水戸、「歴史を変える」ために挑む最終節。経営難、リーグ最少観客...危機を乗り越え、J2参入20年目で掴んだ昇格チャンス

水戸、「歴史を変える」ために挑む最終節。経営難、リーグ最少観客...危機を乗り越え、J2参入20年目で掴んだ昇格チャンス

  • サッカーダイジェストWeb
  • 更新日:2019/11/23
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観客数が1000人を切る時代もあったが、今季は平均6000人に迫り、40節の愛媛戦では1万人近くの観客を集めた。写真:滝川敏之

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最終節を残して8位につける水戸。プレーオフ圏内の6位甲府とは勝点差1。最終節は岡山との対戦だ。写真:滝川敏之

「歴史を変える」

それが今季の水戸の多くの選手の口から合言葉のように発せられてきた言葉だ。

今季の水戸は開幕から常に上位争いを繰り広げてきた。前節・鹿児島戦で敗戦を喫して、8位に順位を落としてしまったものの、J1参入プレーオフ圏内の6位とは勝点1差。最終節の結果次第でプレーオフ進出が決まる可能性を残している。

今季でJ2参入20年目の水戸にとって、J1昇格の可能性を残して最終節を迎えるのは初めての経験である。まさに「歴史を変える」ための一戦となる。

水戸の歴史は苦難の連続だった。00年にJ2に昇格を果たしたものの、経営難が続き、何度もクラブ存続の危機に立たされてきた。また、ホームゲームのスタンドは毎試合閑古鳥が鳴く状況で、毎年のようにリーグ最少観客数を記録。平日の試合では1000人を切ることもあった。

それでもクラブは「地域密着」を謳い、地道な活動を続けてきた。特に沼田邦郎社長が就任した08年以降、地域貢献活動に力を入れながら、地域との関係を深めてきた。今では地域貢献活動を年間850回以上行ない、さらに年間約350回も幼稚園や保育園特別支援学校等への「スポーツ教室」を実施してきた。地に足をつけた活動を続けた結果、多くの地元企業から支援を受けられるようになり、存続の危機から脱却することに成功した。
また、そうした活動を継続したことにより、観客動員も年々増加。07年には2415人だった平均観客数は、16年に5千人を突破。今季はすでに総観客数で16年の記録を更新しており、第40節愛媛戦では今季最多となる9874名の動員を記録。スタンドからの大きな声援が選手たちの背中を押し、勝利を掴み取った。そして、18年には念願の練習場「アツマーレ」が完成。村井満Jリーグチェアマンから「Jリーグ屈指」と称賛されるほど恵まれた環境で日々のトレーニングができるようになった。それも「地域」を大切にしてきた歩みの成果と言えるだろう。

そうしてクラブとしても、チームとしても力をつけていったことが、今季の快進撃につながっている。すでに過去最多勝点を記録し、リーグが22チーム制となってから初の勝ち越しも決めている。今季のチームはまさに「歴史を塗り替えてきたチーム」である。
ただ、この成績を収めることができているのも、「今までこのクラブを支えてきた人たちがいたから」と長谷部茂利監督は強調する。

「現状はクラブとして喜ばしいことだと思いますし、これからも右肩上がりによくなっていくと思います。今までいろんな苦難を乗り越えてきたクラブですから。大変な環境の中で選手もスタッフも頑張ってきてくれた。だから、今があるんです。今はこのクラブにはいないかもしれませんが、そういう方々のおかげで今があります」と思いを口にした。
だからこそ、「まだプレーオフに進出できるチャンスがあるので、そのチャンスを掴むために最終節は勝たないといけない。あとは周りの結果次第ですが、クラブとしての流れをそこまでつなげていきたい」と力を込めた。

苦しい道のりを歩いてきた。しかし、そうした日々は水戸にとって誇らしい過去である。すべてを糧に、水戸は歩みを進めてきた。今まで水戸のために戦ってきて人、そして、支えてきてくれた人の気持ちをひとつにして最終節に挑む。そして、新たな歴史を切り開く。

取材・文●佐藤拓也(フリーライター)

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