前侍ジャパン監督が明かす苦悩 「小久保の失敗」と書かれたスポーツ紙を額装した訳とは?

前侍ジャパン監督が明かす苦悩 「小久保の失敗」と書かれたスポーツ紙を額装した訳とは?

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  • 更新日:2017/11/14
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福岡金文堂 姪浜南店で出版記念の記者会見とサイン会を行った小久保裕紀 前侍ジャパン監督(撮影/今村成明)

侍ジャパン監督として2017年3月のワールド・ベースボール・クラシック(WBC)を戦った小久保裕紀氏。初めて常設された日本代表監督として、世界を相手に戦った3年半の記録を一冊の書籍にまとめた。そのタイトルは『開き直る権利』。

プロ野球でのコーチ経験すらない小久保氏が侍ジャパン監督就任を引き受けた心情、2016年に開催されたプレミア12での逆転負けとバッシングの数々、コーチ人事の舞台裏やメジャー組不参加の苦悩、そしてWBCでの激戦。それらのすべてを小久保氏が包み隠さず語っている。11日、福岡市内で行われたサイン会を前に、小久保氏に話を聞いた。

開き直る権利―それは「自分が考え尽くした準備をすべてし尽くした者だけが得られる権利」だと、小久保氏は言う。そして、小久保氏をその心境にいたらせたのがプレミア12の準決勝での逆転による敗戦だった。

■プレミア12準決勝での敗戦

小久保ジャパンは、初陣のチャイニーズ・タイペイ戦に3連勝し、続く日米野球でもメジャー選抜を相手に勝ち越しを決めた。世界ランキング12位までの国で争うプレミア12では初代王者への期待が大きく膨らんだが、準決勝で韓国にまさかの逆転負け。

「監督の継投ミス」として、マスコミからの批判が集中した。小久保氏は『小久保の失敗』という見出しのスポーツ紙をわざわざ額装して、書斎の目に付く場所に飾った。

「人間は忘れやすいものだと思っていますので、あの悔しさを忘れてしまっては同じ失敗を繰り返すという思いがありました。毎朝、目に入るところに置いておこう、と。WBCで同じ失敗をしたくないという思いだけでしたね」

プレミア12での経験をもとに、新たなコーチ人事や選手の選考など、限られた条件の中で小久保氏はやれることはすべてやり尽くし、“開き直る権利”を持ってWBCへと向かっていく。それでも大谷投手の直前の出場辞退やメジャー組の不参加表明などで苦悩は続いた。小久保氏は当時を振り返り、日本球界への提言も口にした。

「招集はしても参加できなかった選手はいます。それに至る準備はしましたし、結果的には呼びたい選手を呼べなかったという状況はありましたが、それが日本球界の現状です。侍ジャパンとして日本球界でしっかりとした組織作りをしていくのであれば、12球団が足並みを揃えて同じ方向を向いていかない限り、誰が監督をやっても同じことになるのではないかという思いもあります」

■代表選手は「手本であれ」

では、3年半の代表監督を経験して小久保氏が得たものは何なのか。その問いかけに、小久保氏は「ボク自身というよりも選手がどう感じてくれたか」が大事だと語った。

「日本球界における代表選手の役割や使命、そして責任が非常に大きいものだということを、3年半に渡って招集してきた選手たちは感じてくれたと思います。やはり、自分たちが球界をひっぱらないといけないという思いが出たことが一番だと思っています」

また、初めての常設監督として長期に渡って選手たち招集し続けたことで、選手同士の相性や性格が把握できたのは大きなメリットだったという。さらに、ホークスや巨人でのキャプテン経験などを通して生まれた『精神論野球』を、3年半の間に招集した選手たちにしっかりと伝えていくこともできた。特に口うるさく選手に伝えたのは「ツバを吐くな」「帽子はきちんとかぶれ」という2つの事柄だったという。

「アマチュアのトップの選手を含め、子ども達からも見られているわけですから、手本にならないといけない。ボクはもう代表監督ではありませんが、これから先も球界の先輩として言い続けていかなければいけないと思っています。ボク自身も(ホークスで)24歳でレギュラーを取った時から『手本になれ』と言われ続けてきましたし、それはやはり当時の監督だった王(貞治)さんの影響が大きいですね」

今回、侍ジャパン監督しての3年半の軌跡を、赤裸々な心情とともにまとめあげた一冊『開き直る権利』について、小久保氏は「WBCを見てくれた方にぜひ読んでいただければ」という。しかし、小久保氏がこの一冊を通して最も伝えたかったことは、野球への関心のあるなしに関わらず共鳴できる部分があるはずだ。

「過去に起こった事実は変えることはできません。でも、その過去の出来事を自分がどうとらえるのかによって、人生は変わってくると思います」

小久保氏は、来シーズンもNHKの野球解説者として12球団を見守っていくという。プロ野球ファンとして気になるのは、いずれどこかの球団で監督としてユニフォームに袖を通すことがあるのかどうかだ。小久保氏はちょっと微笑みながら、「ずっとそういう人材であり続けたいと思っています」とだけ答えた。

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