巨漢NTTグループの梁山泊、ドコモベンチャーズが狙うもの

巨漢NTTグループの梁山泊、ドコモベンチャーズが狙うもの

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  • 更新日:2019/06/28
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「新しいものが好きで、人と話すのも好き、そして新しい場所に躊躇なく入っていける。私が社長になってから、意識的にそういう人材が集まりやすいようにしました」

そう語るのは、NTTドコモベンチャーズの稲川尚之社長。NTTグループのコーポレートベンチャーキャピタル(CVC)として2008年にスタートした同社は、新しいことを生み出すきっかけが見出せない大企業と、リスクをとって新しいビジネスを生み出そうとするベンチャー企業の橋渡しをするべく誕生した会社だ。

NTTドコモベンチャーズの稲川尚之社長

東京とシリコンバレーに拠点をおいて活動している。情報通信(ICT)分野を中心にこれまで100社を超えるベンチャー企業に、累計数百億円の投資をしてきた。

辞めても出戻ればいい

社員は、NTTドコモからの出向者。30代の若手社員が中心だ。シリコンバレーの自由な息吹に触れることで、転職する人もいるという。

「辞める人がいるのは会社として非常に悩ましいことだと思っていますが、一方で人材の流動性が高まることは良い面もあると考えています。例えば、以前シリコンバレーの拠点にいたエンジニアがグーグルに転職しました。その後、彼と話をする機会があったのですが、このように言っていました。『給料は倍になりましたが、仕事の忙しさも倍以上になりました』。じっくりと仕事に取り組むという点では、うちにいたほうが良かったという話でした。シリコンバレーのエンジニアの中にも、色々な選好があるはずで、そうした話が、外部に伝わっていくのは良いことだと思います」

さらに稲川さんは出戻りもあるべきだと話す。

「外部で経験を積んだ人がまた帰ってくるということも、あっていいと思いますし、人材の流動性が高まれば、以前ドコモにいたから、また一緒に仕事をしようなどということも起こるかもしれません」

CVCといえば、投資先から「金銭的リターン」を得るというよりも、本業における協業や新規事業開発におけるメリットを狙う「戦略的リターン」を求めがちのように思われるが、必ずしもそうではないという。

バッターボックスに立つことが大事

「リターンのターゲットはなにか? 金銭、戦略かの二元論となりがちですが、どっちかじゃないといけないのかという話ではありません。両方ほしいというのが、実際のところで、その中庸点を狙うことが大切です。

例えば、配車サービスのウーバー。彼らが誕生したときには、単なる白タクじゃないか、という見方がされていましたが、その時に出資していれば、金銭的に大きなリターンも得られたはずです。この世界で大事なことはバッターボックスに立つことです。それは、金銭か戦略かということではなく、投資家のサークルのなかに入るということです。そのコミュニティに入ることで、有望なベンチャー企業の情報が入ってくるようになるのです。シリコンバレーでは、特にこうした人脈の“深化”に注力しています」

今後、稲川さんが注目するのは、何といっても5Gだ。現在の4Gに比べて100倍の通信速度で、低遅延、さらにマルチに機器とつながることができるという、まさにIoT時代に欠かせない通信インフラとなる。

「5Gは、常につながっている状態にすることができます。ダウンロード、アップロード、ストリーミングがストレスなく行われ、また蓄積された情報をAIが瞬時に分析して情報を提供してくれるようになります。まさに一度体験するとやめられなくなる世界だと思います」

現在、ドコモベンチャーズが投資した企業の一覧が同社のホームページ掲載されているが、こうした企業を見ているだけで、近い未来に提供される(すでに提供されているものもある)サービスを想像することができてワクワクする。

例えば、「ORIGINAL STITCH」という会社は、シャツの記事、形状などいくつもの要素を個人がカスタマイズして注文することができる。

「RADAR」は、RFIDを使った無人決済や、在庫管理を行うサービスの開発を行っている。日本でも身近なところでは、ユニクロやGUなどで使用されているが、食品などへの活用は未だに行われていない。これが広がれば、コンビニ等での人出不足の解消にもつながるとされている。

このほか日本国内でも「電脳交通」という徳島の会社で、複数のタクシー会社の配車を一手に束ねて対応するというサービスを行う会社にも出資している。

それでもシリコンバレーが強いワケ

このところ、アメリカ国内に限らず、シリコンバレーをフォローする動きが出ており、中には「シリコンバレー疲れ」ということを言う人もいる。アメリカ国内では、シアトル、ニューヨーク、ボストン、さらに世界的にも、中国の深セン、東南アジアの主要都市、パリなどベンチャー企業を育成しようと積極的に動いている。

「アマゾンがいるシアトルが注目されていることはもちろん、シリコンバレーでも、サンフランシスコに回帰するという動きがあります。シリコンバレーは、グルーグル、アップルなど成功した企業の町になりつつあるからです。そのため、サンフランシスコ市内の雑居ビルなどにベンチャー企業が入居するといった動きがあります。それでも、シリコンバレー(サンフランシスコを含む)の、人・モノ・カネをひきつける力は、まだまだ衰えていません」

CVCとして金銭的、戦略的なリターンを得ると共に、シリコンバレーで揉まれた、ドコモの若手社員たちが、新しいビジネスを立ち上げる原動力となっていくことを稲川氏は期待している。

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