「99パーセント抜けるドリブル」って何? “ドリブルデザイナー”岡部将和に訊いた極意

「99パーセント抜けるドリブル」って何? “ドリブルデザイナー”岡部将和に訊いた極意

  • サッカーダイジェストWeb
  • 更新日:2019/05/16
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昨今のサッカー界では戦術やシステムが重要視されることが少なくないが、そのなかでドリブルがどのような意味を持つのかを岡部は語ってくれた。 写真:茂木あきら(サッカーダイジェスト写真部)

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メッシやC・ロナウドらのような世界的なドリブラーたちの映像も日夜研究しているという岡部が提唱する「99パーセント抜けるドリブル」とは――。 (C) Getty Images

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今回インタビュー取材に応じてくれた岡部将和。彼の言葉にはサッカーに対する情熱が宿っていた。 写真:茂木あきら(サッカーダイジェスト写真部)

現代サッカーでは、知識やデータの発達により、ピッチ内外で様々なものが取り入れられるようになっている。なかには選手のパフォーマンスに大きな影響をもたらすものもある。

指揮官たちが編み出す戦術は複雑化し、それに合わせてトレーニング法もより細分化されて緻密さを増した。食事やメンタルのケアをエキスパートに依頼する選手もいる。

いわば、チーム単位だけでなく、個人単位でもスキルやフィジカルを強化させていく時代となった現代サッカー界で、“あるもの”に特化した独自の指導法を追求している日本人がいる。「ドリブルデザイナー」の岡部将和だ。

岡部は、その肩書き通りドリブルにフォーカスを当てたトレーニング理論を提唱している。その反響は凄まじく、「YouTube」で公開している実演動画の総再生回数は、1億回を超える。一昨年には、ブラジル代表FWネイマールとのドリブル対決が話題を呼んだ。

さらに先月25日に岡部は自身初の著書『ドリブルデザイン 日本サッカーを変える「99パーセント抜けるドリブル理論」』を出版。相手を抜くための様々なロジックや技術が言語化され、そのウィットに富んだ内容は話題を呼んでいる。

その理論に賛同し、師事を仰いだプロ選手も少なくない。これまでに乾貴士や原口元気、堂安律といった日本屈指のドリブラーたち10人以上に、ドリブルのコツを指南してきた。

なぜ、「ドリブル」に特化しようと思ったのか? それが気になった。訊けば、キッカケは幼少期に憧れたレジェンドの存在だったという。
現在35歳の岡部がサッカーにのめり込むようになったのは5歳の時。2つ上の兄の影響もあり、気が付けばボールを追いかける日々を送っていたという。

岡部をよりサッカーの世界へ引き込んだのが、当時のスーパースター、ディエゴ・マラドーナだった。この“神様”のプレー集をビデオが擦り切れるほど繰り返し再生し、相手を圧倒する妙技の数々を目に焼きつけた。

「最初はメキシコ・ワールドカップの5人抜きの映像から入って影響を受けましたね。それでビデオを買って、ずーっと擦り切れるくらいに見て、そのドリブルを自分で試していました」

マラドーナのプレーからサッカーを「楽しむ」ことを学んだという岡部は、その後、メキメキと頭角を現わす。中学時代には、横浜F・マリノスのジュニアユースで、藤本淳吾(現ガンバ大阪)や栗原勇蔵とともにプレーした。

そして、サッカー部で汗を流した高校時代を経て進学した桐蔭横浜大学でもサッカーを続け、卒業後には自分の武器だった足下のテクニックを活かすべく、フットサルへ転向。2007年にFリーグが創設されたのを機にバルドラール浦安に入団し、晴れてFリーガーとなったのである。

Fリーガーとして3年ほど活躍し、単身スペインに渡ってフットサル2部リーグでもプレーした岡部は、10年に引退。第一線を離れてからはフットサルの普及活動の一環として「Make Smile Project」を立ち上げ、幼稚園や小中高サッカー部、少年サッカーチームへの指導を開始した。

そのなかで、岡部の独特なドリブル指導が反響を呼び、それを追求していった結果、過去に前例のなかった「ドリブルデザイナー」という職を確立したのである。“ドリブルデザイナー”というネーミングは一聴しただけでは理解できない、聞きなれない言葉である。なぜ岡部は、「指導者」や「コーチ」などではなく「デザイナー」というワードを使ったのか? それには彼の理想に基づく明確な理由が存在する。

「指導っていうと偉そうなイメージがあって。自分の持っているものを『教えてやる』という感じが僕はするんです(笑)。僕はあくまでも選手に寄り添って一緒により良い答えを見つけていく、個々の能力や特徴に合わせて“デザイン”していくことがしたいんです」

