小山薫堂さんが提唱する日本の伝統文化「湯道」とは?

小山薫堂さんが提唱する日本の伝統文化「湯道」とは?

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  • 更新日:2017/08/12
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放送作家・脚本家の小山薫堂さんが今、力を注いで唱えている日本の文化がある。それは、古くから日本人の習慣として定着している風呂、入浴の道「湯道」だ。果たして「湯道」とは、どんな文化なのだろうか? 小山さんに話を聞いた。

−−まずは「湯道」を立ち上げようと思われたきっかけを教えてください

「最初、茶道の素晴らしさに触れた時に、すごいなって思ったんです。お茶を飲む日常の行為が文化芸術の域まで高められ、それによって色んな人に色んな気づきを与えたり、伝統工芸の職人さんも技を磨いたりと。茶道のように日常の行為が文化芸術に昇華しうるもの、ほかに何かないだろうか?って考えた時に、お風呂だと思いました」

「いま日本人の入浴のスタイルが欧米でも少しずつ受け入れられてきていると思うんです。今、『湯道』を始めることで、何十年ではできないかもしれないですけど、誰かが継いでいくことで『湯道』というものが一つの道となり、文化芸術になるんじゃないかなと思っています」

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−−小山さんご自身もお風呂好き?

「もちろん。最初、銭湯に行ったのは幼稚園の頃ですかね。そこが最高の遊び場だったんですよ。僕たち世代の子供の頃、水中モーターっていう玩具が流行っていて、舟の底に吸盤でつけて走らせるような玩具なんですけど。それを持って、銭湯に遊びに行っていたというのが子供の頃の記憶として残っていますね」

「それを機に銭湯がものすごく好きになったんです。大学の頃などは、上京して風呂付きの家に住んでいたんですけど、やっぱり銭湯が好きなので、近所の銭湯に入りに行ってましたね。社会人になってもちょくちょく銭湯に行ってました。もちろん、今でも行きますよ」

−−今はどういう時に行かれるんですか?

「あの、僕が行っている銭湯は、とにかく誠実な商いをしているところなんですね。家族でやっているところなのですが、清潔な水を薪で沸かして、桶はプラスチックではなく木の桶を使っていて、髪の毛一本、脱衣所に落ちてない。どうやら、亡くなった先代の遺言で『とにかく500円でも400円でもひとさまからお金をいただくのだったら、みなさんに感動して帰っていただかなきゃいけないんだ』っていうのが口癖だったみたいで、家族はそれを守っているんです」

「年に一回、大晦日の営業が終わると、木の桶を一個だけ記念に取り、残りの全ては燃やして新年から新しい桶を使うっていうことをやっているんです。その精神性とか仕事に対する姿勢が大好きで、色んなことを学べるので、たまに足を運んでいるんですよね。疲れがたまった時や迷っている時などに行くことが多いので、自分にとってはお寺で座禅を組みに行くようなものかな」

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−−小山さんはサウナも大好きでしたよね?

「そうですね。サウナと銭湯の違いでいうと、サウナは肉体的な解放で、銭湯は精神的な解放ですかね。サウナは、汗がバッとふきだして肉体的な面でのリラクゼーションが大きいと思うんですけど、銭湯は情緒的であって、自分の中にある時間を巻き戻すような、昔、大学時代にいつも銭湯に入っていた頃の自分に戻ることができるような」

−−確かにビジネスマンの方が仕事で行き詰まったりした時に、銭湯に行くっていうのもいいですね

「銭湯があるその町のにおいといいますか、地元の人たちと交流もできますし、ものすごい旅人感を感じることができるんですよね。これが、ホテルの浴室などですと、誰とも会うこともないですし、普通にビジネスホテルに泊っても快適なところはたくさんありますが、持参したパソコンを開けばいつもの自分とほとんど変わらない環境です。銭湯は気分の入れ替えやリセットにつながりやすいと思うんです」

−−小山さんは『湯道』の道具も作ったとお聞きしましたが?

