まさかの関東ゴールデン視聴率1位!NHKの躍進の陰にあるものは...?

まさかの関東ゴールデン視聴率1位!NHKの躍進の陰にあるものは...?

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  • 更新日:2016/12/01
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ドラマ番組部 部長 遠藤理史さん(51)/ドラマ番組部部長として朝ドラと大河ドラマを統括する。写真は来年公開の柴咲コウ主演「おんな城主 直虎」の撮影スタジオで(撮影/高井正彦)

「名作ぞろいだが、とっつきにくい」。NHKに何となくあったイメージは、過去のものらしい。生真面目さと、新進の情熱と。アラフィフ世代が今日も現場を突き進む。

11月、まさに「じぇじぇじぇ」なニュースがヤフートピックスを駆け抜けた。2016年度上期・関東地上波テレビ局のゴールデンタイム視聴率で日本テレビを抑え、NHKが1位に輝いたのだ。

なかでも朝の連続テレビ小説、通称「朝ドラ」は高視聴率が続いている。背景にはヒロインのテーマ設定がある。

ポイントは女性の社会進出と戦争体験だ。一時期はリアルな女性像を追求し低迷していたが、「ゲゲゲの女房」以降、「ひたむきに生きる女性」という原点回帰で復活を遂げた。メイン視聴者の50~70代女性には、現代で自己実現を目指す物語よりも、女性が働くことすら難しかった明治から大正、昭和の時代に、ヒロインが自立を求める姿や、過酷な戦争体験のほうがドラマチックで、新鮮だと歓迎されたのである。

●黒ひげ危機一発な…

朝ドラを担当するプロデューサーたちは、自らの置かれた状況を「黒ひげ危機一発」と呼ぶ。ドラマ番組部部長・遠藤理史(りし)さん(51)は言う。

「ヒットの法則なんて分からないけれど、同じことをやったらダメだということだけははっきりしています。誰かがナイフを刺したところにはもう刺せない。新しいことを探し続けます」

NHKドラマに新しい風を吹き込み続けているのがチーフ・ディレクターの井上剛さん(48)だ。社会現象になった「あまちゃん」の演出を担当。19年の大河ドラマでは五輪をテーマに、再び脚本家・宮藤官九郎とタッグを組むことが発表された。

最新作「トットてれび」では同局専属テレビ女優第1号となった黒柳徹子さんの青春を通して、テレビの草創期を描いた。当時の様子を精巧に再現したスタジオセットや衣装も話題を集めたが、テレビが娯楽の王者だった時代の空気を、井上さんは直接知らない。自分の想像力で表現しきれるのか、不安もあった。ただ、

「今を嘆いて、ノスタルジーに浸りたかったわけじゃない」

誰でも楽しめて「夢」のあるものを撮りたい。当時のテレビ業界が放つ熱や視聴者との関係性が、まさにそれだった。ドラマの中で、ある海外メディアのスタッフが黒柳さんやNHK職員に訴えかけるシーンがある。

「世の中を良くするのも悪くするのもテレビにかかっています。そんなテレビの無限大の可能性を引き出してくれるのは、放送に携わる皆さんです」

●SNSは“お茶の間”

黒柳さんはこの言葉を長年、大切にしてきたという。井上さんもまた同じ思いだ。一緒に仕事をするディレクターがほとんど年下になってきた今、気になっていることがある。

「僕が若い頃は人と違うことをやらねばと言われましたが、今は人と競うよりとにかく面白いことをやろうという方針だから、やれることは広がったはず。なのに若手は、面白さよりも、うまくそつなくやることを目指すタイプが多いように感じます。もっといろんな挑戦をしてほしい。僕もそんな姿を見せていきたいと思ってます」(井上さん)

NHKといえば、大河ドラマを忘れてはいけない。ポスター、告知イベントと、さまざまなPRを試みているが、若年層の支持が低いのが長年の課題だった。それを解消しつつあるのがSNSの存在だ。放送中の「真田丸」はツイッターのトレンド入りの常連。広報局戦略開発チーフ・プロデューサーの平岡大典さん(51)は「SNSは現代の“お茶の間”」だと言う。

