愛甲猛が震えた星野仙一さんの壮絶な怒りと優しさ...パイプ椅子を壁に突き刺し、あふれる愛情

愛甲猛が震えた星野仙一さんの壮絶な怒りと優しさ...パイプ椅子を壁に突き刺し、あふれる愛情

  • Business Journal
  • 更新日:2018/01/11
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「ショックだ…早すぎるだろ。ドラゴンズ時代5年間お世話になった恩師。最高の監督さんだった。慎んで御悔やみ申し上げます。合掌」

闘将・星野仙一(享年70)の死に際し、愛甲猛氏はツイッターでこのように追悼した。愛甲氏は現役時代の晩年を中日ドラゴンズ・星野監督の下で過ごした経験を持つ。そんな愛甲氏に、星野監督との思い出を振り返ってもらった。

●敗戦後に激怒、壁に突き刺さったパイプ椅子

「ロッテを自由契約になった1995年秋、移籍先が決まらず『俺の野球人生も終わりかな』と思っていたところに、星野監督が『今すぐ(キャンプ地の)沖縄へ来い!』と言ってくれて。ロッテ時代、首脳陣ともめて嫌な思いをしたんだけど、星野さんは『腹が立ったら怒る。うれしかったらほめる』と裏表がなく、もっとも野球がやりやすい監督さんだったね」(愛甲氏)

“闘将”と称された星野監督だけに、腹が立ったときの怒り具合はすごかったそうだ。

「ピンチの場面でコーチを介したバッテリーへの指示が星野監督の意向と異なり、打たれて敗れた東京ドームでの巨人戦後。コーチ陣を(常宿である)赤坂プリンスホテルのミーティングルームに呼んだんだけど、『指示ははっきりとせぇ!』と叫ぶや否や、パイプ椅子を壁に投げつけて。しばらく、パイプ椅子の4本足が壁に突き刺さったままだった。あんな光景、初めて見たよ(笑)。

勝負せずにフォアボールを連発したピッチャーが鉄拳制裁を食らうなんて序の口で、監督室にある湯飲み茶碗も星野さんが怒るたびに割れるので、いつしかプラスチックに変わっていたね」(同)

星野監督がもっとも闘志を燃やす巨人戦に負けた後など、移動のバス車内はお通夜状態。誰も口をきかなかったそうだ。

「そんな状況に耐えられないのか、バスの運転手さんが一刻も早く赤坂プリンスホテルに到着させるべく、皇居周辺を“暴走”していたね。横浜スタジアムでのゲームが地元の祭りとぶつかってひどい渋滞だったとき、イライラした星野さんが『ここを通れ!』と指示したんだけど、それは一方通行の逆走。さすがに、運転手さんも『勘弁してください!』と言ってたっけ」(同)

●「タケシ、勝負や!」…初めて感じた武者震い

かつて、星野監督は「選手を信頼はしているが信用はしていない」と語っていた。

「信頼して打席に送るが、信用していたら結果が悪かったときにガックリくる、というわけで、『なるほど』と思わされたよね」(同)

移籍2年目、星野監督から代打転向を言いわたされた愛甲氏は、試合途中でブルペンに入ってリリーフ投手のボールを目に焼き付けるなどの“準備”を行い、多くの場面で星野監督の期待に応えた。

97年9月28日。巨人のバルビーノ・ガルベス投手に8回までノーヒットに抑えられていた星野中日は、9回に代打・愛甲氏を打席に送った。ガルベスのキレのあるシュートを打てるのは「逆らわないバッティング」の愛甲しかいない、という指揮官の期待に応えて、見事にセンター前へ運んだ。

99年のリーグ優勝は、まさに星野監督の腕がなせる業だった。

「試合に勝つと『ありがとう。あともう少しや!』と言われて、疲れも吹き飛んだよね。不思議なもので、優勝が近づくにつれて、打席に立っている選手に『打て!』と心から願っていたんだ。代打としての出番がなくなってもチームの勝利を願う自分がいたんだけど、そんな心持ちにさせてくれたのも星野監督の魅力があってこそだったね」(同)

マジック1で迎えた神宮球場でのヤクルト戦では、プロ人生で初めて武者震いを感じたという。

「1点ビハインドでランナーが1人、という場面で『タケシ、勝負や!』と檄を飛ばされて。つなぐことを意識して打席に立つと、なぜか『勝負球はフォークだ』と予感でき、ライト前に運んで同点打を打てた。ベンチのムードは最高潮だったけど、あのときのムードもすべて星野さんがつくり上げたものだった」(同)

「ロッテの顔」から「中日の代打の切り札」となった愛甲氏は、この年.387の高打率で優勝に大きく貢献した。

●活躍した翌日、監督室に呼ばれて渡されたもの

選手の妻の誕生日に花束とメッセージカードを贈るというのも、星野監督の優しさが表れるエピソードだ。愛甲氏は、今でも当時のメッセージカードを大切に保管している。

「厳しさだけでなく、優しさと愛情に満ちあふれていた方だった。タイムリーヒットを放った翌日、監督室に呼ばれると、亡くなったばかりの奥さんの形見の宝石をいただいた。『ちゃんとカミさんにやれよ。ほかの女にやるんじゃないぞ』なんて笑いながら言ってくれたけど、『家族を大切にせぇ』という口癖は、今も僕の脳裏に焼き付いて離れないよ。あらためて、監督さんのご冥福を心よりお祈りいたします」(同)
(文=小川隆行/フリー編集者)

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