駐輪場もシェアの時代へ。空きスペースを駐輪場にして不正駐輪を減らす取り組み

駐輪場もシェアの時代へ。空きスペースを駐輪場にして不正駐輪を減らす取り組み

  • ハーバービジネスオンライン
  • 更新日:2019/09/24

◆再評価される自転車、不正駐輪が増加すると懸念する声も

「めんどくさいからここ止めてしまおう」から始まる不正駐輪。誰しもが“してしまった”ことがあるもの。

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撮影:板垣聡旨

2017年に施行された自転車活用推進法。自転車は、環境と使用者の健康に良く、渋滞の緩和や災害時における利便性が高いため、政府が利用を推奨した。

これを機に、NTTドコモやソフトバンクグループ株式会社を始めとする大手企業は、シェアリングサイクル事業へ参入を始めた。自転車の使用頻度が高まる未来は、すぐ目の前まで来ている。

その反面、不正駐輪が多くなるとの不安の声が高まっている。この状況を打破するために、”駐輪場をシェアする”といった画期的な事業に取り組んでいる会社がある。その軌跡をたどってみる。

◆なぜシェア駐輪場の事業が生まれたのか その背景を追う

シェア駐輪場の事業名は、みんちゅうSHARE-LIN(以下、みんちゅう)。運営会社は、アイキューソフィア株式会社(東京都新宿区 代表:中野)。2017年7月にサービスを開始した。

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撮影:板垣聡旨

専用のアプリを使い、空き家や店舗、オフィスビルや民家が抱えている空きスペースを駐輪場として貸し出す。数台分のスペースの有効活用を目指し、「費用¥0ではじめる 駐輪場・駐車場経営」をテーマにサービスを拡大している。

代表取締役社長は中野里美さん。新卒でインターネット広告事業を手掛けている会社に入社し、代表秘書や営業を経験、27歳のときにアイキューソフィア株式会社を立ち上げ、代表取締役に就任した。

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提供:アイキューソフィア株式会社

みんちゅうのサービスを始めたキッカケは、営業時代に不正駐輪の現状を目の当たりにして、原因が駐輪場の少なさだと気がついたから。

「駐輪場の台数は私たちにはどうしようもできない。ダメ元でカラーコーンに『予約専用』と貼り様子を見てみると、不正駐輪をされることがなくなりました。これで駐輪場が成立するなら、空きスペースをどんどん運用していけばいいのではと考えました。

不正駐輪って止めたい場所に駐輪場がないのが大きな原因だと思うんです。不正駐輪されやすい場所に駐輪場を作ってしまえば、解決しますよね」

◆不正駐輪が起きるわけ シェア駐輪場は意味を成しているのか

事業を拡大するにつれて、みんちゅうは行政や企業と連携を進めてきた。2018年には、神奈川県藤沢市、大和市、東京都台東区、埼玉県さいたま市などと提携した。行政と関わるに連れて、「駅前の不正駐輪は、自治体に共通の悩みでは」と中野さんは気が付いた。

不正駐輪は、外観を悪くし、歩道を狭め怪我の要因になるなど、地方自治体に大きな悪影響を及ぼす。点字ブロックが塞がれるケースもあり、お年寄りや視覚不自由者が転ぶケースまであるとのこと。不正駐輪が増えるほど、その分苦しむ人が多くなる。

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撮影:板垣聡旨

社会的ジレンマといった心理学の用語がある。社会の成員は、社会全体の利益追求に対して、協力的行動か非協力的行動を選ぶことができる。非協力を選択した場合には、社会全体よりも個人が大きな利益を獲得することができるが、その分、社会は不利益を被る。

不正駐輪も同様に考えられる。不正駐輪をすると、駐輪した当事者は「利便性の高いところにお金を払わずに済む」という利益を受けられる一方、歩行者に怪我をさせる危険性が生じたり、街の景観を破壊したりするなど、社会に不利益を与えてしまう。

不正駐輪の研究は、都市社会学や社会心理学の分野で活発に行われている。不正駐輪問題の解消方法は、駐輪台数の増設といった構造的策略と、啓蒙ポスターを貼るといった心理的策略の2種類に分類されている。ポスターに描かれている内容によって効果が異なることがあるため、心理的策略には限界がある。

構造的策略を行えばいいのではという考えに至るが、金銭的な問題が壁として立ちふさがる。駐輪場を設置するには、数千万円単位のお金が発生するからだ。精算機や駐輪ゲートを一台置くだけでも100万円は軽く超え、その上人件費もかかる。気軽に行政が出せる金額ではない。

みんちゅうは専用のテープを地面に貼ることで区画を作り、看板を置くだけ。そこからの運用コストは、時たまみんちゅうの営業担当が様子を見に来るためゼロだ。

◆みんちゅうを使っている人に直撃 現場の人はどう感じているのか

実際に使っている人に聞いてみた。場所は明大前。この日は偶然にも、京王不動産が所有する明大前地下駐輪場が工事されており、みんちゅうが使用できない駐輪場の穴埋めをしていた。

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撮影:板垣聡旨

夕方17時になると、続々と人が帰路につきはじめ、明大前の改札は人混みであふれた。改札から出て歩いて2分のところに、みんちゅうの駐輪場はあった。収容台数はざっと40台。

世田谷区在住40代パート勤務の女性は、「今日が初めて、近いから良い。だけど、場所によって金額高いよね」と話す。みんちゅうはオーナーの裁量で場所代を設定できるため、高額な駐輪代もチラホラ。

工事関係者の50代の男性は話す。「営業担当の人がちょこちょこ様子を見に来るね。専用のデバイスを使い、きちんと使われているのかをチェックしている。でも不正駐輪はあるらしいね。登録せずに止めているみたい。何台の不正駐輪があったかと聞くけど、少ないんじゃない?」。

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撮影:板垣聡旨

現場の声は必ずしも肯定的なものではなかったが、ここまで来ると不正があるのは仕方がないものであり、不正の数は少ない。

社会学者のオルソンが指摘したフリーライダー問題というものがある。近代市民社会の発達において、「経済的や時間的なコストを払わずに、既存の社会システムの恩恵を受けるフリーライダーが出てくる」といったものだ。そう、不正駐輪をする自転車乗りはフリーライダーなのだ。

いずれにせよ、みんちゅうサービス注目度は高く、効果がかなりあると言える。今後のみんちゅうのサービス拡大に目が離せない。

【板垣聡旨】

学生時代から取材活動を行い、ライター歴は5年目に突入。新卒1年目でフリーランスのライターをしている24歳。ミレニアル世代の社会問題に興味を持ち、新興メディアからオールドメディアといった幅広い媒体に、記事の寄稿・取材協力を行っている。

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