「マーケティング4.0」を読み解く 顧客がブランドの伝道者になる時代

「マーケティング4.0」を読み解く 顧客がブランドの伝道者になる時代

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  • 更新日:2017/12/07
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デジタル時代のマーケティングに必要なことは?(※写真はイメージ)

スマホやSNSなどのデジタル技術が普及し、消費者の行動が変わった。どんな企業が成功を収めたのか。第一人者のコトラー教授が最新理論を語った。

【図解】コトラー理論・変化するマーケティング4段階の姿とは

*  *  *

ある経済圏で、顧客を満足させ、つなぎとめる企業が増えれば、資本主義はよりよく機能します。企業は、こうした顧客の変わらぬご愛顧、あるいは自社ブランドの力を通じて、成功を実感するのです。それには経済的、社会的、感情的といった多様な価値の提供が必要になります。顧客に向けてどのような価値をつくりだし、伝え、提供していくか。これが企業の経営戦略の焦点であり、思考の出発点。一言で表現すれば、「マーケティング」です。

――米国の名門ノースウェスタン大学ケロッグ経営大学院のフィリップ・コトラー教授は、そう断定する。「マーケティングの神様」とたたえられるコトラー教授は、経済全体と連動して変化するマーケティングの姿を4段階に体系化した。最新理論「マーケティング4.0」は著書『コトラーのマーケティング4.0』(朝日新聞出版)で詳しく解説されている。

『4.0』を執筆したのは、企業をインターネットやデジタルの時代にすばやく移行させる目的です。これまで、マーケティング情報を伝えるのに新聞、雑誌、ラジオ、テレビといった従来メディアを経由していました。ところがデジタル時代には、フェイスブック、グーグルプラス、インスタグラムなど、いままでにない基盤が登場しました。

しかし、企業では活用が遅れています。多くの企業では、対応は「デジタル専門家」と思われる人物を1、2人採用するのが相場と決まっています。少額の予算を与え、好きにやらせる。仮にうまくいくことがあれば、予算をちょっと増やす……。

それに引き換え、先頭を走る企業、たとえば日用品を扱う米P&G(プロクター・アンド・ギャンブル)は予算の35%をデジタル領域に振り向けました。

加えてデジタル時代では、単に情報を伝える経路が変わるだけではありません。

――『4.0』を監訳した早稲田大学商学学術院の恩藏直人教授は、最新理論でもっとも興味深い考察のひとつに「カスタマー・ジャーニー」(顧客の旅)の変化を挙げる。消費者は商品を知ってから、どのようなルートをたどって商品を買うのか。コトラー教授は「認知」「訴求」「調査」「行動」「推奨」とした。

これまでのジャーニーは、顧客が一人で商品を調べ、どれを買うか決めていました。相談する相手も、家族や友人など少数に限られます。きわめて個人的なルートでした。

一方でデジタル時代のジャーニーでは、顧客は商品を「認知」したあと、「訴求」される少数の候補に的を絞り、「調査」をします。顧客は互いにネットで積極的につながっており、質問したり推奨したりする関係を築いていることが役に立ちます。

そして商品購入という「行動」を経て、「推奨」に至ります。大好きなブランドを自発的に「推奨」する。肯定的なストーリーを他者に語り聞かせ、伝道者になるのです。これが別の顧客の「調査」に影響を及ぼします。

このルートを企業からみれば、SNSをはじめデジタルの道具を活用することで、顧客や市場全体の動向を調査する能力を高めます。個々の顧客には、それぞれの好みに合わせたメッセージを送れます。世界中の顧客に拡散するように願いながら。

先ほどのP&Gでは最終的に、マーケティング予算はデジタルメディア向けと従来メディア向けで半々になるでしょう。「認知」「訴求」の段階では、どちらのメディアも必要だからです。

つまり、「4.0」の本質は、オンライン(デジタル世界)とオフライン(現実世界)の統合。これによって、企業は最大の価値を生みだします。米百貨店メイシーズでは、店舗とスマホのアプリを両方とも使う顧客は、店舗のみを利用する平均的な顧客と比べて商品の購入額が6倍にのぼると判明しました。

もうひとつ、米アマゾン・ドット・コムの例もあります。現実の店舗網を強化するのに食品スーパーの米ホールフーズを買収しました。今年の感謝祭には、ホールフーズの店頭でAI(人工知能)搭載スピーカー「エコー」を販売。声で指示するだけで買い物ができる製品です。これでアマゾンは店舗、オンライン、音声という買い物の主な選択肢すべてを手中に収めました。

ここにきて、企業が社会的責任を果たすように求めた「3.0」も重要になってきました。

企業が経済的な利益を分配する際に、投資家ではなく従業員や取引先を重視する動きが盛んになったからです。利益を経営者や投資家が吸い上げるだけではなく、従業員や取引先に流さなければ、消費者が購買力を失ってしまいます。

貧しい消費者が増える経済システムは時限爆弾のようなもの。従業員や取引先も含めた利害関係者全体が利益を共有する資本主義への転換が求められます。そうなれば、「4.0」と「3.0」以前の理論が相乗効果を発揮して、「2+2=5」が実現できるのです。

(編集部・江畠俊彦)

※AERA 2017年12月11日号

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