今こそ、がん患者と家族に読んでほしい必読の書 10冊

今こそ、がん患者と家族に読んでほしい必読の書 10冊

  • 文春オンライン
  • 更新日:2018/04/17

自分に残された時間を、どう生きていくか。
がん患者と、それを支える家族にとって最も切実なテーマだといえるでしょう。
そうした人々のこころに寄り添う必読の書10冊を、長年医療現場を取材し続けるジャーナリストの蒲谷茂さんが推薦します。

◆ ◆ ◆

わたしは40年にわたり医療記事を執筆してきた。なかでもがんについては書く機会が多く、たとえば近著『民間療法のウソとホント』(文春新書)では、手を出してはいけない「がんの民間療法」の見分け方を紹介した。それ以外にも、健康雑誌の編集、医療健康関係の単行本の制作、テレビの医療番組の制作など、長年、医療・健康情報にかかわってきた。そのため、がん患者や家族からよく相談を持ちかけられる。

取材の経験から、病気になっても、医者まかせではなく自分が治療の主役になって病気に立ち向かうことが大切だとわたしは思っている。

そこで、初めてがんといわれたとき、あるいは再発したとき、また、末期がんといわれたとき、いつでも力になってくれる本を紹介したい。がん関連の本は数多く出版されているが、患者だけでなく、家族も勇気がわいてくる10冊を選んだ。

生き残る側に行くには

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『ガンに打ち勝つ患者学』(グレッグ・アンダーソン 著)

がんといわれた友人、友人の家族にまず勧めるのは、『ガンに打ち勝つ患者学』(グレッグ・アンダーソン/実業之日本社)。

がんは、早期に発見され、治療がうまくいけば5年生存率が90%、末期の場合は30%などとよくいわれる。早期に見つかった人はほっとするだろうが、みな早期に見つかるわけではなく、再発もある。

ではどうすれば、生き残る側にまわれるのか。これが本書の肝である。

著者自身、肺がんで余命1カ月といわれている。それから、自分と同じように、ターミナル(終着駅)といわれた人たちまず500人に直接会いに行く。

その結果、がんのターミナルの状況に打ち勝ったがん患者には、共通のものがあることに気づく。みな自分が信頼できる医師に出会っているのだ。

この本を勧めた友人の話を紹介しよう。

わたしより年長で、放送作家をしていた、豪放磊落(らいらく)を絵にかいたような人。お酒も強く、タバコもよく吸っていた。彼が喉頭がんになった。

その時、この本を読んだ彼は何をしたか。もともと取材などで人の話をじっくり聞く習慣もあり、とにかく医師の話をわかるまで何度も聞いたのだ。治療の内容、期間、成功率、ほかの治療法との比較などをしっかり聞いて、選択していく。それで信頼が置けるとなったら、言うとおりにした。

その結果、選択した治療にも医師にも間違いがなく、今も元気に暮らしている。

あるがん専門病院の院長を取材した際、彼は治療の主役はあくまでも医師で、患者は主役ではないと言った。加えて、医師は患者の病気には興味はあるが、生活には興味はないとも言った。一応、患者中心の医療を心がけると大きく看板に掲げている医療施設だけに驚いた。もちろん、こう考えない医師もふえてきているが、これが多くの医師の本音だろう。

だから、とにかく質問し、きちんと聞くこと。選択に迷ったら、医者にその治療法を自分の家族にも行いますか、と聞いてみるといいだろう。

患者として主体的にがんに立ち向かうこと、これが基本になる。この本には、医師に対する具体的な質問などもあり、医師と話し合うときに役立つ。

1万5000人の末期がんからの生還者のあり方は参考になるはず。

いまいちばん勧める本

『がんに効く生活』(ダヴィド・S・シュレベール/NHK出版)。32カ国で翻訳され、全世界で100万部以上のベストセラーになった本だ。

この本の著者は精神科医。アメリカ・ピッツバーグ医科大学の精神科の教授であり、一方で同大学に西洋医学だけでなく、東洋医学や民間療法もあわせて研究する統合医療センターを設立した。

著者は脳腫瘍と宣告される。宣告後の自分のありよう、家族にどのように伝えるか、周囲の反応はどうだったかなど、自らの体験をくわしく述べている。

脳腫瘍といわれたあと、著者はがんはどのように起こるのか、防ぐ方法はあるのかについて、世界中の論文を精査し、専門医に会いにいく。そして、これらの検証の結果、生じてしまったがんに効く生活を提案しているのである。

