栗山監督が描く大谷翔平のメジャー。「DHがなくても二刀流はできる」

栗山監督が描く大谷翔平のメジャー。「DHがなくても二刀流はできる」

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  • 更新日:2017/11/14

11月11日、日本ハムファイターズ大谷翔平がポスティングでのメジャー挑戦を表明した。日本ハムでの5年間、 “二刀流”という前例のない壮大なプランに挑み続けてきた大谷。その挑戦をあと押しし、誰よりも近くで見守ってきたのが栗山英樹監督だ。今回のメジャー挑戦で栗山監督は何を思ったのか? 大谷と過ごした5年間を振り返り、メジャーでの可能性について語ってもらった。

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11月11日、今オフでのメジャー挑戦を表明した日本ハムの大谷翔平

―― 監督はこの5年間、大谷選手に対して何を残してあげられたと思っていますか。

栗山英樹監督(以下、栗山) 何も残してあげられなかった……残してあげられたものは何かと聞かれたら、そういう答えになっちゃうね。

―― でも、今シーズンをリハビリだけの年に終わらせなかったのは、監督が今年中の復帰にこだわったからでした。

栗山 ああいう風にいろんなもののスケールが大きい選手がケガをすると、復帰するのにこれだけの時間がかかっちゃうんだよ、ということを感じてもらいたかったからね。自分の体と相談しながら、「こういうときは無理だな」「こういうときは行けるんだな」ということを翔平自身がわかり始めた感じはあったと思う。来年からチームを離れることになれば、全部を自分で決めなければならなくなる。それはいちばん難しい作業だし、そのときに備えて、少しでも判断できる材料、考え方という引き出しを作ってあげなきゃ、作ってあげなきゃとすごく思っていて……でもそれって、ここまで5年間やってきても、最後の最後までこっちにとっても難しいことだったんだけどね。

―― その難しさをあえて言葉にしていただくとしたら、どういうことになるんでしょう。

栗山 それは、答えがないということに尽きる。世の中で下される決断の多くは、プロセスがしっかりしていれば、多少、結果が思うようにならなくても前に進んだと考えていいはずなのに、翔平のことに関しては、プロセスが合っていたとしても結果的に何かが起こっちゃったらそれはダメになる。試行錯誤っていうけど、試してみてダメだったということが許されないんだから、それは難しいよ。

―― ただ、メジャーの球団が二刀流を認め始めている時点で、監督の試行錯誤は成果があったということになりませんか。何しろ、あのメジャーの球団が、大谷欲しさからとはいえ、前例のないことに前向きなコメントを出しているんですから……。

栗山 翔平が頑張ったからね。こっちとしても、メジャーが「参りました」というだけの能力があると信じてやってきたので、それくらいは当たり前だと思ってるよ(笑)。

―― たとえば大谷選手のピッチングに対して、まだまだやらなきゃいけないことがいっぱいある、宿題もまだある、という言い方を今もされてますけど、監督が物足りないと考えている部分はどういうところなんですか。

栗山 もともと投げるのが感覚的にうまくないからね。ここは変化球だったら打たないとか、ポンと投げてストライクを取れば簡単にいくのに、力んでボール球を投げたりするから余計、自分を苦しめちゃう。いったんフォームが崩れ出すと、元に戻らないでしょ。そういうピッチャーは少なくないけど、オレは、大谷翔平はスーパーマンだと思っているから、言い出したらキリがないくらい、課題はまだまだいっぱいあるよ。

―― バッティングに関してはどうですか?

栗山 ピッチングにしてもバッティングにしてもそうだけど、今年は十分な練習ができなかったのに、あれだけのことをやってしまうんだからね。今年はバッティングも最悪の状況だったと思うけど、それでもあれだけ打つのが大谷翔平の本質だと思う。本来の力からすれば、今年はホームランも打ててないし、打球も飛んでない。でも、あれだけの数字が残る。投打ともにそのくらい突出した力があるからこそ、翔平は二刀流ができると思ってきた。

―― チームを勝たせるための二刀流だということをプロ4年目に証明した大谷選手ですが、そのとき監督は、プロ5年目を迎えた彼のことを「ファイターズ大学は卒業して、大学院に進んだ」と表現しました。その5年目はケガに苦しみましたが、それでもメジャー行きを認めたということは、監督はついに卒業証書を渡したと考えていいのでしょうか。

栗山 いや、卒業させたわけじゃないよ。これは留学だから。

―― えっ、留学(笑)?

栗山 そう。だって、卒業というのは認めたということでしょ。まだ認めてないよ。そもそも、今の翔平がメジャーで両方やって結果を出せるかと言ったら、まだ全然、技術的に足りてないからね。それでもいいんだよ。だって、学びながら成長してほしいし、だから留学してこいということでしょ。今の翔平がこのまま日本にいたら、停滞するとオレは思う。やりたいことを我慢せず、100パーセントの力で、体ごと目標にぶつかっていかなかったら、翔平の能力は引き出されない。卒業して送り出すわけじゃなくて、留学してみて、いつの日か、ああ、もう卒業だなとオレが思う日が来たら、卒業証書、渡すよ。そういう話だから、これからも文句を言い続けるつもりだって言ったんだよ(笑)。

