前澤友作を悩ますZOZO離れのウラで、もうひとつの「意外な真実」

前澤友作を悩ますZOZO離れのウラで、もうひとつの「意外な真実」

  • 現代ビジネス
  • 更新日:2019/05/21
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「ZOZO離れ」と「ZOZO離れない」

「ZOZO離れ」が経済ニュース的には話題のワードになっています。

ZOZOの株価は昨年7月の高値4875円から急落し、今年2月には1621円と一時3分の1で下落しました。この間、大手アパレルのユナイテッドアローズが自社ECの運営をZOZOから切り替え、12月にオンワードがZOZOでの販売中止を決定。ジーンズのライトオンもZOZOからの撤退を決めるなど、大手アパレルがZOZO離れをつぎつぎと表明しました。

背景としてはこれらのアパレルのブランド方針と相反するとされる安売り施策の「ZOZOアリガトウ」のスタートや、競合するPB商品への進出などが原因だとされています。前澤友作社長の炎上しやすいキャラクターともあいまって、メディアは一斉にこの苦境を書きたてている一方、消費者としてZOZOはいったいどうなってしまうのか心配されている方も多いかもしれません。果たしてZOZOはこのまま失速していってしまうのでしょうか。

結論を先取りすると、じつはZOZOはそう簡単には崩壊しません。今回の記事ではすでにたくさん報道されているZOZO離れを引き起こしている事象とは逆の、「ZOZO離れない」方向に働く別の力について詳しく書いてみたいと思います。そのうえでなぜZOZOが崩壊に向かわないのか、その理由をまとめてみたいと思います。

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〔photo〕gettyimages

さてこの「ZOZO離れない」という力とはいったい何でしょう。その正体はプラットフォームの引力です。

ZOZOTOWNはひとことで言えば数千万人規模の顧客と、多数のアパレルメーカーが集まる市場です。主要なアパレルが参加していて、同時に日本最大級の顧客が集まっているから、どちらにとっても非常に便利な場所になっている。これがプラットフォームです。

他にも読者のみなさんがよくお使いの食べログ(飲食店)や楽天トラベル(旅行)、ホットペッパービューティー(美容)といったサービスも同じメカニズムのプラットフォームビジネスです。

このプラットフォームビジネスには一般のビジネスとは違う、経済メカニズムが働きます。たとえて言えば太陽系で普通に見られるニュートン力学が、ブラックホールのような巨大な重力場の近くではゆがんでしまいアインシュタイン力学でないと説明できないのと同じような話です。

私はコンサルタントとしては大手プラットフォームの経営戦略をずいぶんいろいろと経験してきました。その経験で言うと、プラットフォームというものはなかなか簡単には崩壊させることができない性質を持っています。

プラットフォームの宿命

普通の星系では惑星が離れていくとともに星系が崩壊するような現象でも、プラットフォームでは逆の現象が起きることすらあります。実際の例を示しながら、ZOZOの未来に置き換えてそのメカニズムを解説してみたいと思います。

まず第一に「プラットフォームが顧客企業を怒らせる」といったことは、過去の歴史上何度も起きていることです。ZOZOだけが失敗してZOZO離れを誘発しているわけではありません。

たとえば楽天トラベルは、民泊が盛んになってきたことをビジネスチャンスととらえ2018年秋に民泊施設を楽天トラベルに掲載開始すると発表しました。グループ会社で民泊を扱う楽天LIFULL STAYがライバルであるAirbnbを追撃するためには有効な戦略だと考えたわけですが、当然のことながらホテル・旅館業界はこの楽天トラベルの方針に反発しました。

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〔photo〕gettyimages

このような現象はプラットフォームの宿命です。

プラットフォームの運営企業がプラットフォームに参加する企業を怒らせる現象は、プラットフォームあるあるといっていいぐらい頻繁に起きます。理由はプラットフォーム企業が成長するためには、どこかで取引条件をプラットフォーム側に有利に変更していかなければいけないからです。

そういった施策は常にプラットフォームの運営企業と参加クライアントの間に軋轢を起こします。ZOZOは企業としての弱点としては、こういった施策を顧客企業に呑ませることが上手くないようで、それが今回のような騒動を起こしているのですが、いずれにしてもひとつめのポイントは「これはよくあることだ」ということです。

次にプラットフォームに怒りを表明した企業についてですが、いろいろあっても最終的にプラットフォームを全面的に離脱する会社は多くはならないという結果になります。

秘密の会合

もちろん力のあるメーカーや飲食店などでプラットフォームと決別する企業は出てきますが、多くのプラットフォーム参加企業はそのプラットフォームの顧客引力のせいで離れられないものなのです。

そしてプラットフォームは顧客企業に対して、不満を起こした原因施策について詫びることが通例です。不明を詫びた上で、顧客企業がもっと儲かるような新しい機能やキャンペーンを提示することで顧客を懐柔する。すると顧客企業はさらにプラットフォームから離れることができなくなる。そういった現象が繰り返されます。

三番目に、このような現象を繰り返しながらプラットフォームはその引力をさらに強めていくものです。引力が強くなるにつれて、今よりももっとたくさんの顧客企業がプラットフォームを悪く思うようになっていきます。

これはある業界をほぼ完全に支配する状況になったプラットフォーム運営企業から聞いた話ですが、その業界には主だった顧客企業が集まる秘密の会合があるそうです。その会の名前は「プラットフォームのない世界」といって、メンバーが集まってはプラットフォームの悪口を言い合うだけの負け犬の遠吠えのような会が繰り返されているといいます。

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〔photo〕iStock

このようにプラットフォームというものは、顧客と軋轢を繰り返しながら、結局はその巨大な集客力を力に業界を支配していくもので、それを壊すことは非常に難しいものなのです。

さてZOZOの場合はというと、もともと顧客企業である大手アパレルが苦手としている受注後の物流ハンドリングに物凄くいい投資をして成長した企業です。ただのプラットフォームではなく、他の競合がマネできない強みを持っている。ここにひとつの優位性があり、ZOZOの崩壊をさらに難しいものにしています。

さらに10代から30代の女性を中心としたカスタマー(消費者)からダントツに支持されている。この強みはなかなか揺らぐことはありません。

ただこれは前澤友作社長のクセだと思うのですが、プラットフォームでありながら、過度に消費者の側の肩を持つ傾向がある。

ZOZOはそう簡単に崩壊できない

たぶん社長の周囲にもそのような社風が好きな人材が集まっている。その分、他のプラットフォームのように、二枚舌を使い分けて顧客企業を懐柔する能力が高くない。ないしはそういったオトナの経営に興味がないのかもしれません。

そのことと前澤社長の特異なキャラクターとがあいまって、マスコミからは恰好の炎上の対象になっている。ただそこはこの問題の本質ではありません。

本質はZOZOTOWNの実態が強大なプラットフォームであり、かつ消費者が強くそのプラットフォームを支持しているという点です。

ですからこの後、よほど大きな失策をしない限りは「ZOZO離れない」側に働く引力の方が「ZOZO離れ」よりも強く働き、思ったほどZOZOは痛手を受けないという結果になると思われます。

あくまで実経験をふまえた経営コンサルタントとしての分析ではありますが、ZOZOTOWNが崩壊するのはそれほど簡単ではないということです。

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