たとえばWHO(世界保健機関)の事務局長が「がんの80%までは、生活様式や環境など、外部要因によるものと思われる」(国際がん研究機関の報告書の序文より)と述べているが、実際、胃がんを例にとると、食事が変化したことにより、その数は急速に減っている。

本書ではがんになったら、食事にはどのような注意を払えばいいのか、それが具体的に記されている。

うれしいことに著者は「以前から、日本の伝統的文化は、健康的な生活を送るうえで、世界中のひとつの基本になる」と述べている。

文化、とくに食文化に、わたしたちはもっと自信を持ってもいいだろう。しかし、あくまでも伝統的な食事であることを認識する必要がある。

食事以外にも、こころの持ち様などにも触れ、じつに示唆に富んでいる。

がんにかかり、もう治療法がないといわれたときほど大きなショックはないだろう。この本では、そうした状況でもそれまでの人生より輝く日々を送り、こころ穏やかに最期を迎えることができると説き、その方法も教えてくれる。

もちろん、それは特殊で特別な方法ではない。考え方を変えれば、誰でもできることなのだ。

がん患者だけでなく、その家族にもこの本をぜひ勧めたい。

がん患者に教わった本

「元気の出るがんの本」というシリーズを作りたいと思い、ある乳がんの患者に会ったとき、彼女に勧められたのが、『生きるための乳がん』(リリー・ショックニー/三一書房)である。

著者は、アメリカの乳がんセンター所長で看護師、そして乳がんの経験者だ。訳者も同じく看護師で乳がん経験者。最善の病院、医療者に出会うためにどうしたらよいかが、正確に書かれている。

どの病院でどの医師のもとでどんな治療を受けるか。訳者はそれを探すのに3週間かけたとある。乳がんは、進行が遅い。だから、納得いくまで十分調べることができる。この本を勧めてくれた彼女も3人の医師を訪ね、納得いく治療を見つけ、治療を受けて、いまや普通の生活を送っている。

乳がんを特別に取り上げたのは、なかなか医師に相談できず、そのうちに進行して、「なぜもっと早くこなかったの」と言われるケースが多いと聞いたからだ。乳がんが心配な人は、この本をすぐに買って読んで欲しい。家族に打ち明ける勇気、医師に質問する勇気が生まれてくる。

セックスについても書かれている。乳がんになったあと、パートナーとの性生活はどうすればいいのか。こうした情報は少ないだけに、参考になるだろう。

何なら食べられるか

次は実践的な本を紹介する。『抗がん剤・放射線治療と食事のくふう』(静岡県立静岡がんセンター・日本大学短期大学部食物栄養学科編/女子栄養大学出版部)だ。

がんの治療の中には、抗がん剤や放射線を使うものがある。抗がん剤は健康な細胞にも働き、不快な症状を起こす。放射線も当てる場所によってさまざまな症状が起こる。そのため食事がとれなくなる人も少なくない。この本では、吐き気、嗅覚の変化、口内炎、膨満感、開口咀嚼(そしゃく)障害など、症状別に、「食べられる食事」が紹介されている。

抗がん剤の副作用で食べられないようになった友人に、この本を紹介したら、とても喜ばれた。食べなければよくならないといわれるが、食べる気になれない。これはつらいものだ。対象となるメニューがすべてきれいな写真付きで紹介されている。見ているだけでも、これなら食べてみたいという気持ちになる。

静岡県立静岡がんセンターがつくった本だけに、内容にも信頼がおける。

こころの痛みに耐えかねたとき

ホスピスで働く、医師や看護師の間でよく読まれている本を紹介する。

『なぜ私だけが苦しむのか』(H・S・クシュナー/岩波現代文庫)。この本は、ユダヤ教のラビ(教師)によって書かれた。

著者には、あと10余年のいのちといわれた息子がいた。「早老症」という病気である。人より早く成長し、14歳で亡くなる。

なぜ、息子がそんな病気になるのか。なぜ不幸はわたしにだけ訪れるのか。

宗教家だけに、神を信じなければいけないのだが、神とは何か、問いはじめる。そして、答えを得るまでの過程がくわしく述べられていくのだ。

そのため、「なぜわたしはがんになったのか」とか、「わたしの人生は何だったのか」などという問いを考えるのに、この本は役に立つ。

聖路加国際病院の小児科の細谷亮太医師は、『今、伝えたい「いのちの言葉」』(佼成出版社)という著書の中で、幼くして亡くなった子どものがんの患者さんに何もできなくて、そばに立ちつくしていたと書いている。しかし、その子の両親は、何もできずに子どもの脇で立ちつくし、泣いている細谷医師を見て、何かほっとしたという。