「そうなんです。セットを作りました。この桶は、日本酒を作る時の桶で狐桶っていうのがあったらしいんですけど、それをベースにしたものでして、狐の形している桶なんです」

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「木工芸職人の中川周士さんが作ったのですが、実は、僕がたまたま京都の骨董屋さんに行った時に、いいの入ってますよって言われて、なんですかって聞いたら、『亀一』と書いてある桶だったんですけど、その『亀一』さんとは、中川周士さんのおじいちゃんだったんです」

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−−なるほど。こちらのタオルには桶が三つデザインされていますがその意味は?

「そうなんです。この三つは、感謝の心と他者を慮る心と自己との対峙を意味してまして。この下には湯の道によって心を温めるという意味の『湯道温心(ゆどうおんしん)』という言葉をそえました。しかもこのタオル、すごく機能性に優れているんですよね」

「実は、片面がガーゼでこっちがタオル生地になっているんです。使ってみるとわかるんですけど、ものすごく簡単に絞れるんですよ。よく、ふわふわのタオルがありますが、あれはお湯に浸けるとなかなか絞れない。これは弱い握力でも硬く絞れて、それでいて吸水性が高いので体を拭くときにはこれ一本で十分なんです!」

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−−こだわりの道具でお風呂に入るとすごく楽しそうですね

「全てのことって結局、気持ちじゃないですか? お風呂だって、何気なく普通に入っているのと、お風呂に入ることを楽しみとして、あるいは文化的なことだと思って、これらの湯道具を使って入るのでは感じ方が全然違うと思うんです」

「例えばプラスチックの桶だと何も思わず普通に湯をすくっていたのが、こういった湯道具ですと、その所作が優しくなったりする。無駄なお湯を使おうと思わなくなったり、その気持ちが持続して穏やかな一日が過ごせたり。朝、お風呂に入った時、普通にシャワーを浴びるよりも朝のお稽古気分で、自分なりの『湯道』のつもりでお風呂に入って出ると、朝から何か一つのお稽古を積んだ、みたいにな気分になって、その一日がピリッとするんですよね」

−−ちなみに、すぐに実践できる『湯道』の所作ってなにかありますか?

「まず言葉を一つ言いたいんですけど、遠慮という言葉があるじゃないですか。遠慮というのは本来、遠くまで慮ることを遠慮っていうらしいんですよ。自分のことだけではなく、遠くの色んなことまで、先まで」

「それに対して近慮という言葉。湯道における近慮というのは、次に入る人や隣にいる人のことも慮る。上がる時、桶を綺麗にし、次に使う人が心地よく使えるようにする。当たり前のことなんですけど、それを近慮という言葉を想像することによって、雰囲気がピリッとしますし、動きも気持ちも変わりますよね」

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−−では、最後に『湯道』の今後の展開を教えてください

「そうですね。実は、海外の人の方が『湯道』の魅力を伝えやすいんじゃないかなと思ってまして。日本人ですと、あまりにも当たり前すぎて『湯道』って聞いた時に、ほとんどコントのように思われる人が多いんですよね」

「この間、イタリアに行った時に『湯道』って言ったら、みんな『なるほど!』『それは知らなかった!確かに!』『お茶が道になっている国だったら、お風呂もミステリアスでいい!』って言ってくれる人がたくさんいたんですよ」

「まずはイタリアで『湯道』を広めたいなって思っています。とくに来年あたり、ミラノで『湯道』の展示をやれたらいいなと。あと『湯道』の目線で選んだ、温泉とか銭湯とかそういったカテゴリーを問わない、お風呂というくくりでの『日本の湯道100選』みたいなものを選んでみたいなって思っています」

昔から習慣化しているお風呂だからこそ、そこには伝統につながるかもしれない文化がある。あなたも『湯道』を後世に継なぐひとりとして今日から『湯道』を志してみてはどうだろうか。

■関連情報
『湯道』オフィシャルサイト:http://yu-do.jp/

取材・文/オビツケン 撮影/田中智久

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