国の借金、GDPの3倍へ...内閣府、楽観的な高成長率を前提に試算か:妥当性を検証

国の借金、GDPの3倍へ...内閣府、楽観的な高成長率を前提に試算か:妥当性を検証

  • Business Journal
  • 更新日:2018/04/18
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今年(2018年)は、2016年度から2018年度の3年間で進めてきた財政再建計画の中間評価を行う年であり、2019年10月に予定する消費税率引き上げの最終判断のほか、国と地方を合わせた基礎的財政収支(PB:プライマリーバランス)黒字化の達成時期といった新たな財政再建目標を策定する年でもある。

では、2018年度での評価はどうか。もともとの計画では、国と地方合計のPBの赤字幅を2018年度に対GDP比で1%程度に圧縮することを目指していたが、実際のところ、同年度のPBは2.9%の赤字となってしまった。同年度の名目GDPは約564兆円のため、金額ベースでは約10.8兆円の悪化で、この内訳は税収の下振れが4.3兆円、消費税率引き上げ延期の影響が4.1兆円、補正予算の影響が2.5兆円である。

このほか、歳出の効率化努力で3.9兆円のPB赤字を削減しており、もし歳出削減がなかった場合は14.7兆円(=10.8兆円+3.9兆円)もPBは悪化していたことを示唆する。つまり、経済成長に頼った財政再建は難しく、財政再建のためには歳出削減と増税を含む税収の確保をしっかりと行っていく必要がある。

この点で、先般(2018年1月23日)、内閣府が公表した「中長期の経済財政に関する試算」(以下「中長期試算」という)に基づき、新たな財政再建目標を設定すると、その判断を誤ってしまう可能性がある。

というのは、中長期試算では高成長の「成長実現ケース」と低成長の「ベースラインケース」の2つのシナリオがあるが、今回の試算では、どちらのシナリオでも2018年度から2027年度にかけて、国・地方の公債等残高(対GDP)が縮小する試算結果となっているからである。

●公債等残高(対GDP)、深刻な将来予想

では、2028年度以降の公債等残高(対GDP)はどう推移するか。この姿については、名目長期金利と名目GDP成長率などに関する一定の前提を置けば、簡単に試算できる。なぜならば、

・T年度の公債等残高(対GDP)
= -T年度の国と地方合計のPB(対GDP)
+(名目長期金利-名目GDP成長率)×(T-1)年度の公債等残高(対GDP)

という関係が成立するためである。2028年度以降における「名目長期金利-名目GDP成長率」の値や、国と地方合計のPB(対GDP)を設定すれば、簡単に計算できる。

成長実現ケースでは、2027年度の「名目長期金利-名目GDP成長率」が0.3%、国と地方合計のPB(対GDP)が0.1%の黒字となっている。このため、以下の図表1は、成長実現ケースにおいて、2028年度以降のPBは2027年度と同じ値とし、「名目長期金利-名目GDP成長率」が0.3%、1%、2%となる3つのケースについて、2028年度以降における国・地方の公債等残高(対GDP)を試算したものである。

また、以下の図表2は、同様の手法で、ベースラインケースにおいて、2028年度以降のPBは2027年度と同じ値とし、「名目長期金利-名目GDP成長率」が0.5%、1%、2%となる3つのケースについて、2028年度以降における国・地方の公債等残高(対GDP)を試算したものである。

図表1と図表2のどちらも、2028年度以降の「名目長期金利-名目GDP成長率」が2027年度と同じ値であっても、公債等残高(対GDP)の縮小は底を打って上昇に転じていくことが読み取れる。また、「名目長期金利-名目GDP成長率」(r-g)のシナリオによっては、2060年度頃において、ベースラインケースの公債等残高(対GDP)は300%超となり、成長実現ケースでも公債等残高(対GDP)は300%に近づく可能性が読み取れる。

なお、前回のコラムで指摘したように、中長期試算が想定する名目GDP成長率は楽観的なため、上記の試算は甘い可能性もある。1995年度から2016年度において、名目GDP成長率の平均は0.3%しかないにもかかわらず、成長実現ケースでは3.5%、ベースラインケースでも1.7%の名目GDP成長率を想定しているためである。名目GDP成長率を厳しめに想定すれば、2060年度頃の公債等残高(対GDP)はより深刻な姿となろう。

「経済財政運営と改革の基本方針2015(骨太2015)」(平成27年6月30日閣議決定)には、「安倍内閣のこれまで3年間の経済再生や改革の成果と合わせ、社会保障関係費の実質的な増加が高齢化による増加分に相当する伸び(1.5兆円程度)となっていること、経済・物価動向等を踏まえ、その基調を2018年度(平成30年度)まで継続していくことを目安とし、効率化、予防等や制度改革に取り組む」という記載のほか、「この点も含め、2020年度(平成32年度)に向けて、社会保障関係費の伸びを、高齢化による増加分と消費税率引上げとあわせ行う充実等に相当する水準におさめることを目指す」という記載もある。

財政再建の「旗」を降ろすことなく、2020年度に向けて、新たな財政再建目標を含め、しっかりとした財政・社会保障の改革を進めていくことが求められる。
(文=小黒一正/法政大学経済学部教授)

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