困難に出会った人が、そこから立ち上がろうとしているときにそばにいるもの。神という言葉がいやなら、それは、自分をじっと見守ってくれるものと思えばいいだろう。

見守る側は、がん患者の理不尽な、そしてやり場のない怒りを受けとめることが重要なのだ。直接受けとめることをしなくてもいい。そばにいるだけでもいいのだ。

痛みは決して我慢してはいけない

実際の痛みについては、『がんの「苦痛」をとる治療』(石井典子・山内リカ/朝日新聞出版)をお勧めする。

がんは痛いという印象がある。がん治療を受けている患者の3分の1、進行がんの患者の3分の2以上の人が痛みを訴える(『がんの痛みからの解放―WHO方式がん疼痛治療法(第2版)』より)。しかし、医療用麻薬を適切に使えば、8~9割以上の痛みを取り除くことができるのだ。

がんは痛いのが当たり前と言うような医師は、認識不足、勉強不足とこの本ではいう。

わたしも肝臓がんの末期の知り合いから相談されて、家族といっしょに担当医に会ったときに、痛みを必ずとってもらうようにお願いした。できることはやりますといってくれ、実際、痛みは最期までほとんどなかったという。

痛みを我慢してはいけない。そして、これも重要なことだが、痛みをなくすことで治療成績も上がるのである。

この本は、こうした直接的な痛みだけでなく、がん治療で起きる様々な症状、抗がん剤や放射線治療による苦痛にも対処する方法が書かれている。

医療専門ライターが、あくまでも患者の立場に立って、懇切丁寧に解説している。

自宅でのケアの仕方

患者に自宅に帰りたいといわれて不安を覚える家族もいるだろう。そんなときに、強い味方になるのが『退院後のがん患者と家族の支援ガイド』(日本ホスピス・在宅ケア研究会編/プリメド社)だ。

患者と家族の意思が一致しない場合にどうすればいいのか、夜中に苦痛を訴えたときに家族にできることなど、具体的な状況別に細かい指摘があり、たいへん参考になる。

また、お金についての記述もあり、在宅治療を選択するときに一読を勧める。

がんといわれても明るく生きる

『「がん」はいい病気』(丸山寛之/マキノ出版)という本はとにかく明るい。

「しかし、まあ、なんとよく病気をするものだ。肝囊胞、前立腺がん、失聴、尿管がん。私は、学歴は貧しいけれど、病歴は輝かしく豊かなのである」

がんになるとともに、耳も聞こえなくなった著者。二重苦三重苦のはずなのに明るいのだ。

前立腺の病気は尿もれという厄介な症状を引き起こすが、著者も検査を受ける日に駅でトイレに間に合わず漏らしてしまう。本来なら、あまり書きたくないこともありのままに書いてある。シリアスなはずのがん患者の話なのに、わたしはあちこちで笑ってしまった。がんといわれたショックを受けとめるためには、こうした方法もあるのだ。

笑うということで、紹介したいのが『また もりへ』(マリー・ホール・エッツ/福音館書店)という絵本だ。

主人公の子どもが森の中でいろいろな動物と出会い、それぞれが自慢の「芸」を披露する。子どもは自分の番になると、逆立ちをするのだが、なぜかおかしくなって笑ってしまう。これが動物たちから「いちばん」だといわれるのだ。ほかの動物には笑うことはできない。人だけが笑える。

笑いは、他人はもちろん、自分も楽しくしてくれる。笑うふりをするだけでもいいといわれているが、がんといわれ、落ち込んだときにもちょっと笑うこともしてみたい。

落語を聞きにいくでも何でもいい、少しでも笑うようにつとめよう。人だけにできることなのだから。

もうひとつ、写真集。

写真ももちろんいいのだが、『星空の歩き方』(林完次/講談社)は写真の間にある文章もいい。この本は、「週刊文春」で連載していた山﨑努さんの書評で知った。

「夜空を見上げる……、星が瞬く。ただそれだけのことなのに、ゆっくりした時間が流れる」

こんな時間を大切にしていただきたい。

ダライ・ラマが、時間はすべての人に平等に流れる、自分の時間にすることも、楽しい時間にすることもその人次第といっていたが、がんになっても、自分の時間を大切にしてもらいたい。そのために、この本を紹介した。

がんといわれた人、これから治療を受けようとしている人、いま治療中の人、治療が終わった人。その家族。がんは、「新しい人」を生むといったのは、『がん患者学』(晶文社)の著者柳原和子さんだが、新しい生き方を身につけ、新しい人生を送ってもらいたい。

(蒲谷 茂)

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