自衛隊「空母いずも」の誕生で、日米vs.中国の対立は危険水域へ

自衛隊「空母いずも」の誕生で、日米vs.中国の対立は危険水域へ

  • 現代ビジネス
  • 更新日:2019/08/24
No image

「防衛計画の大綱」で空母への改修が決まった護衛艦「いずも」。当面は米海兵隊の垂直離着陸ができるF35B戦闘機と組み合わせて、日米共同運用されることになる。

海上自衛隊は3年連続して、「いずも」「かが」(いずも型二番艦)を含む護衛艦部隊を米中対立が深まるインド洋や南シナ海に派遣している。空母化される「いずも」と米軍のF35Bを組み合わせた日米合同部隊が同様の活動をするのは確実だ。

「いずも」の空母化により、日米vs.中国の構図が鮮明になる。

政治主導の「いずも空母化」

防衛省は来年度防衛費に「いずも」の空母改修費を計上するとともに、搭載するF35B戦闘機の調達費を盛り込む方針だ。ただ、空母化される「いずも」が21-22年度には運用可能となるのに対し、F35Bが米国から届くのは24年度以降となり、「いずも」とF35Bの就役時期にズレが生じることになる。

防衛省は2016年12月、「DDH(ヘリコプター搭載護衛艦)の航空運用能力向上に係る調査研究」と称して、自衛隊が保有していない新種航空機を「いずも」型を活用してどのように運用できるかアイデアを公募。防衛産業でもある造船会社のジャパンマリンユナイテッドが受注した。

18年4月に公表された調査報告書によると、調査対象の新種航空機はF35Bに加え、いずれも米国製の固定翼無人機「RQ21」、回転翼無人機「MQ8C」の3機種で、これらの運用について「いずも」型が「高い潜在能力を有している」と評価する一方、艦の改修などが必要と結論づけた。

つまり、防衛省は最初から「いずも」と米軍機を組み合わせた運用を模索していたのである。

No image

ヘリコプターを搭載した「いずも」(出典:海上自衛隊ホームページ)

この時点では防衛省にF35Bを購入する計画はなく、当然ながら「いずも」に自衛隊版F35Bを搭載して「自衛隊の空母」とする案までは検討していなかった。

空母化が急浮上したのは、昨年5月、自民党国防部会が空母保有を提言、首相官邸がこれを丸飲みして策定した「防衛計画の大綱」に「いずも」型の空母化が盛り込まれたからだ。空母「遼寧」に続く複数の空母を建造し、海軍力強化を急ぐ中国に対抗しようと考えた自民党防衛族と安倍首相が共振した。

だが、自衛隊にとっては時期尚早だった。予算不足から空母保有の検討は進まず、搭載する航空機を海上自衛隊、航空自衛隊のどちらが運用するのかさえ決めていなかった。

岩屋毅防衛相は「防衛計画の大綱」を閣議決定した昨年12月の記者会見で「海上自衛隊や航空自衛隊から具体的なニーズや要請があったのではない」と述べ、空母保有は自衛隊からの要請ではないことを明言。

そして「はたして、どのような連携をすることが最も適切か、これからじっくりと、海上自衛隊と航空自衛隊の間で検討していかなければいけない」と注文をつけた。

要するに、空母保有は「政治主導」で決めたが、「使い方は自衛隊で決めてほしい」と言っているのである。

政治家が「これで戦え」と武器を選び、「戦い方は自分たちで決めろ」と丸投げするのだからある意味、無責任の極みである。

「いずも」は米軍のプラットホームに

これを受けて、防衛省は「当初の防衛省案」に立ち返り、「いずも」を米軍のプラットホームとして活用する方針を固めた。今年3月、来日した米海兵隊のネラー総司令官に伝達したところ、ネラー氏は協力を快諾した。

米海兵隊トップの交代に伴い、8月に初来日したバーガー総司令官は21日、都内で記者会見し、「(日米の)どちらもF35を飛ばし、着艦可能な艦艇を持っていれば、運用は柔軟になる」と防衛省の構想を歓迎した。

さらに「自衛隊のパイロットが米海軍の艦艇に着艦し、米海兵隊のパイロットが海上自衛隊の艦艇に着艦する。これが最終目標だ」と述べ、日米が相互運用性を持つことを「最終目標」と明言した。

空母化される「いずも」を日米が共同運用する道筋は容易に想像できる。

No image

米軍のF35B戦闘機(Photo by gettyimages)

自衛隊の積極活用を意味する「積極的平和主義」を掲げる安倍首相の方針に従い、海上自衛隊が最近3年間続けている護衛艦のインド洋、南シナ海派遣に空母化された「いずも」をはめ込めばよいだけの話だからだ。

安倍首相は海外における武力行使に道を開く安全保障関連法を成立させ、同法は16年3月に施行された。それから5カ月後の同年8月、安倍首相はケニアで開かれたアフリカ開発会議(TICAD)で「(自由で開かれた)インド太平洋戦略(のちに戦略を構想に変更)」を打ち出した。