―― つまり、今の大谷選手には、ダルビッシュ有投手や田中将大投手のような、メジャーで即戦力というイメージを持っていないということですか。

栗山 だってピッチャーで言うなら、ダルほど安定したフォームで投げられているわけじゃないし、マー君のような絶対的なコントロールを身につけているわけでもない。しかも翔平は二刀流をやるという大変さも味わわなきゃならないし、それに伴ってメジャーという環境で何が起こるのかも想像できない。道なき道を初めて歩いてみて、そこをどうクリアしていくのかということをみんなに示すのが、大谷翔平の使命でしょ。ファイターズでも、誰もが無理だと言ったことをやり切った。本当に努力して、できるということを示して、みんなに勇気を与えた。今度はそれをアメリカで示すためには、体もしっかりさせなきゃいけないし、もっともっと野球がうまくならなくちゃ。もちろん、まだまだうまくなるし、まだそのスタートに立っただけだからね。

―― 監督は、メジャーの野球が大谷選手にどんな刺激を与えてくれると感じてますか。

栗山 おそらくね、翔平は生まれて初めて、「オレの野球、アカンな」と思わされることにぶつかるはずなんだよ。幸か不幸か、日本のプロ野球に入ったときにはそういうことがなかったと思うんだ。野球人生で初めての絶望感を味わうからこそ、本当の大谷翔平が世に出てくる可能性がある。それをオレは楽しみしているんでね。本当に世界一の選手になると思っているから、我々としては本人が行きたいと言ったタイミングで出すべきだと考えたわけで、日本でどれだけの数字を残せたとしても、それをもって完成するような選手じゃないでしょ。メジャーでさらに成長するためには、なんといっても体だよ。体さえしっかりすれば、いずれ結果は必ずついてくる。あの環境で、ボールも替わって、体に負担がかかるなかで、きっと苦しみながら、のたうち回って努力し続けるんだろうね。そうなったら、あの大谷翔平はいったいどこまでいっちゃうんだろうって、そういう楽しみはオレの中では大きいよ。

―― そういう意味では、いわゆる”25歳ルール”は、逆によかったのかもしれません。

栗山 プラスに働くかもしれないね。最初から大金もらっちゃったら、翔平は面白くないと思うんじゃないかな。だからオレは、大谷翔平は運を持っていると思うわけ。野球の神様は、あんなに一生懸命やっている選手に味方しないはずがないと思ってる。

―― 実際、メジャーで二刀流を実現させるオペレーションを考えたとき、監督が”ピッチャーとバッター”、つまり守らせない二刀流を実行してきたことを考えると、DHのないナ・リーグでは難しいとお考えですか。

栗山 いや、全然ありでしょ。アメリカのほとんどは土のグラウンドだし、芝だし。

―― えっ、それは守らせるということですか。

栗山 うん。

―― でも、外野はケガのリスクも高くなりますよね。

栗山 ファーストをやればいいし。

―― ファースト?

栗山 オレはそれを想定してやってきたよ。球場の作りを考えても、アメリカなら守れると思ってやってきた。あとは体力的な問題だけなんだよ。翔平の場合、守っていた方が動きがよくなるという考え方もある。入団直後はショートの練習もさせてたし、ファーストは問題なくできるよ。要するに、みんなが無理だと思っていることでも、誰が無理だと決めたんですかって話でしょ。そういう先入観を取っ払ってくれたのが大谷翔平だったわけで、そこを信じられなかったら二刀流は前に進められなかった。だから、オレはア・リーグでもナ・リーグでも二刀流はできると思っているし、翔平がチームを決めるにあたってひとつだけ言いたいのは、彼の能力を本当に愛してくれる人がいるところを選んでほしいということ。

―― でも、そういう人を見つけ出すのが難しいですよね。みんな、今の段階では「どうぞどうぞ、二刀流やってください」と言いますからね。そこを信じ切っていた野球人は、日本にもほとんどいなかったわけだし……。

栗山 いや、でもアメリカにもそこを信じ切れる野球人は必ずいると、いるはずだと信じてるよ。信じたいよね。だって、投げて、打って、走って、守って……そんなの、野球人の夢でしょ。

―― では、先入観たっぷりにお訊きしますが、ピッチャーとして中4日のローテーションに入っても、守りながら野手として出場するのは可能ですか。

栗山 あのね、オレは、二刀流は大谷翔平にとっての武器ではなくて、必須条件だと思っているのね。翔平を生かすためには、二刀流じゃなきゃ、逆にダメなの。それからもうひとつ、翔平の二刀流はチームのほうにとってみれば、武器なわけ。勝つために二刀流が必要になる。そう考えたら、必ずしも中4日で投げる必要はないよね。トータルでチームを勝たせるために翔平の登板間隔を開けながら、どうやってバッターとして貢献してもらうかを考える。メジャーのなかでこれがいいというパターンは必ずあるはずだから……。

―― 監督は、バッターとしての大谷選手を、チームを勝たせるための絶対的な武器だと位置づけてきましたよね。

栗山 正直、ああいうピッチャーは出てくるかもしれないけど、あんなバッターはもう出てこないと思っているからね。翔平の中に、イチロー選手と松井秀喜選手が両方いる感じ。普通に振るだけでとんでもない飛距離があって、強く振ってもバットコントロールができる。あとは考え方ね。一度、やられたあとの対処の仕方……そういうバッターとしてのとんでもない能力を考えたら、ピッチャーとして中4日で投げる必要はないでしょ。あれだけ腕が振れちゃえば、その分、体への負担も大きくなるわけだし。

―― でもメジャーは二刀流OKと言いながら、本音はピッチャーとして欲しがってますよね。

栗山 だから、そこが先入観だって言うんだよ。そもそも、『先入観は可能を不可能にする』って、誰が言ったんだっけ(笑)。

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