英揚陸艦「アルビオン」北東アジア派遣のねらい 英海兵隊は何しに地球の裏側へ?

英揚陸艦「アルビオン」北東アジア派遣のねらい 英海兵隊は何しに地球の裏側へ?

  • 乗りものニュース
  • 更新日:2018/04/15

海兵隊の移動基地! 英揚陸艦「アルビオン」

2018年4月11日(水)、イギリスのウィリアムソン国防大臣は同国海軍の揚陸艦「アルビオン」が北東アジアに展開したことを発表しました。この「アルビオン」とは一体どのような艦艇で、その展開にはどのような意味があるのでしょうか。

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イギリス海軍の揚陸艦「アルビオン」。艦後方に備える甲板でヘリコプターの発着も可能(画像:イギリス国防省)。

「アルビオン」は、敵地への上陸作戦を専門とする海兵隊を乗せて移動し、彼らを洋上から目的地に展開させることを任務とするドック型揚陸艦という種類の艦艇です。そのため全長176m、幅28.9mという巨大な船体のなかには、船を動かすために必要な300名の乗員に加えて、256名の海兵隊員と戦車や装甲車などの各種車両や資材などを搭載することができます。

また艦尾には海兵隊員を海岸に上陸させるための上陸用舟艇4隻を収容するドックを備えていて、船体を後方に少し傾けてドックに海水を注水し、艦内から直接上陸用舟艇を発進させることができます。ヘリコプターを運用するスペースもあり、海と空から海兵隊員を送り込むことができるのです。

こうした能力を備える「アルビオン」は、まさに海兵隊の移動基地ともいうべき存在です。イギリス海軍はこのドック型揚陸艦を、「アルビオン」とその姉妹艦「ブルワーク」の計2隻保有しています。

「アルビオン」の派遣目的とは?

では、この「アルビオン」がなぜ北東アジアに展開することになったのでしょうか。これには以下のような理由があると考えられます。

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「アルビオン」が艦尾ドックを開放した様子。船体を少し後方に傾けているのが見て取れる(画像:イギリス国防省)。

まずは、他国との連携強化です。「アルビオン」は北東アジアに派遣されるあいだに、日本を含む様々な国との共同訓練を行う予定です。こうした訓練を通じてイギリスと北東アジアの国々との連携を強化することを目的としていると思われます。あとで詳しく説明しますが、イギリスは現在アジア太平洋地域での存在感を強めようとしています。今回の「アルビオン」派遣は、その大きな助けとなるでしょう。

さらに2018年4月現在の、北朝鮮情勢との関連も指摘できます。現在国際社会は北朝鮮による核/ミサイル開発をやめさせるために、同国に対する経済制裁を強化しています。しかしこうした制裁から逃れるために、北朝鮮は洋上で他国のタンカーや貨物船から、制裁対象となっている石油などの物資を密かに受け取る「瀬取り」という方法を用いていることが明らかになっています。そこで、こうした瀬取りを取り締まることで北朝鮮の核/ミサイル開発をやめさせるための国際的な努力を補完するといった目的もあるのではないかと思われます。

そもそもイギリスは、1950(昭和25)年に韓国と北朝鮮との間で勃発した朝鮮戦争において、韓国を支援するために組織された朝鮮国連軍の一員としてアメリカなどと共に参戦し、1953(昭和28)年の休戦以降も朝鮮国連軍司令部に要員を派遣しています。こうした背景から、イギリスはほかの欧州諸国のように北朝鮮情勢を遠い他国の話とは捉えていないのです。

イギリス海軍は「アルビオン」に加えて、さらに2隻の戦闘艦「サザーランド」および「アーガイル」を2018年内に北東アジアへ派遣することを決定し、すでにこの内の「サザーランド」は日本の横須賀に到着して海上自衛隊との訓練も予定されています。また「アーガイル」も、2018年の12月に日本を訪問する予定です。

イギリスのアジア太平洋地域に対するまなざし

実は、1年のあいだにこうして3隻ものイギリス海軍艦艇がこのアジア太平洋地域に展開するというのは非常に稀なことです。また、2020年代から本格的に運用が開始される最新鋭の空母「クイーンエリザベス」も、アジア太平洋地域におけるパトロール活動を行うとイギリスのジョンソン外相が以前発言しています。なぜイギリス海軍はこのように急速にアジア太平洋地域への艦艇派遣を強化し始めたのでしょうか。これにはおもに以下のふたつの理由が考えられます。

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「アルビオン」の姉妹艦「ブルワーク」。同型艦はこれら2隻のみ(画像:dennisvdwater/123RF)。

ひとつは、近年の中国による南シナ海における海洋進出への対応です。中国はその強大な経済力と軍事力を背景に、南シナ海における人工島の造成や軍事的活動の強化などによって、周辺国との軋轢(あつれき)を生じさせています。

こうした中国による活動は、イギリスにとっても無関係ではありません。南シナ海に面しているブルネイやマレーシア、シンガポールといった国々はイギリスと安全保障上の協力関係にあり、特にブルネイには少数ながら数百名規模のイギリス軍部隊が駐留しています。また、南シナ海は世界中の大型タンカーや貨物船が利用する海の道「シーレーン」となっていて、ここで何か問題が発生すれば世界経済に大きな影響を及ぼしてしまいます。こうした背景から、このような中国の強硬な姿勢に対して、イギリスはアメリカや日本と歩調を合わせて対抗していく考えを示しているのです。実際に、先に述べた「アルビオン」「サザーランド」「アーガイル」、さらに空母「クイーンエリザベス」は、中国に対抗するような形での南シナ海における活動の実施が予定されているとの報道もあります。

もうひとつは、アジアにおけるイギリス製兵器の輸出拡大です。近年アジアは各国の軍備拡張が盛んで、兵器輸出のための大きな市場になっています。そこでイギリスはこうした国々への兵器輸出を視野に、アジア太平洋地域に実際に軍艦や戦闘機を派遣することで自国の軍事的存在感を示し、こうした軍備拡張を図る各国に対して自国兵器のアピールを行っていると考えられます。特に島国が多いアジア太平洋地域では、大小さまざまな大きさの艦艇から、そこに搭載する装備品に至るまで幅広い海軍関連の兵器需要が期待できるため、今回の「アルビオン」のようなイギリス海軍艦艇の派遣は非常に大きな意味を持つことになるでしょう。

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