「インド太平洋構想」とは、表向きインド洋と太平洋をつなぐ地域の経済構想を指すものの、真の狙いは、この地域で影響力を増している中国を多国間で牽制することにある。

「最前線」インド洋、南シナ海へ

この構想を受けて海上自衛隊は、米国とインド2カ国による共同訓練「マラバール」に毎年参加することとし、「マラバール」は日米印の3カ国共同訓練に格上げされた。

3ヵ国共同訓練となって最初の「マラバール」は17年7月、インド南部チェンナイ沖で行われた。中国が提唱した経済・外交圏構想「一帯一路」のうち、洋上の「一路」の途上にあるのがチェンナイ沖である。

米海軍、インド海軍とも空母を参加させたことから、海上自衛隊は空母型護衛艦の「いずも」を参加させ、中国の潜水艦を想定した対潜水艦戦などを行った。

昨年は「平成30年度インド太平洋方面派遣訓練部隊」を編成、「かが」のほか、汎用護衛艦「いなづま」「すずつき」の3隻を8月から2ヵ月以上にわたり、インド洋や南シナ海へ派遣した。途中、潜水艦「くろしお」が合流し、南シナ海で初めて対潜水艦戦訓練を行った。

今年4月、海上自衛隊は「平成31年度インド太平洋方面派遣訓練部隊」を編成して「いずも」と汎用護衛艦「むらさめ」を南シナ海へ派遣、5月には米、印、比各海軍との間で、また米、仏、豪各海軍との間で計2回の4ヵ国共同訓練を実施した。

さらに「いずも」「むらさめ」に汎用護衛艦「あけぼの」を加えた3隻は6月に南シナ海で、米海軍の空母「ロナルド・レーガン」を中心とする米空母部隊との共同訓練を実施した。

こうして振り返ると、「専守防衛」の原則から日本近海にとどまっていた海上自衛隊の活動範囲が南シナ海、インド洋にまで広がったことが分かる。17年以降、毎年「いずも」「かが」のどちらかがインド洋や南シナ海に派遣されている。

安倍政権が空母化される「いずも」「かが」を「インド太平洋構想」に活用しないはずがない。自衛隊版のF35Bが届くまでの間、空母化される「いずも」と米海兵隊のF35Bを組み合わせて、慣熟訓練を兼ねてインド洋や南シナ海へ進出するのではないだろうか。

南シナ海は、南沙諸島、西沙諸島の環礁を埋め立てて軍事基地化を進める中国に対し、米国が駆逐艦などを両諸島へ派遣する「航行の自由作戦」を展開する、「米中対立の最前線」である。この海への自衛隊の進出は、米中対立に日本が進んで巻き込まれる意志を示すことと同義になる。

自衛隊と米軍「相互運用」の影響

今年7月、中国は南沙諸島から6発の対艦ミサイルを発射した。この時期に南シナ海に入っていた米空母「ロナルド・レーガン」への牽制とみられる。空母化される「いずも」の南シナ海派遣は、中国軍の標的となる覚悟が求められるだろう。

これまでも米海兵隊の垂直着陸輸送機「オスプレイ」が海上自衛隊の別の空母型護衛艦「ひゅうが」に着艦したことはあるが、F35Bは垂直離着陸する際の噴射熱が高く、どの護衛艦にも着艦できなかった。このため、「いずも」の改修は甲板の強化を中心に行われる。

「いずも」は米海兵隊のF35Bを搭載する米海軍佐世保基地の強襲揚陸艦「ワスプ」とほぼ同サイズのため、米軍機を搭載するのは難しくない。将来的には、逆に航空自衛隊のF35Bも米軍の強襲揚陸艦に搭載されるという相互運用性が模索されるだろう。

No image

米海軍の強襲揚陸艦「ワスプ」(Photo by gettyimages)

安全保障関連法は、これまで日本政府が武力行使の一体化にあたるとして禁止してきた「発進準備中の(他国の)航空機への燃料補給」を認めており、空母化される「いずも」と米海兵隊のF35Bを組み合わせることを可能にした。

安全保障関連法がなければ、平時における海上自衛隊の海外展開は実現せず、「いずも」と米軍機との組み合わせも想定できなかった。自衛隊の活動の幅が広がると同時に、米中の軍事衝突に巻き込まれる危険性も格段に増したことになる。

この記事をお届けした
グノシーの最新ニュース情報を、

でも最新ニュース情報をお届けしています。

外部リンク

政治カテゴリの人気記事

グノシーで話題の記事を読もう!
うそだったのか繰上げ都知事選挙、本当なのか7月実施 --- 中村 哲也
ローマ法王訪日を政治目的に利用するな!
「俺は命を張ってでも反対する」カジノ誘致と闘う覚悟を示した“横浜のドン”
党勢回復へ目標設定=赤旗読者100万人割れ「危機的」-共産中央委総会
悪名高い軍人・花谷正が語る、「ゴム人間」内田康哉外相が“満州国承認”を強行するまで
  • このエントリーをはてなブックマークに追加