ミラン、3位浮上の実力は本物か? 知られざるフロントの功績とモンテッラ監督の緻密なマネジメント術

ミラン、3位浮上の実力は本物か? 知られざるフロントの功績とモンテッラ監督の緻密なマネジメント術

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  • 更新日:2016/10/20
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キエーボ戦の勝利に大きな手応えを感じていた本田圭佑【写真:Getty Images】

ミラン、連勝果たし3位に浮上。一体何が変わったのか?

ミランは現地時間16日に行われたキエーボ戦に勝利したことで、リーグ戦3位に浮上した。近年はリーグ戦でも上位に進出できず低迷が続いていたが、ここ5試合では4勝1分と好調を維持している。果たして、ミランの勢いは本物なのだろうか?(取材・文:神尾光臣【ミラノ】)

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「今日の試合は大きくて、ミランにとっては内容はどうであれ一歩前進する、もしかしたら今シーズンはすごくいい結果が出るのではないかっていうような、意味のある結果だったんじゃないかなって思います」

2日のサッスオーロ戦後、試合に出場のなかった本田圭佑は報道陣にコメントを残した。その際、リッカルド・モントリーボの交代でブーイングを浴びせたサポーターの行動を批判したことがクローズアップされてしまった(当人が強調したのだからこればかりは仕方がない)。

しかし彼は、チームのパフォーマンスにもポジティブな評価を残していた。これまではチームのサッカーに対してコメントをする際、厳しめの言葉も吐いていたのだが、この時は違った。

そしてミランはキエーボに勝ち、連勝を達成したのである。これで最近5試合で4勝1分け、順位は気がつけばローマと勝ち点で並ぶ3位に躍り出ていた。

次節は首位ユベントスと直接対決を迎える。勝ち点差が5あるため勝っても首位浮上とはならないが、上位争いの中に割って入ることはこれで確実となる。

この勢いは本物か。これまでと違い、果たして何が変わってきたのだろうか。

名参謀が残した2人の“置き土産”

まず戦力で言えば、純然とした新戦力は主力になりきっておらず、彼らの力でチームが変わったとは言えない。

セリエB得点王という実績を引っさげてペスカーラから獲得したジャンルカ・ラパドゥーラは、カルロス・バッカとの厳しいポジション争いに置かれている。またホセ・ソサも他の選手を押しのけてポジションを取るには至らず、モントリーボが故障した後のキエーボ戦も先発はならなかった。

その代わり、出戻りの選手が活躍している。本田とのポジション争いで先行しているスソは、半年間ジェノアでのレンタル生活で培われた勝負強さをそのまま新天地に持ち込んでいる。最近は得点に絡む仕事はさほど見せていないものの、攻撃のアクションに常に参与し、戦術的には欠かせない存在になっている。

ただ、重要な活躍をしている出戻りの選手はもう一人いる。アタランタのレンタルから戻ったCBのガブリエル・パレッタだ。クリスティアン・サパタの故障もあって駆り出されているが、プレーを続けるうちに安定。着実なカバーリングと粘り強いマークで、最終ラインを締める。特に第6節のフィオレンティーナ戦では、FWニコラ・カリニッチを完封するなど出色の出来を見せた。

実は彼らの活躍の陰には、ミランに長年貢献を続けた人物の存在がある。カルロ・アンチェロッティやマッシミリアーノ・アレグリらを助監督として支え続けたマウロ・タソッティである。彼はその後もクラブに残り、ミランから各クラブにレンタルされた選手専門のオブザーバーとして働いていた。

そして彼はパレッタについては、アタランタでの活躍ぶりを評価してチームに残すようフロントへ進言していたのだという。タソッティはアンドリー・シェフチェンコ監督の誘いでウクライナ代表の助監督となるが、パレッタはいわばその置き土産ということだ。

平均年齢はリーグ最年少。陰ながら再整備されていた育成部門とスカウト

活躍しているのは出戻り組ばかりではない。昨季からいた若手もそれぞれ急成長している。身体能力と技術は高い評価を得ながら、交通事故の影響もあって戦列を離れていたエムバイエ・ニアンは、ドリブル突破にゴールにと大車輪の活躍。

最終ラインで不可欠の戦力となっている21歳のアレッシオ・ロマニョーリは、パレッタとのコンビで安定感をつけている。先日はイタリア代表としてロシアW杯予選に参戦し、出場停止並びに故障で代表を離れたジョルジョ・キエッリーニの穴を堂々としたプレーで埋めていた。

さらに下部組織からは、GKジャンルイジ・ドンナルンマに続いて主力の座を奪う選手も現れた。19歳のダビデ・カラブリアは積極的な上下動でアピールし、一時期はイニャツィオ・アバーテやルカ・アントネッリを押しのけてスタメン出場を重ねた(現在は故障で戦線離脱中)。

そして人材難が叫ばれた中盤には、18歳のマヌエル・ロカテッリが台頭をし始めた。U-19イタリア代表の主軸としてU-19欧州選手権準優勝をもたらした若きレジスタは、シーズン序盤から少しずつ出場機会を得て、途中出場から中盤のポゼッションを安定させる役割として立場を確立。

そして7節のサッスオーロ戦では芸術的なミドルシュートで3-3の同点ゴールを決めた。キエーボ戦ではついに、右膝前十字靭帯断裂で戦列を離れたモントリーボの穴埋め役として中盤に底でフル出場。ドンナルンマよろしく、このまま定着を続けそうな勢いである。

この数年、ミランは陰ながら育成部門とスカウトの再整備に力を入れていた。プリマベーラなどではインテルやラツィオ、ローマなどの方が目立った成績を挙げていたが、結果をすぐに求めない方針で選手を育てていたのだという。この結果、現在のミランはセリエAで最も平均年齢の低いメンバーを送り込めるチームになった。

チームを束ねるモンテッラ監督の緻密なマネジメント術

もちろん、これらの戦力を束ねるヴィンチェンツォ・モンテッラ監督の手腕も無視はできないだろう。フィオレンティーナではイタリアには珍しい華麗なパスサッカーを実現させた指導者だが、ミランのサッカーを短時間でそのように変えることはまだ出来ていない。ただそれ以外の部分で、彼は監督としての才覚を見事に活かしてチームを束ねている。

フィオレンティーナ戦では、堅実なカウンター戦術で古巣相手を封殺する。さらにキエーボ戦では、緻密な守備からカウンターを狙う相手に対し、高い位置からのプレスでボールを奪い得点を重ねて勝利した。

戦術が各選手に浸透するキエーボは、実はホームで1月から負けていない。格下相手に中途半端に攻めにかかり、カウンターで脆くも破れることの多かった最近のミランからは想像できない姿だ。

前述のロカテッリの起用に見るように、いきなり若手を潰さないようにしながら戦力として使っていくマネジメントも上手い。サッカー指導者としてのモンテッラの本質は、華麗なポゼッションサッカーの実現というよりも緻密な戦術立案とチームマネジメントにある。とにかく攻撃を志向しながら、まとまりのあるチーム作りが両立できる監督をミランはようやく引き当てた。

首位ユベントスと比べれば、戦力には依然雲泥の差がある。だが今のミランは一体感がある。間も無く完了するといわれる経営譲渡を前に、ユーベ戦で良い試合を見せられれば、真の復興に向けて弾みがつくことになるはずだ。

(取材・文:神尾光臣【ミラノ】)

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