テスラのEVトレーラー コスト削減効果はどのくらい? 試算してみた

テスラのEVトレーラー コスト削減効果はどのくらい? 試算してみた

  • ITmedia ビジネスオンライン
  • 更新日:2017/12/07
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米テスラモーターズは11月16日、EV(電気自動車)トレーラー「Tesla Semi」を2019年に投入すると発表した。航続距離が300マイル(約480キロ)のモデルと、500マイル(約800キロ)のモデルの2種類があり、価格は300マイルのモデルが15万ドル(約1700万円)、500マイルのモデルが18万ドル(約2000万円)となっている。

同社では、ディーゼルエンジンで駆動する従来の大型トレーラーと比較して大幅にコストが安く済み、約20万ドル(約2200万円)の削減が可能と主張している。トレーラーは商用なので、コストは重要な問題であり、もしテスラの主張が正しいなら、大型トレーラーの分野でも一気にEVシフトが発生する可能性がある。

Semiは詳細な仕様が明らかになっているわけではないが、現時点で判明している情報からコスト面について考察してみたい。

「Tesla Semi」

前述したように航続距離300マイルのモデルは車両価格が1700万円だ。車両重量や積載荷重の詳細は不明だが、8万ポンド積載時の加速性能が開示されているので、とりあえず積載荷重を8万ポンド(36トン)と仮定しよう。日本で用いられている大型トレーラーの中でサイズの大きいものは、積載荷重が30トン程度、総重量が40トン程度なのでこれを比較対象とする。

このクラスの新車の希望小売価格は1700万円〜2000万円程度だが、かなりの値引きが行われるので、現実には1000万円台半ばでの購入が可能と考えられる。テスラが提示した価格は、蓄電池の価格下落も見越した戦略的なものだとされる。従ってテスラには値引きはないと仮定すると、若干、テスラの方が購入コストは高いという結果になる。

乗用車ならトータルコストのうち購入コストが多くを占めるが、商用のトラックの場合はそうはいかない。運用コストの比率が高く、この部分をどの程度に抑えられるのかによってトータルコストは大きく変わってくる。

2200万円の削減は本当か?

テスラのトレーラーの消費電力は1マイル当たり2キロワット以下となっている。トラックの一般的な年間走行距離(年間10万キロと仮定)や国内の電気料金などを考慮すると年間のエネルギーコストは約320万円と推定される。事業者の場合には、電気料金の大幅な割引が適用されるので、200万円程度に抑えることも可能かもしれない。

一方、ディーゼル駆動のトレーラーは、同一条件の場合、年間の燃料代(軽油)が約330万円になる。しかもディーゼル車はEVと比べてエンジンオイルの交換やブレーキのメンテナンスといった維持費用がかさむので、さらにコストが上乗せされる。EVの場合、基本的にエネルギー回生システム(減速時、モーターを発電機として使い制動力を得ると同時に、発電した電気を回収するシステム)が用いられるのでブレーキに対する物理的負担が極めて軽い。全体の部品点数も少なく点検コストを大幅に削減できるだろう。

そうなってくると運用条件にもよるが、EVトレーラーの方が年間150万円〜200万円ほどコストを節約できる可能性が見えてくる。

年間150万円のコスト削減で償却期間を15年とするとトータルのコストは2250万円ほど安くなるので、テスラが主張している2200万円とほぼ一致することになる。テスラの削減額については詳細情報が開示されていないため、これ以上の比較は難しい。だが、2200万円の削減というテスラ側の説明もあながちウソではないようだ。

EVトレーラーの航続距離や充電設備の普及を考えた場合、長距離輸送に用いるのは少々難しいだろう。だが、関東圏内や東京〜名古屋間といったレベルなら十分に使えそうである。一定のエリア内での運用に限定されるとしても、低コストの魅力は大きい。

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従来のトラックと比べ、どのくらい削減できる?

日本のEV化はトラックから始まる?

EVはもともと自動運転との親和性が高いとされているが、EVトラックと自動運転の親和性はさらに高い。自動運転化されたトラックであれば、高速道路を一定の車間で車列を形成しながら運転できるので、運送効率が極めて高くなる。ドライバーの過重労働の心配もないため事業者にとってはさらに魅力的だ。

EVトラックの登場は、自動運転システムの普及に弾みをつけることになるだろう。またEVの場合には騒音問題を軽減することができるため、深夜運用のハードルも下がる。

テスラはシリコンバレーの企業であり、カリフォルニアは米国で最も環境問題への関心が高い州の1つである。テスラとしてはお膝元である同州での普及を目指し、戦略的なEVトラックを投入したものと思われる。一方、日本はあまりEVに積極的とはいえず、EV化については各国よりもペースが遅くなる可能性が指摘されている。

だがトラック輸送に関しては話は別かもしれない。日本の運送業界は世界でもまれに見る低収益にあえいでおり、1円でもコストを安くしたいというのが現実である。もしかすると日本は、EVトラックの導入に対して最も積極的な国になるかもしれない。

加谷珪一(かや けいいち/経済評論家)

仙台市生まれ。東北大学工学部原子核工学科卒業後、日経BP社に記者として入社。

野村證券グループの投資ファンド運用会社に転じ、企業評価や投資業務を担当。独立後は、中央省庁や政府系金融機関など対するコンサルティング業務に従事。現在は、経済、金融、ビジネス、ITなど多方面の分野で執筆活動を行っている。

著書に「AI時代に生き残る企業、淘汰される企業」(宝島社)、「お金持ちはなぜ「教養」を必死に学ぶのか」(朝日新聞出版)、「お金持ちの教科書」(CCCメディアハウス)、「億万長者の情報整理術」(朝日新聞出版)などがある。

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