「いろいろな情報を投入して盛り上げるのが我々の役目です」

小日向文世さん演じる豊臣秀吉の陣羽織が「派手すぎww」と話題になれば、衣装の専門家にインタビューして解説記事を掲載するという地道な戦略だ。

大河ドラマがこうしたSNSに力を入れるようになったきっかけは12年の「平清盛」だ。視聴率こそふるわなかったが、広報局の間では「ソーシャル大河」と呼ばれ、その年のツイッタートレンドのテレビドラマ部門1位を獲得。朝ドラ「あまちゃん」の「あまロス」「あま絵」現象も、実はSNS上の平清盛ファンの方が先行していたのだ。

「受信料払ってもいい」

「SNSでは番組の熱狂的でコアなファンを作ることを目指しています。最近注目しているのは声優さんやYouTube。こういうサブカルチャー的なものが大河のPRとして強いんです」と平岡さん。

直江兼続役・村上新悟さんによる直江状の朗読ムービーには「これなら受信料を払ってもいい」と歓喜の“悲鳴”も。SNSによる視聴者層の広がりを示す調査結果も出ているという。

絶好調にもかかわらず、局内で毎年議論になるのが「公共放送にドラマは必要なのか?」。前出の遠藤さんは、多様性を持ち、人生の最初から終わりまで楽しめるものを提供するのが、公共放送の役割だと考えている。

「その中に娯楽や物語というジャンルが絶対に必要です。私の息子がおなかすいた、眠いなど衣食住に関する言葉を覚えた次に『ご本読んで』と言ったのには驚きました。物語を読み、鑑賞するのは、人間のプリミティブな欲求の一つなんだと思います」

●文明未接触の密林住人

原始時代の壁画から野外演劇、小説、映画、ラジオと、物語を供するメディアは移り変わり、「その最後尾がテレビ」と遠藤さんは言う。いま興味があるのは、台頭しつつある新メディアへの転換期に、何をすべきかだ。

「触覚や嗅覚に訴えるメディアが生まれたら主流になるでしょう。そのときにテレビの前にお客を戻そうと躍起になって孤島に取り残されるより、新しい船に乗って次の物語を届けられるようにしたいですね」(遠藤さん)

予算や放送枠が少なくなり、冬の時代といわれるドキュメンタリーの分野でも、NHKの奮闘は目を引く。なかでも、大型企画開発センターのシニア・ディレクター、国分拓(こくぶんひろむ)さん(51)は、誰も見たことがない世界を見せてくれる人だ。主戦場はアマゾンの奥地。“最後の石器人”といわれるヤノマミ族と150日間同居したり、金鉱山で一獲千金を狙う男たちに50日間密着したり。文明と接触したことのない民族「イゾラド」の撮影にも成功している。どれも1999年に行ったアマゾンの環境問題取材で興味を持ったテーマだという。取材交渉も、現地で取材相手と心を通わせることも一筋縄ではいかないはずだが、

「どうして他の人ができないのか不思議です。NHKの名前もあんなところでは役に立たないし、恵まれているわけでもない」

と淡々としている。

「あ、でもそこにただじっといることが全く苦にならない性格だからできるのかも」

●無法地帯「居心地いい」

信条は、取材対象とは一定の距離を保つこと、こちらから仕掛けず、その場にゆっくりなじむこと。相手に言いたいことが生まれるまでひたすら待つこと。そうでなければリアルな言葉は出てこない。撮影は2、3人、安全の担保はグループで一番慎重な人に合わせるのもルールだ。

金を掘って暮らすガリンペイロたちに法はない。仲間うちで殺し合うこともある。国分さんも銃で脅されるなど、危険な目に遭っている。しかし当の本人は、「ブラジル人ってああいうヤンチャなところがあるから」と無頓着だ。金と女と酒を求めて欲望のままに人々が生きる無法地帯も「居心地がいい」。

法律やお仕着せのルールではなく、自分の基準で生きている、生きているように見える人間に強烈に惹かれるという。そして彼らを、ずる賢さのない「ピュアな男たち」と表現する。

文明と未接触の原住民へ、政府やNGOの介入が始まり、アマゾンも変わりつつある。番組を通じて私たちが思い知らされるのは、他人の掟に踏み込むことの結果と、文明の加害性だ。

「単純な善悪では割り切れないことを問い続けたい。それがドキュメンタリーだと思っています」(国分さん)

今回取材した4人中3人が、写真を撮るほんの数秒でさえ社員証を外すことをためらった。そんな生真面目さと、腹をくくって臨む常軌を逸した制作への情熱。この振れ幅が、多くの視聴者をひきつける番組の多様性につながっているのだろう。(編集部・竹下郁子)

※AERA 2016年11月28日号

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