“あえて”が人気 指定月に送る手紙が見せた家族の姿とは

“あえて”が人気 指定月に送る手紙が見せた家族の姿とは

  • AERA dot.
  • 更新日:2017/12/07
No image

鳴門海峡が一望できる高台に建つ「花見山・心の手紙館」。シダレザクラなど花の名所で、桜の季節は多くの人でにぎわう(花見山・心の手紙館提供)

SNSやメールが全盛のいま、あえて手紙を希望する年月に送るサービスが、ひそかな人気を集めている。人は、未来に届ける手紙にどのような気持ちを託しているのだろうか。サービスを提供する徳島県鳴門市の観光施設「花見山・心の手紙館」を訪ねた。

【写真】手紙は美しい景色を眺めながら、専用の封筒にしたためる

「母に会えたような気がしてここに来ることができて良かったです」

2016年秋、同館を訪れた男性が寄せ書き帳につづった言葉だ。亡くなった母親から届いた手紙が同館で書かれたものだと知り、訪れた。「ありがとうございます」。寄せ書きは、感謝の言葉で締めくくられていた。

「心の手紙書きました。届くのが楽しみです」

「3年後の自分へのメッセージを書きました。未来は見ていたいのに見る事は少しおそろしく感じています」

「夫の未来を願って手紙を出していただきたいと思います。受取ることができますように!」

寄せ書き帳には、来館者の思いが自由につづられている。

同館は、専用の便せんと封筒で書かれた手紙を預かり、1~5年後の書いた人が希望する月に、「心の手紙」として発送するサービスを行っている。2013年3月に始めたサービスは、メディアや口コミで話題となり、現在は、全国から多くの人が「未来への手紙」を書きに同館を訪れる。

これまでに受け付けた手紙は約5000通。手紙は耐火キャビネットの中で大切に保管され、指定された年月が来たら郵送される。同館の理事でアドバイザー、中野シゲ子さんによると、毎月数十通単位で手紙を発送しているという。

なぜこのようなサービスを始めたのか。きっかけは、同館の館長で不動産会社を経営する渡辺浩幸さんが、東日本大震災後の約3カ月後に参加した宮城県南三陸町でのボランティア活動だった。渡辺さんは、活動を通して「人と人との心のつながり、きずなが大切」だと感じ、「未来に届く手紙を出せたら、さらに思いやきずなが強まるのではないか」と考えたのだ。

そこで、約10年前に購入した、鳴門海峡を一望できる高台に建つ洋館に心の手紙館をオープンした。シダレザクラ約350本をはじめ、ツツジやサザンカといった季節の花々が植えられた周辺一帯は「花見山」として地元の人々に親しまれ、桜の季節には多くの人々でにぎわう。美しい景色を眺めながら、リラックスして思いをつづるのにぴったりの場所だ。

アドバイザーの中野さんによると、子どもからお年寄りまで、幅広い年齢層の人々が同館で手紙を書いていく。手紙を書く目的も、「自分あてに」「結婚記念日に着くようにしたい」「病気の友人を励ますため」などとさまざまだ。

中野さんは「赤ちゃんの足型をとって手紙に同封される方や、毎年のように来られて、お互いにあてて手紙を書き合うご夫婦もいらっしゃいます。仲むつまじくてうらやましいです」と話す。

ほほ笑ましいエピソードも多い。家族で訪れ、乗り気ではなかった父親が一番長い時間をかけて手紙を書いたり、夫婦で来て、妻が「家に持って帰って書く」と言う一方で、夫が「感謝の気持ちを一言だけ」とその場ですぐに手紙を書き上げたり、子どもが自分あてに、色鉛筆を使って上手な絵を描き、誇らしげに見せてくれたり。手紙を巡って、さまざまな人間模様が垣間見える。

泣きながら筆をしたためる人もいる。「日常から離れた空間で、美しい景色を見ながら書くことで素直な気持ちが出てくるのでしょうね。すぐに届くわけではないので、普段言えないことが書けるのだと思います」(中野さん)中野さんは、同館を訪れた娘夫婦と一緒に、孫あてに手紙を書いたそうだ。

同館が募集した無料体験モニターに参加した兵庫県の女性は、5年後の夫へ感謝の気持ちを書いた。結婚式の感動をつづり、「人は、時を経ると変わってしまいます。もちろん変わらないこともありますが、変わりたくないものほど変わってしまうと思っています。(中略)今のこの気持ちを5年後に伝え、またその5年後にも相手へ自分に伝えていきたいと考えています」と結んでいる。

同館は個人以外に、学校やクラス単位でも手紙を受け付けている。2015年には、東日本大震災の被災地、岩手県陸前高田市の小中学生が書いた約600通の手紙を預かった。3年間無料で保管し、18年3月に発送する予定だ。

サービスの利用料は、保管期間が1~3年後で1500円、4~5年後2000円。手紙はインターネットでも受け付けており、その場合は700円が加算される。重さが50グラム以内なら、写真や絵も同封できる。海外にあてた手紙は受け付けていない。

渡辺館長は「スマホとパソコンの時代にあえて(手紙を)書く。自分の字で書くと個性が出るし、受け取る側の思いも深まる」と“手紙の力”を力説する。あなたなら、誰に対して、どのような思いを未来に託すのだろうか。(ライター・南文枝)

この記事をお届けした
グノシーの最新ニュース情報を、

でも最新ニュース情報をお届けしています。

外部リンク

コラム総合カテゴリの人気記事

グノシーで話題の記事を読もう!
2018年の税制激変で「一番損する人」と「得する方法」
ヘビの毒を25年にわたって注射してきたパンクロッカーの体から35種以上の毒への抗体が取り出される
この絵をパッと見て、最初に何が見えた?心の奥底を探る心理テスト
「深夜に晩ゴハン食べる生活」を5年間続けた結果がエグい! 標準体型の人でもこうしてデブになる
「最近ブスが多い」 マツコが考える「ブスの増えた理由」に賛同の声
  • このエントリーをはてなブックマークに追加