【映画評】伊藤くん A to E

【映画評】伊藤くん A to E

  • アゴラ
  • 更新日:2018/01/15
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©「伊藤くん A to E」製作委員会

アラサーの脚本家・矢崎莉桜は、5年前に手掛けたドラマが大ヒットし売れっ子になったものの、今は新作が書けず落ち目になって焦っている。自分のトークショーに参加した4人の女性たち(A~D)の恋愛相談に乗るフリをして、次回作のネタにしようと企む莉桜の前に、彼女が講師を務めるシナリオスクールの生徒で、見た目はいいが口先ばかりの軽薄な青年・伊藤誠二郎が現れる。彼こそ4人の女性たちを振り回している伊藤だった。伊藤は、自分に関わる4人の女たちの物語の企画を提出しようとしていることが判明。そこには莉桜のネタにはない5人目の女(E)も登場していた。伊藤の狙いは一体何なのか。莉桜は次第に追い詰められていくが…。

関わる女性たちを不幸にするイケメン青年と彼に振り回される女性たちの姿を描く異色の恋愛ドラマ「伊藤くん A to E」。原作は柚木麻子の小説で、TVドラマ化もされているが、劇場版では岡田将生演じる“痛男”と木村文乃扮する“毒女”のW主演として再構築している。女たちを振り回す伊藤は、容姿端麗、自意識過剰、無神経、童貞、フリーターでナルシストというとらえどころのない異質のモンスターだ。だが物語は、どうしようもない伊藤を非難はしない。落ち目の脚本家・莉桜が、自分も含めた女たちの本音を通して、伊藤を克服すべき象徴ととらえていくプロセスが面白い。

伊藤にぞんざいに扱われる都合のいい女・A。伊藤から執拗に言い寄られながら自己防衛を貫く女・B。男を切らしたことがない美女ながら愛に飢える女・C。伊藤に処女が重いというという理由でフラれ自暴自棄になるヘビー級処女・D。それぞれキャラが立っているが、誰もがみっともなくて痛いのは共通している。そんな女たちを軽蔑しつつ脚本のネタにするため、もっと無様になるように導いていた莉桜もまた、伊藤の存在によって自らの欲望や欺瞞といった毒を吐き出していく。こうなるともはやラブストーリーではなく、現代社会を投影した人間ドラマだ。しかも身勝手な伊藤が周囲を振り回すのは、自分が傷つくのを防ぐためというのだから、これもまた現代の若者の一面を表している。物語は予想もつかない流れになっていくが、見終わってみれば、どんなに無様でも、どんなに傷ついても、懸命に前を向こうと頑張る女性応援ムービーという印象が残った。軽いトレンディードラマに見えて、なかなか噛み応えのある小品である。
【65点】
(原題「伊藤くん A to E」)
(日本/廣木隆一監督/岡田将生、木村文乃、佐々木希、他)
(痛い度:★★★★★)

この記事は、映画ライター渡まち子氏のブログ「映画通信シネマッシモ☆映画ライター渡まち子の映画評」2018年1月13日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方はこちらをご覧ください。

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