発生確率は80%超...!? 次の巨大地震が襲う「大都市」の名前

発生確率は80%超...!? 次の巨大地震が襲う「大都市」の名前

  • 現代ビジネス
  • 更新日:2019/06/26
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関東大震災でも「甚大な被害」

横浜は、人口約374万人を擁する大都市だ。街の象徴・横浜ランドマークタワーや歴史的建造物・赤レンガ倉庫などの定番スポットを求めて、観光客は年間3420万人を超える。今日この日も、家族やカップルが憩いを求めて、この港町を訪れているはずだ。

しかし、そう遠くない未来、横浜に震度6以上の大地震が襲い掛かることをご存じだろうか。

政府・地震調査委員会が昨年6月に公表した「全国地震動予測地図」によると、横浜で今後30年以内に震度6弱以上の大きな地震が発生する確率は、なんと「82%」だ。

特に警戒されているのは、M9クラスの南海トラフ巨大地震だ。

だが、それだけではない。ほかにも横浜は、相模トラフ地震、首都圏直下型地震と合わせて三つの巨大地震に狙われているという。

横浜市は、それらの巨大地震が起きた場合に備えて、最悪のパターンを想定した被害予測を出している。避難者数は約57万人。火災による建物焼失棟数は約8万棟だ。

関西大学社会安全研究センター長の河田惠昭氏はこう警鐘を鳴らす。

「首都圏直下型地震とは、トラフなどを震源地とする海溝型地震ではなく、内陸の活断層で起こる巨大地震のことです。これが30年以内に発生する確率は70%と言われている。東京南部が震源地だった場合、横浜は特に大きな被害に遭います。東京湾沿岸部にある多数の火力発電所は揺れや液状化によって支障が出る可能性が高い。そうなれば、市内全域が長期間停電し、交通・通信インフラはすべて止まるでしょう」

さらに、相模湾から房総沖にかけて発生する相模トラフ地震は、周期的に日本に甚大な被害をもたらしてきた大災害だ。

立命館大学環太平洋文明研究センターの高橋学氏が解説する。

「東京湾の入り口にある海溝が相模トラフです。周辺は地震多発地帯としても有名で、死者10万人超に達した1923年の関東大震災も、相模トラフが引き起こした。あまり知られていませんが、実はこの震災で一番被害が多かったのは横浜だと記録されています」

以上いずれの巨大地震が起こっても、建物が倒壊し、木造住宅が密集する横浜市南部では火災が広がる。なんとか生きながらえたとしても、中心地は大パニックだ。数十万人を超える人々が、安全な場所を求めて横浜の街をさまようこととなるだろう。

激しい揺れの後に港町を襲うのは津波だ。気象庁が発表した想定によると、神奈川県には最大10mもの津波がやってくる。多くの人で賑わうみなとみらいは、一瞬にして激流に飲み込まれる。海から離れた場所でも油断はできない。58もの河川が流れる市内では、津波が川を遡上し、街中で氾濫を引き起こす危険もある。

「横浜には古い橋が多く存在しています。これらの橋が地震や津波による大量の水の逆流に耐えられる保証はありません。交通インフラが麻痺し、多くの人が孤立してしまうでしょう」(災害危機管理アドバイザーの和田隆昌氏)

ライフラインが途絶えれば被害は甚大になる。

市独自の予測ネットワーク

そして、極めつけは富士山の大噴火だ。横浜ランドマークタワーの展望スポットから見える霊峰は、南海トラフ地震と「連動」して噴火する可能性が高いとされている。

横浜から遥か100km以上離れているため、溶岩流や火砕流の被害に遭うことはないが、大量の火山灰が数週間にわたって街に降り注ぐ。内閣府による横浜の予測降灰量は、およそ10cmだ。

電気・水道・ガスなどのあらゆるライフラインはストップし、街中には行き場をなくした何十万もの横浜市民でごった返す。

横浜市も、巨大地震の危険性を十分承知しており、対策を急いでいる。

市の防災企画課の担当者に確認してみると、「あらゆる可能性を考慮して、最大クラスの地震や津波を想定した対策を行っています。事業としては、全部で350を超えます」と胸を張る。

たとえば、耐震改修に関する事業は幅広い。災害時に重要な道路沿いにある建物には、耐震診断(最大360万円)、耐震改修設計(最大360万円)、耐震改修工事(最大5000万円)に対して補助する制度がある。また、木造住宅には、耐震改修工事に対して最大140万円まで補助する制度もある。

地震の予測にも余念がない。’97年から独自に整備した強震計のネットワークを市内に42ヵ所も広げている。気象庁からのデータは都道府県経由で時間がかかるため、自前のデータで迅速かつ、きめ細かい対処を図っているわけだ。

