新たな日常”が始まったのです。

「ずっとめんどくさいって思ってたものが、ぜ~んぶなくなったの。めんどくさいがなくなったら、み~んななくなっちまった」

縁あって通い続けた福島県川内村の人たちは、いつもこう言っていました。

家族、親戚、ご近所ーー。どれもこれも「当たり前」の日常に存在するもので、ときにめんどくさい関係になったり、めんどくさい行事に付き合わなくてはならないもの。そのめんどくさいものがなくなって、その大切さが身にしみると。めんどくささの裏側に幸せがあったと嘆いていたのです。

ところがその人々を結びつけていた目に見えない“力”が、あの事故で壊された。

山に囲まれ、田畑が広がる川内村の人たちは、当事者の方たちでしか知り得ない苦悩と怒りと、悲しみを抱えていました。

川内村は原発事故の3月17日、村長の英断で全村避難し、その1年後「帰れる人から帰ろう」を合い言葉に、村長が帰村宣言。私は村長と報道番組でご一緒させていただいたときに、

「なぜこんなにも普通の生活に戻ることが難しいのか。インフラは役場でなんとかする。でも、村民たちの“川内村の誇り”が失われている。心の復興が必要なんです」

という話を聞き、「私にお手伝いをさせてください!」とお願いしました。

そして、村長との出会いから1年半あまり、高校の同級生の男子2人を巻き込み、月1、2回川内村に通い、「10年後の川内村を作ろう!」をスローガンに川内村民の若者たちと活動したのです。

しかしながら、“お手伝い”がいかに難しいのか。自分の奢りではないか。

そんな自責の念にかられることがしばしばありました。

村に通えば通うほど“目に見えないもの”の大きさを痛感し、村民の胸のうちを知れば知るほど、自分の微力さが恥ずかしくて。

「力になりたい」気持ちはあるのに「それが村民の方たちの力になっているのか?」がわからなくなっていったのです。

それでもなんとか一緒にがんばってくれるメンバーたちと、「川内村の人たちが10年後の川内村に残したいもの、取り戻したいものは?」という問いかけを村民に行い、村民の“声”をアンケートやミーティングで拾い上げ、今から4年前の12月に“川内村ドンドン祭り”を開催し、パネルディスカッションを行いました。

“ドンドン”とは、私たちの活動メンバーのチーム名で、「ドンドンやろう!ドンドン広げていこう!」という思いを込めてつけたもの。

そのリーダーだったTさんから、先日きたメールに書かれていた、“今の川内村”を紹介します。

東北被災地の復興特需的(?)なものは終わっている状況で、仙台の国分町付近でもお客が減り関西方面から来ていた業者(飲み屋さん)も、閉店し関西に帰る店が増えています。

川内村も除染作業が無くなり、人がかなり減りました。

私の運営しているファミリーマートも昨年の夏まで人がレジに長く繋がっていましたが、今はそのような光景も滅多にありません。

川内村では工業団地なども造成していますが、地元の人たちは「ホントに働く人が来るのか?」と、疑問を抱いています。

もちろん川内に根を下ろしてじっくり考えてくれる社長さんや企業さんであれば大歓迎なのですが、補助金目的の企業が多く、会社を作ったはいいが機能していない状況が繰り返されているので、地元の方は心配しています。

ただ、私はあまり悲観していません。

富岡町、大熊町、双葉町など福島の双葉郡、相馬郡(相双地区)は国道6号線を中心に多く仕事が確保され、人も入ってくるのではないかと考えています。

時間はかかるかもしれません。

でも、10年ぐらいでこの辺は充実した環境が出来るのではないか?と、考えているのです。

たぶん、以前住んでいた人とは別の人々が入ってきて新しいコミュニティができていくだろうと期待しています。

しかしながらその一方で、村も県もきちんとしたビジョンを示していないのが現状です。

本当に私たちの望む地域が“ここ”に完成するのか? という不安は尽きません。

薫さんと“ドンドン”で調査した内容が、本当に大切なものだと私は改めて確信しています。

その地域地域で誇りに思っていたもの、ふるさとだと思っていたものを生かし、その地域にふさわしいコミュニテイーは確保していかなければならないと考えています。近代的に便利になっていくことは良いことであると思いますが、守るべきものを守り大切にしていかない限り、自分たちの“川内”にならないと思うのです。

何のことかわからなくなってきましたが、また薫さんたちと飲みたいです。

昨日の判決を、今の壊れたものを取り戻す努力をしている人たちのことを知ってもらいたくて、今回は取り上げました。

この季節。福島のキノコは絶品です。まもなく新蕎麦も出ます。

是非、一度足を運んでみてください。

image by:Flickr

出典元:まぐまぐニュース!

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