フットサルを引退してからも、「一番好きだった」というドリブルへの探求心から我が道を進んだ。

「ドリブルデザイナーを始めるようになったのは、サッカーやフットサルをプレーヤーとしてやっていた時から自分の好きなことや楽しいことをやり続けていきたいという気持ちが強かったからというのが大きいです。フットサルを引退した時も、教えることの楽しさを感じてやめましたし、プレーの中でドリブルが一番好きだった。なので、よりこだわりがあって、一番に好きなことを選んだ結果なんです」

「あとは、僕自身が本気で求めている時ほど、身になったことが多かったこともあり、本気で求められた時にその人に対して、時間や情熱を注ぐということ以外はやりたくないんです。だからチームから呼ばれても、僕に興味がない選手もいるなかで伝えるというのは人生がもったいないと思っています。だから、本気で来てくれる人に対して、パーソナルに教えたいんです」
ドリブルデザイナーと名乗れるほどに確立した理論を持つ岡部が提唱しているのが、「99パーセント抜けるドリブル」だ。

現代サッカーは、ありとあらゆるプレーが映像を使って細かく分析され、守備のスキルも圧倒的に高まっている。そんな時代に99パーセントという高確率で相手を抜き去るドリブルは実現可能なのか。「自分の間合いになったら、どんなDFも抜けますね」と自信を垣間見せる岡部は、「距離と角度と一歩を踏み出す勇気が重要なんです」と解説してくれた。

「ディフェンスが思い切り身体を伸ばしても届かない距離と自分がここから抜けるっていう角度があるんです。僕らは“勝利の間合い”って呼んでるんですけど、『ここに行けばどんな人でも絶対に勝てる』というところが、どんなに足が遅くても、身体が弱くても、人にはそれぞれ存在する。その答えを知ることが大事なんです。それさえ理解していれば、なぜミスをしたのか、なぜ抜けたか、を明確にできる。そうすれば、仮にボールを取られても、自分の何かがいけなかったんだと向き合えるんです」

「なぜ?」を明確にすることで抜ける確率を高められるという岡部は、最終的にドリブルの成功率を99パーセントまで高めるのは、個々のチャレンジ精神だという。

「最終的にはチャレンジする心が重要だと思います。なぜチャレンジをしないのかと考えた時、失敗が恐いからだと思うんです。でも、99パーセントも抜けるって思っていれば、チャレンジしますよね? だから僕の理論は99パーセント抜けるよっていう御守りに近いものがあるんです。10回に1回成功していたものが、2回、3回と徐々に伸びていけば、チャレンジする勇気を生み出していくんです」 近年のサッカー界は、ジョゼップ・グアルディオラらをはじめとする優秀な戦術家たちが構築したタクティクスな部分やシステム論が注目を集めがちだ。そのなかでドリブルが局面的に切り取られ、フォーカスされることは決して多くはない。

では、現代サッカーにおけるドリブルはどのようなものであるべきか――。岡部は「相手よりも多く点を取ったら勝ちというサッカーのなかで、あくまでドリブルは選択の一つです」と語ったうえで、理想的な在り方を口にしてくれた。

「例えば、ペップが完璧に戦術をチームに落とし込んだとしても、分かっていても止められないメッシが相手なら、調子がスーパーじゃないことを祈るしかない。ヒントはそこにあるんです。どれだけ戦術を固めても、それを突き崩すことができるようになるのがドリブルなんです。僕の目指しているドリブルもまさにそれなんです。それができれば、組織や戦術のなかでも特別なものになっていくと思いますね」

これまで存在しなかったドリブルのスペシャリティーとしての理念や知見の深さを示したくれた岡部に、どうしても聞きたいことがあった。

「日本にメッシのような圧倒的なドリブラーが生まれるのか」だ。
その答えは、彼らしい自信に満ちたものだった。

「生まれると思います! 近い将来ですね。久保(建英)くんを見ていてもわかるように高いポテンシャルを持った選手は出てきていて、世界でも屈指のレベルに近い選手は出てくるはずですから」

はたしてこの先、日本サッカー界にメッシは誕生するのか――。この「ドリブルデザイナー」の言葉を信じてみたくなった。

【プロフィール】
岡部将和(ドリブルデザイナー)
1983年神奈川県生まれ。Fリーグ出身のドリブル専門の指導者(ドリブルデザイナー)。誰でも抜けるドリブル理論を持ち、YouTubeをはじめ様々なSNS上で配信する。ドリブル動画閲覧数は約1億PV。国内はもちろんアジア、ヨーロッパ、南米と世界各国からアクセスされ、現在は全国各地でドリブルスクール開催中。また、サッカー界を代表する選手(日本代表選手たち)に個別で独自のドリブル理論を指導している。さらに、ロナウジーニョ、本田圭佑、ジーコ、マテラッツィ、アドリアーノ、デルピエロ、ピルロなど世界のスター選手とのコラボレーションを果たしている。著書に『ドリブルデザイン 「99%抜けるドリブル理論」』がある。

取材・文●羽澄凜太郎(サッカーダイジェストWeb編集部)

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