だが、ここまで紹介したのは、災害が起こる前の事前策だ。実際に南海トラフのような大地震が起こった後にも、万全な対応はできているのか。

揺れや津波からの被害を免れたとしても、帰宅先を失ってしまった被災者には避難所生活が待っている。そんな時、命綱となるのは水や食料といった備蓄だ。

「基本的に、市民の皆さまに最低3日分の家庭内備蓄をやってもらうよう啓発を進めています。横浜市の考え方としては、最低限3日間はしのげる分を『家庭内備蓄』と『公的備蓄』でまかない、その後は国からの救援物資で助けてもらうことを想定しています」(前出・防災企画課の担当者)

そうはいうものの、自宅に3日分の非常食を保存している人は少ないはずだ。横浜市が用意している分は、どれほどあるのだろうか。

「備蓄していない人のための公的備蓄も十分あります。具体的には、市内に459ヵ所ある指定避難所などにクラッカーや保存食を合計で92万食、保存用のビスケットを73万食、350mlの水を188万本用意しています」(前出・防災企画課の担当者)

大震災が起きたとき、観光客や帰宅ラッシュなどで人がごった返す場所にいれば、すぐ避難所に駆け込めず、閉じ込められてしまうケースもある。

「JR横浜駅では、食料や飲料水などを駅構内に備蓄しております(注・具体的な備蓄量は回答せず)。なお、来年に開業予定の『JR横浜タワー・JR横浜鶴屋町ビル』では、地震や津波などの大規模災害時に、来街者の滞留が可能になるスペースを確保し、避難者の受け入れを行います」(JR東日本・広報担当者)

中華街の対策は……?

横浜市も民間施設も、やがて来る地震に備え、かなり高い意識を持っていることがわかる。裏返せば、横浜の人々にとって巨大地震はそれほど差し迫った危機なのだ。だが、地震や防災の専門家から「まだ不十分ではないか」と疑問の声が上がっていることも事実だ。

「避難所の数が全然足りません。震度7だった熊本地震では事前想定を大きく上回り、結果的に855ヵ所も避難所を開設しました」

政府が設置した災害検証委員会の委員長も務めたことのある河田氏はこう続ける。

「横浜市で考えると、観光で滞在する人も含めれば昼間人口は500万人超となります。それが一挙に避難するとなると想定していたよりも必要な避難所の数は遥かに多くなる。結果的に、地元住民は避難所に入れず、救援物資も不足し、自給の生活を強いられることになります」

横浜市が用意しているという水や食料の数量についても、前出の和田氏は不安を口にする。

「人口が約374万人いるのに、保存食92万食やビスケット73万食というのは一人あたり1食分にも満たない。圧倒的に不足していると言わざるを得ません。備蓄は自助が基本とはいうものの、通常は市民の備蓄達成率は限りなく低い。もっと用意してほしいです」

横浜駅についても和田氏はこう指摘する。

「そもそも、駅周辺はもっとも液状化の被害が深刻なエリアです。その上、巨大な地下街があるので浸水が始まれば水没する可能性が高い。そうなったら、速やかに外に出たほうがいいでしょう」

これだけではない。横浜駅周辺よりも対策が遅れていると問題視されているのは観光スポットだ。

「古い木造住宅が密集する横浜中華街が危ない」と警鐘を鳴らすのは、まちづくり計画研究所の所長で防災・危機管理ジャーナリストの渡辺実氏だ。

「火災による甚大な被害を受ける可能性があります。しかも、消防車が入れないほど道が狭く入り組んでいる。平時はそういう迷路性が魅力ですが、震災時だと街がパニック状態になる危険性があります」

実際、横浜市の防災企画課の担当者も「中華街だけを特別に対策していることはない」と認めているほどだ。予想外の二次被害も心配される。

沿岸に多い避難所

また、観光スポットが密集している湾岸エリアでは、津波・液状化対策が進んでいないという。

「横浜の観光地のほとんどは埋め立て地なので、液状化の危険があります。赤レンガ倉庫などは特殊な耐震補強工事が行われていますが、耐震化された建物も、液状化で地盤が崩れて倒壊する可能性はある。ちなみに、’15年まで沿岸の山下公園は広域避難場所でした。これまで津波や液状化の被害が考えられていなかったかがわかります」(前出・和田氏)

山下公園の海抜は、わずか2m程度だ。このエリアで震度6弱以上の地震が起きた場合、3m程度の津波が発生すると予測される。いまだに避難場所なら、公園にいる数千人の人々が津波に飲み込まれてしまうという惨劇が起きかねなかった。

横浜市が発表している避難所マップを確認すると、いまでも沿岸部に設置されている避難所は多い。立地自体が危ないのだから、防災が万全とは言えないだろう。

対策に追われている間も、「未曽有の大震災」は横浜に忍び寄っている。我が身を守るためにも、自分が住む街の対策は知っておきたい。

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「週刊現代」2019年6月22日・29日合併号より

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