強制わいせつ罪、最高裁が成立条件を大転換...「いやらしい意図」なくても成立に

強制わいせつ罪、最高裁が成立条件を大転換...「いやらしい意図」なくても成立に

  • Business Journal
  • 更新日:2017/12/05
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平成29年11月29日、最高裁判所は大法廷判決においてこれまでの判例を変更して、強制わいせつ罪の成立について性的意図は不要であるという判断をしました。

強制わいせつ罪は「無理やりいやらしいことをする」という犯罪ですが、今までは「性的意図」、簡単に言えば「(性的な意味で)いやらしい目的」が必要とされており、純粋に復讐や金銭が目的な場合には犯罪が成立しないというのが最高裁判所の考え方でした。つまり、「いやらしい気持ちで、おっぱいを触ったわけではない」という主張が成り立っていたわけです。

しかし、今回の判例変更に伴い、「いやらしい気持ちがなかったとしても、おっぱいを触ったら、強制わいせつ罪が成立する」ということになったわけです。一般的な感覚からすれば、当たり前とも受け取れるかもしれません。

●これまでの判例について

これまでの「強制わいせつ罪が成立するためには、性的意図が必要である」という判断自体は、昭和45年に下された最高裁判所の判決によるものです。

この事件は、とある男と内縁状態にあった妻が、男の下から逃げ出したことを発端とする事件でした。その男は、内妻が逃亡する際に、逃亡を手助けしたと思われる女性を復讐目的で無理やり裸にさせて写真を撮影しました。

この事件に関して最高裁判所は、強制わいせつ罪が成立するためには「性的意図」が必要であると判断しました。

しかし、「無理やり裸の写真を撮ったのに、強制わいせつ罪が成立しない」という考え方は、一般的な感覚からはずれているように思います。また、実際に反対の意見もありました。

そういえば、2000年代に放送された司法研修所を舞台にしたテレビドラマでも、主人公が「強制わいせつ罪が成立しない」という結論で本当にいいのか思い悩んでいる場面があったのを覚えています。これも、この裁判所の判断と、一般的な感覚のずれを描いたものでしょう。

このように、批判もあった判断ではありますが、これが40年以上も維持されてきたわけです。

●実際に「いやらしい気持ちはなかった」という主張が認められていたのか

ただし、実際に「いやらしい気持ちはなかった」という主張が認められて、強制わいせつ罪が成立しなかった事件が多かったのかというと、そういうわけではありません。

たとえば、「女性を無理やり働かせるために弱みを握ろうとして、裸の写真を撮った」という事件では、「弱みを握るという目的があったことも確かだが、性的な目的もあった行為である」旨の判断のもと、強制わいせつ罪の成立が認められたという事件もありました。

このように、「たとえ別の目的があっても『性的な行為』をしている以上、『性的意図』があったことが認められる」というようなかたちで、強制わいせつ罪の成立を認める事件は多かったように思われます。

一般的に「おっぱいを触った以上、いやらしい目的があったんじゃないか」と思われるのが自然ですが、まさにそれと同じような考え方が取られていたといえます。

こういった理論を駆使することで、裁判所としては妥当な結論を出しつつ、最高裁判所の判断を維持してきたわけです。

●今回の判例変更について

今回、40年以上も維持されてきた最高裁判所の判断が変わったわけですが、これには以下の事情があるように思われます。

第1に、今回の事件が「性的な意図」があったとはいえない事件であったということです。被害者もいる事件なので、事件の詳細については最低限にとどめますが、(1)今回の行為は、金銭を借りるための条件としてやらされた行為であること、(2)被害に遭った女の子が非常に幼く、実際に被害に遭った女の子に対して性的に興奮していたとは認定できなかった、という事情があり、「性的な意図」の認定について疑いが残る事件でした。

第2に、もともと批判もあった判例であり、性犯罪に関する刑法の改正がなされるなどの状況も踏まえ、裁判所としても国民意識と乖離した判例を変更する必要性を感じていたということもあるように思われます。

こうして、判例の変更がなされ、強制わいせつ罪の成立が認められたわけです。

●今後の刑事手続きについて

そのため、今後は「性的な意図が存在しなかった」という主張自体は認められなくなったので、「いやらしい気持ちで、おっぱいを触ったわけではない」という主張は通じなくなりました。

しかし、「性的な意図の存在」が刑事裁判でまったく争われなくなるわけでもなさそうです。今回の判決では、「わいせつな行為」に当たるかの判断において、個別的に行為者の意図が考慮されることもあり得るかのように書かれています。

この考え方によれば、「女性のハイヒールを執拗に触った」というように、ただちに「わいせつな行為」と言えない場合でも、本人に「性的な意図」があれば強制わいせつ罪が成立するべきということになりそうです。

ですが、本人が「ハイヒールフェチか否か」で、わいせつ行為に該当するかの判断が変わることになれば、「どのような行為が犯罪に該当するか」ということの明確性が保てないという批判もあり得るでしょう。

また、今回の判例を素直に読んだ場合、「おっぱいを触る」というような、「わいせつな行為」であることがわかりやすい行為であれば、強制わいせつ罪の成立が認められそうです。

しかし、たとえば「同性愛者の男性が、相手に肉体的苦痛を与えるために、女性のおっぱいを強く握った」というような場合、「わいせつな行為」に該当する言っていいかは疑問が残るように思います。

今回の判決は、「批判の多かった判例を変更した」という意味で評価できる判決といえます。しかし、個別具体的な事件で適正な刑事手続きを確保するためには、慎重な検討をもって運用していく必要があります。
(近藤俊輔/弁護士法人ALG&Associates弁護士)

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