テレビ、単なる家具に...「放送時間にテレビの前に座る」習慣の消滅

テレビ、単なる家具に...「放送時間にテレビの前に座る」習慣の消滅

  • Business Journal
  • 更新日:2018/01/22
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昨年11月、インターネットテレビ局「AbemaTV」で放送された『72時間ホンネテレビ』の視聴数が7400万人超に上ったことは記憶に新しい。元SMAPのメンバーが出演していたとはいえ、これは驚異的な数字であり、世間でも大きな話題となった。

インターネットの映像コンテンツはAbemaTVのほかにも「TVer」「Amazonプライム・ビデオ」などがあり、これらも利用者を増やしている。

一方、地上波テレビ番組といえば、昨年大みそか放送の『NHK紅白歌合戦』の視聴率が歴代ワースト3位と奮わず、1月7日放送のNHK大河ドラマ『西郷どん』第1話の視聴率も歴代ワースト2位と、今まで高視聴率が期待できた番組の低迷が目立っている。

このような “地上波テレビ離れ”が起こっている背景には何があるのだろうか。立教大学経営学部教授の有馬賢治氏にマーケティングの視点から分析してもらった。

●“テレビだけ”視聴する層は激減

「テレビの低迷が叫ばれて久しいですが、地上波テレビ番組が軒並み視聴率を下げているかといえばそうではありません。ドラマでいえば前クールの『陸王』(TBS系)のように、高視聴率を獲得するドラマは散発的に出現しています。つまりテレビ自体が敬遠されているわけではないのです。ただし、視聴者のニーズは確実に変化しているといえるでしょう」(有馬氏)

かつては見たいテレビ番組がある場合、放送時間にテレビの前にいなくてはならなかった。しかし、録画が一般的になり、近年ではインターネットでの見逃し配信といったサービスも増え、番組を見るスタイルが多様化していると有馬氏。

「これだけオンデマンド配信が浸透すれば、視聴のために時間拘束を受けることを嫌うユーザーが増えるのも自然な流れです。さらに、以前記事でも紹介しましたが、調査したところによると、自宅で自由に過ごせる時間にテレビをつけていたとしても、スマホ、パソコンなどの機器を併用しながら視聴する人がとても多いことがわかりました。つまり、単独でテレビ視聴自体を目的としたユーザーは減少傾向にあり、テレビはBGV(バック・グランド・ビデオ)的役割へと変わっているのです」(同)

有馬氏とNTTコムオンラインが共同で調査したところによると、調査対象の20代から60代の男女の多くは「テレビとパソコン」、または「テレビとスマホ」を同時使用していることが判明している。

●テレビ一強時代が終焉し試される企画力

このような状況から、有馬氏は「今のテレビは家具のひとつになっていて、“集中して見る時代”から“流し見する時代”になったのかもしれない」と話す。もちろん、地上波テレビ局側も集中して見てもらえるヒット番組を制作するために試行錯誤はしている。最近ではテレビ東京の『池の水ぜんぶ抜く』という企画が業界に衝撃を与えた。

「現在、大手メディアはコンプライアンスや炎上を意識せざるを得ないという背景があります。他方、アイディア勝負の『池の水~』のような番組作りは容易ではありません。それに比べてネットテレビのオリジナル番組は、過激な内容や映像に対する自主規制が緩やかなので、視聴者の関心を集める番組を比較的つくりやすいというのが現状です。すると、今後地上波の番組は相当独自性を高めていかないと、いよいよ淘汰されてしまうことになりかねません」(同)

“淘汰される可能性がある”ということは、視聴者からすれば、地上波テレビはインターネットテレビ局も含めた“数多くの映像コンテンツの中のひとつ”にまで成り下がったということだろう。そして、コンテンツ自体の価値が近しいのであれば、より面白い内容を放送、配信する番組が選ばれる。ゆえに、社会的立場から思い切ったことがやりづらい地上波テレビは不利というわけだ。だが、その他の映像コンテンツが台頭することは、地上波テレビ業界にとって悪いことばかりではないようだ。

「今も昔も、『面白ければ見られる』『つまらなければ見られない』という根本的な構造は変わりません。今は見逃し配信などのネット経由のサービスも充実していますので、映像メディアを楽しむ人の分母は確実に増えています。話題にさえなればインターネットなど他のメディアから視聴者を誘導することができる現状は、テレビ業界にとってもある意味で好都合なのではないでしょうか」(同)

視聴する側からすれば、「テレビだから見ない」「ネットだから見る」という区別はなく、ただ面白いかどうかが視聴するかしないかの判断材料だ。地位にあぐらをかけなくなったテレビ業界。果たしてこれから視聴者を取り戻せるのか、それとも淘汰されてしまうのか。今後数年のテレビ制作者の姿勢に注目したい。
(解説=有馬賢治/立教大学経営学部教授、構成=武松佑季)

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